気が付いたら、知らないところにいた。
大きなお屋敷、のようなところ。日本的なつくりで、廊下みたいなところに寝ていたらしいわたしは、冷たい床におしりの温度を奪われていた。
ざわざわと、わたしを囲むように、且つ、一定の距離を取って――さながら動物園の檻の中にいるみたいに――何人かの人が、訝しげな視線をわたしに注いでいる。
どこかもわからないところで、知らない人に冷たい視線を向けられ、しかも手ぶら。スマホも何もない心細さたるや。重なるに重なった不安に泣き出しそうなわたしに、穏やかな声がかけられた。
「キミ、どこから入ってきたの?怪我してない?」
座り込んだわたしを覗き込む男の人が、わたしに影を落とす。
着崩した和服。から見える、がっしりした肩。きれいな白銀の髪に、黒のメッシュ。まるい瞳はきれいな緑色で、いつかどこかで見た綺麗な石の色に似ていた。穏やかそうなたれ目の下に、泣きぼくろがあるのがちょっと色っぽいな、なんて、泣きそうなくせにそんな余裕のあることまで考えて。
わたしを囲っていた人たちとはちがう、優しい瞳に優しい声。安心してしまったのか、わたしの涙腺は決壊して、優しげなお兄さんの前でぼろぼろと泣き始めてしまって、わたしの視界は涙でぐしゃぐしゃになってしまった。
「ここどこですかあ……」
みっともなくしゃくりあげて、びっくりするくらい大粒の涙を流して。わあわあ泣き始めたわたしを、お兄さんは抱き寄せて、「よしよし」と頭を撫でてくれた。