君の名は
ハッピピピピッハッロッウイーーンの前日{emj_ip_0444}
ってことでやって来ましたダイアゴン横丁!
名誉のカボチャ担当はアニル
ついでに言えばジャコウランタン作りは彼
カボチャパイに料理すんのも彼
ワタシ?お買いもの担当ですわ
え、サボタージュ?違うって!
不可抗力!
いや、ホントだよ!?
ワタシの目を見て!
(瞬きしてるけど)
(ド、ドライアイのせいだってば)
さかのぼること20分前
場所は我が家のキッチン
よーく研いだ出刃包丁を手に
ワタシはカボチャと睨み合っていた
少々ビッグサイズのこのカボチャ
何ら危害を与えてくる気配はない
切りたい
またつまらぬものを切ってしまったって言いたい
だが、その作業の後
ワタシの手に指が5本くっついている保証はない
悶々とする間、微動だにせず待つカボチャ
緊張と哀愁が漂い始める
その時だった
居間の飾り付けをしていたアニルが
「ハサミどこ?」
とキッチンを覗いた
…まじで神!
彼は瞬時に事態を理解し
的確に対応した
すなわち
「貸してみ」
とやんわり言われ
ワタシは見事にお役御免となったワケである(マル)
話してるうちに気が滅入ってきたぜ、ベイベー
しかも独り言だぜ、淋しいうえに怪しい奴だろう?
…そろそろ真面目に永久粘着ボンド探そ
ってか何軒か回っても全部売り切れてたし
コレはなかなかヤバいんじゃないんですかい
残るは
ちらりと見れば
明らかに人通りが少ない
通称ノクターン横丁
…ボンド、リクエストされちまったもんな
30分経過
ふんだくろうとする白髪婆から
無事に正規値段での買い取りに成功
(どうやって?)
(…オトモダチはいろんなとこに持っとくと
助かるよね)
ご機嫌で帰路につきかけたその時、
内臓を絞り上げられるかのような悲鳴が
背後に聞こえた
どこかで聞いた声
とりあえず振り返って見れば
さっきボンドを買った婆さんだった
近くには杖を突きつけ、フードを被った人影
身のこなしからすると、おそらくまだ若い男
ああ、そうか
ワタシ以外今ここに人はおらず
かつ、ワタシの姿はレンガに隠れて
男からは死角
強請るにはおあつらえ向きってわけだ
…さて、どうしよう
あのババア相当ロクでもなさそうだし
恨みを買っても仕方のないことしたんだろう
考えてる間に再び悲鳴が上がる
うるさいな
レンガを背にして刑事ドラマみたいに杖を構える
充分狙えるし、当たる距離だ
ゴメンな、若いの
「(エクスペリアームス)」
当然ながら命中
でもここからが問題
杖をキャッチすると同時に
自分に目くらまし術をかける
男はなかなか優秀らしい
奇襲に驚いたクセに
杖がどこに向かって飛んだか
大まかではあるが目で追った
居場所を特定される前になんとか術が間に合う
危機一髪ってトコだ
「何者だ」
はらりと外れたフードの下
お顔はかなりのイケメンである
ホントに若い
10代半ばだろう
冷たそうな白い肌はツヤツヤだ
「空腹の味方、とでもいいましょうか
名乗るほどのものではございやす」
「俺様の邪魔をするな」
「通りすがりの他人の邪魔になってるあんたの言えたこっちゃない。騒音公害で訴えるぞバカ野郎。せめてシレンシオかけるか、場所移せよ」
「俺様に説教する気か、愚かなやつだ
お前もこの婆のように死んだほうがマシなほど苦しめられたいか」
「人がたくさんきてる
さっさと逃げたほうがいい」
「ハッタリもいい加減にしろ
ここには誰も、」
「ったく愚かなのはお前だろ!
その死にかけババアが腕輪で仲間呼んでんじゃねえか!
目ぇついてんのかドアホ!」
叫んだ途端、ババアのラリったお仲間が視界に入る
まずい、男は丸腰だ。数で負ける
咄嗟に
男の腰をひっつかんで、姿くらましする
間一髪、伸びてきた無数の手をかわして漏れ鍋の近くに着地した
嘘のように明るい陽射しに涙目になる
男はどこもバラけていないようだ
「いつまで触ってるつもりだ」
不機嫌な声で文句を言われ、慌てて腰から手を離す
細い腰
まだ何も入ってないみたいだ
「ね、あのババアに何されたのか知んないけど
ああいうことはさ、自分の身が守れるようになってからやりなって
2回目は助けてあげらんないかもよ」
「…次は無い、借りは返す」
「そっかー、じゃ、トリックオアトリート」
「は?」
「借り、返してくれるんでしょ?」
「…菓子は持ってない」
「ぶはっ!ククク、正直もんだねー」
「だが、もてなしてはやる」
「どういう意味?」
「永久粘着呪文を教えてやる」
「何それ、ってかなんで、」
「あのババアから永久粘着ボンドを買っていただろう。呪文を知らないんじゃないか」
「…観察力、コナン並みかよ
教えて欲しいけどそんな呪文あったっけ?」
「無い。俺様が作った」
「すげえな、おい」
慌ただしく呪文を教えてもらったワタシは名前も聞かず、やっぱりご機嫌で家に帰った
(「おかえり、何かあったの?」)
(「ううん、なんで?」)
(「凄くいい顔してる」)
(「そう」)
(あの人に似た君の名は)