「コトカ、やわらかい」
わたしの手を握るカノトの手は思っていたよりも男の人のそれだった。
この純真無垢で可愛いカノトは女性とは何かを知らない。お城で大切に大切に育てられたから母親しか知らないと聞いている。だからこうして時折身近にいるわたしがカノトに女性はこんな感じだよ、と教えたりしている。…と言ってもヨルシカや街にいる女性たちと比べたらわたしは結構そこから離れているような気がするのだけれど。
本当にこの役目は私でいいのかと思ってしまう。
「カノトは思ってたより骨張ってるね」
「そう?」
「うん」
首を傾げるカノトはよっぽどわたしより可愛らしい。いつかこの手に守られる誰かが現れると思うと少し寂しいような、悲しいような不思議な気持ちになる。
「ねぇ、コトカ、もっと触ってもいい?」
「いいよ」
何気なく返事をしたことをこのあと後悔するなんて、この時は微塵も思ってないなかった。
カノトはわたしの髪の毛や腕、頬に触れたりした。そっとなぞられるように触れられてくすぐったくて身をよじるとカノトは「どうしたの?」ときょとんとしている。「なんでもないよ」と返事をすると「そう」と興味深そうにわたしの頬に触れ直した。
「コトカ」
「うん?」
「女の子の唇がやわらかいって本当なんだね」
そう言ってカノトの指先がふにっとわたしの唇に触れた。
その瞬間、恥ずかしさからなのか体温が急上昇してばくばくと心臓が煩くなった。
「ヒノト兄から聞いたんだけど、女の子の唇はやわらかいだけじゃなくて甘いんだって」
カノトの顔が近づいてくる。あ、これってもしかして…?
「確かめてもいい?」
可愛いカノト。
けど今わたしの目の前にいるのは男の顔をしたカノト。心拍数が戻らない。拒否も何故か出来ない。
…そうこうしている間にカノトとの距離はなくなった。ふわり香ったカノトの匂いとわたしよりやわらかいんじゃないかと思うカノトの唇の感触で、わたしの頭はショートしそうだ。
「…本当に甘かった」
唇がまだ触れそうな距離でカノトがそう呟いた。
「あと、胸がどきどきしてる。こんなの、初めて。コトカ、これ何か分かる?」
溶かされそうなくらい優しくて甘い眼差し。
どうしよう、わたしこそその答えを知りたいよ。
「コトカ、ねぇ、どうして?」