俺の上に乗るコトカはちゃんと食べてんのか心配になるくらい軽かった。まあ昨日とさっきの食事を見た感じしっかり食べてはいるんだろうが。

「一宿一飯の恩、忘れてねえよな?」

そう耳元で囁けば混乱している様が見えた。思ってたよりコロコロと変わる表情が面白くてからかいたくなる。成すすべがなくなったのかコトカの手から力が抜けた。

「抵抗しなくていいのか?」

シャツが捲り上がって見えていた太腿にゆっくりとなぞるように指を這わせばコトカの体が小さく揺れた。この体勢だし、ブラ外して寝かせたしコトカは確実にこの状態を意識してる。男慣れしてねえとは思ってたがここまでとはな。仕事ではしっかりした奴なのにカワイイとこあんだ。くつくつと笑いたくなるのを抑えて太腿をなぞりながらコトカの耳元で甘く囁く。

「昨日、着替えさせる時も思ったがお前鍛えてるけど指に吸い付くやわらかい肌してんな」
「っ、」
「んで、今ある緊張が解れれば…まあつまり、理性が欠けちまえばお前、すげぇ乱れそう」

恥ずかしさからか耳まで赤くなってる。体温がそれだけで上がって、触れているとこがさっきよりも確実に熱くなってる。こうも素直な反応をされるってのは嬉しいな。
それなりに付き合った女の数はあるがこういう反応は今までになかった。だからか悪戯心とやらが芽生えてしまう。どこをどう触ればどんな反応をするのか、どんな言葉をかければどう言葉を返すのか、知りたくなる。

「…なあ、コトカ」

声も出ないのか、それとも出そうとしても出ないのか。コトカからの返事はない。ただ少しだけ潤み始めた目で俺を少しだけ見るだけ。

「爆睡した奴を抱く趣味はねえけど、抵抗しないならこのまま本気で抱くぞ」

コトカの顎に手を当て視線が絡み合うように上げさせた。揺らぐ目の奥。視線を逸らさせねえように強く見つめれば視線が俺に固定された。
返事を待つが中々返ってこない。そう気が長い方じゃねえから悪いが催促させてもらう。

「コトカ、声出るか」
「…なん、とか…」
「じゃあ次はしっかり答えろよ」

唇が触れる寸前で距離を止める。

「お前を抱きたい。嫌なら嫌って言え。そうすりゃここで止めてやる」

脅迫だな、こりゃ。混乱してる奴に、ましてや上司と部下の関係でしかない奴に言うべき言葉じゃねえ。
俺は正直、コトカに惹かれてる。どうしてか、なんて分からねえ。ただ、もっとこいつと居たい。こいつをもっと知りたい。そう本能が言ってんだ。

「ひとつ…」
「ん?」
「きいても、いいですか」
「ああ」

か細い声。仕事の時とはまるっきり違う声に、胸の奥が疼いた。

「…イヌイさんは、その…好きでもないひとを抱けるんですか…?」

正直に言えば体だけの関係だった女もいる。
だがコトカはそいつとは違う。言ってないから当然と言えばそうだがそれが伝わってない。

「そう見えるか」
「質問を、質問で返さないでください」
「そうだな。悪かった」

この状態で何とか揺らがないように言葉を紡ぐコトカに自然ともう片方の手のひらがコトカの頬を包み込むように触れた。

「コトカのことまだそんなに知らねえけど」
「………」
「部下としては優秀な奴だと思う」

ゆっくりと自分の心も確かめるように言葉を紡ぐ。

「素のお前はなんつーか面白い」
「おもしろい…」
「そんで、もっと知りてえって思ってる」
「そ、れは、」

はっきりとした答えを律義に待つコトカの唇に今すぐにでも噛みつくようなキスをしたい。…が、その衝動を抑えて言葉を続けた。

「お前に惹かれてるよ、1人の異性として」

初心なお前を俺で汚したい。そんな欲望も含めた言葉にお前はなんて答える?
なあ、コトカ。お前の返事を早く聞かせろよ。