わたしと主であるシンは、正座で向き合っていた。早く業務に戻りたい胸を脚を少し崩そうとすることで伝えようとしたら、きちんと伝わったのかしっかりと睨まれた。わたしは仕方なく、端的に伝えられた、先程彼が言った言葉を復唱する。

「休暇」
「ああ」

およそ休暇という言葉が似合わない人第一位と言っても過言ではない九曜の王子、シン様。心配すら不敬だと言わんばかりのその佇まいは凛としているけれど、従者としてはもう少し体を大事にしてほしい。なので、シンがわたしに与えたことばはそっくりそのまま貴方が煎じて飲んでほしいのだけど。
鸚鵡返しをするわたしに、シンは穏やかに目を伏せて頷いてみせる。

「君は最近根を詰めすぎだ」
「シンに言われたくない」
「僕の話はどうでもいい。とにかく君に休暇を与える」
「いらない…」

素直に反応をこぼすときろりと鋭い視線が寄越される。普通の人なら震え上がるその目にも、わたしはすっかり慣れてしまった。働きすぎな主を差し置いて休む家臣がどこにいるというのだ。これでもわたしは子の一族・シン王子に誠心誠意尽くしているつもりだというのに。

「休みだってすることないし、」
「場所も決めてある」
「ちょっと」
「廻天に行って、体を休めてくるといい」

廻天。どこかで聞いたような言葉に、脳内をぐるりと検索する。湯元の国・廻天。多数の温泉が湧いているその国はたしか、王子・那由多様が番頭を務めているところだっただろうか。

「シンが行くなら行く」
「僕はいい。公務がある。明日、必ず行くように。いいね?」
「……シンも」
「コトカ」

それ以上の発言は必要ない、許さない。そういう厳しさを含んだシンの声に、これ以上の抗議は無理だな、と思って、わたしは妥協案を彼へと差し出すことにする。

「終わらせたい仕事があるから、それを終わらせてからでもいい?」
「………」

ものすごく不服そうな顔でひとしきり悩んでから、シンはわたしに是の答えを与えた。



▼コトカと那由多くんの需要がないのでつづかない