『お前に惹かれてるよ、1人の異性として』

イヌイさんのその声はひどく色気を帯びていた。けどどこか優しさもあって。わたしの心臓は血液を全身に速く速く送り出していて、今にも爆発してしまいそうなのに、その言葉が頭の中で静かにリフレインされていく。
きっとイヌイさんは本心を言ってくれた。わたしは…?わたしは、イヌイさんのことをどう思っているんだろう。
会社では立場以上の働きをしている有能、と言っては上から目線のような気がするけどそんな上司だと思う。素のイヌイさんは意地悪だけど優しいし、意外と家事とかきちんとしてるんだと思った。そして会社にいる時よりも色気が増している気がする。(こんな状況だからかもしれないけど)
異性として、と言われるとまだ良く分からない。…けど、この熱と鼓動の速さはイヌイさんと同じで『もっと知りたい』ってことなのかも、しれない。なにより触れられて嫌な感じがしない。むしろイヌイさんの体温が心地好くも感じる。

わたしの返事を待つイヌイさんの瞳は全くぶれなくて、触れられている頬や顎から伝わる温もりがわたしの体温と交わって熱を上昇させている。
こんなの、ずるい。もしかしたら昨日のお酒がまだ残っているのかもしれないとも思ったけど、違う。用意されていた答えなんて1つしかないようなものだ。

「…わたし、」

声が掠れる。

「イヌイさんのこと」

恥ずかしい。この距離が。

「……もっと、知りたい、」

怖い。進展の早さも、全部。
でも、その怖さの先に何があるのか知りたいと思うわたしがいる。






ソファで噛みつくようにコトカの唇を奪った。
頬から後頭部に手を動かして徐々に深く口づけていく。たどたどしいそれが何だか愛おしく感じる。呼吸が上手く出来ないのか俺のシャツを掴む手に力が入った。1度唇を離すと涙目で湿った息を浅く繰り返し吐き出すコトカ。落ち着かせるように乱した髪を梳けば恥ずかしさを思い出したのかコトカは俺の胸元に顔を埋めた。

「…お前、かわいいな」
「そういうのやめてくださっ、」

最後まで言葉は言わせねえ。もう1度唇を塞ぎながら上体を起こす。コトカを支えながらソファから立ち上がり、口づけを繰り返しながらベッドへ向かう。浮遊感からくる怖さからなのか、ぎゅっとコトカが俺に腕を回してくる。触れるシャツ越しの感触がさっきよりもリアルになる。ああ、なんかいいな。

なるべく静かにベッドにコトカを下ろし、今度は俺が上になる。コトカはシャツ1枚だ。脱がせるのは簡単だがそれだけじゃ物足りない。もっと恥ずかしそうな顔をするお前を見たい。

「シャツ越しでも分かるくらい熱くなってるな、コトカ」

頬に、首筋に唇を押し付けながら話しかける。手は太腿からゆっくりと上へと撫でていく。ぴくぴくと反応するコトカに口元が緩むがコトカからはそれは見えない。

「キスだけで感じてくれたんだ?」
「え…?」
「ここ、硬くなってる」

シャツ越しに胸の頂を甘噛みすれば撫でていた時よりも体が跳ねた。それと同時に押し殺した甘い声が聞こえた。やっぱり思った通り感度は良さそうだ。

「ほら、手で隠さないで見てみろよ」
「っ、いじ、わる…」
「知ってるだろ?」

両手を絡みとって顔を覆えないようにして、強い視線を向ければコトカは涙目で睨み返してきた。…まあ、そんな顔で睨まれても逆効果なんだけど。
シャツ越しに唇で、歯で、舌でそこをいじめる。湿っていくシャツで余計にそこが強調される。
声を漏らしながら恥ずかしさに耐えられない、といった感じに固く目を閉じたコトカのそこからは溜まっていた涙がすっと目尻を伝った。それを舐めとると「ひゃっ、」となんともかわいい声を出してくれた。

「コトカ、」
「っ…や、はずか、し…」

額をくっつけて甘く名前を呼べば色気を纏った声が返ってくる。もっとその声を聞きたくて手を離しシャツの中にその手を忍び込ませた。熱を持ったその肌は手の薄皮を溶かしちまいそうだ。指に吸い付く柔肌を堪能しながらさっきからずっといじめていた頂に辿り着く。
軽く引っ掻いたり、摘まんだりするとまた違った反応が見れた。溺れちまう、ってのはこういう感覚のことをいうのかもしれねえ。

「…今度はお前が想像したことするからな」

手を滑り込ませたことによってたくし上げられたシャツからは白い肌がほぼ丸見えだ。

「同意の上、でな?」

心臓の上あたりにきつく吸い付き痕を残す。
華奢な体は乱暴に扱えば折れてしまいそうだ。この行為が怖いものだとコトカの脳に植え付けられないように、けど意地悪に、優しく。コトカの体に、脳に覚えさせてやる。

「優しく解して、見たことのないお前を出させる」

時間をかけてゆっくりと、侵食していくように。

「明日も休みで良かったな、コトカ」

たっぷりとある時間を使ってじわじわと、ふつふつと、お前の女の部分を表面に出す。

「お前の全部、俺に感じさせろ」

溶けて、溶かされて1つに。