「…生徒会の人ってみんなピアス開いてるんですね」

じろりとコトカがヒノトを見上げると、ヒノトはその視線の鋭さなど気にも留めずにふわりと笑って、うん、と穏やかに答えた。髪を耳にかけて隠れている耳を露にして、その耳についたピアスをコトカに見せつける。洒落たロゴが入ったそれを見て、どこかお洒落なブランドのなんだろうかと邪推したコトカは隠さず眉をひそめた。別にブランドだろうがなんだろうがコトカとしてはどうでもいいのだが、なんとなく。ヒノトがそういうものを身に付けていると表だってそういう反応をしたくなるのが常だった。

「校則で禁止もないしね」

にこにこと楽しげに笑うヒノトとは対照的に、コトカの表情筋は少しも動かない。口角が不満をあらわに下がっているくらいだ。コトカはいつも、こんな無愛想にしている自分に苛立ったりはしないのだろうかと密かに思ってはいるが、ヒノトを見ている限りそういう気はなさそう、あるいは、それをうまく隠しているのかと思うのであった。嘘をつくのは苦手ではなさそう、それが彼に対するコトカの見解だった。

「コトカも開ける?俺開けてあげるよ」
「遠慮しときます」

俺うまいのに。ヒノトは言いしな、コトカの顔を覗き込む。コトカは突然詰められた距離に少しだけ仰け反ったものの、それ以上の反応は保留したらしく、眉間の皺を濃くした。

「ほら」

ヒノトは耳を見せつけるために髪を押さえていた手を、コトカへと伸ばす。ヒノトの軽い髪はふわりと元の位置へと戻って、先刻まで髪を押さえていたその手はコトカの手に、なんの抵抗もなく触れた。

「触ってみて」

手を引かれる力に抗おうとコトカも手に力を入れるも、それ以上の力で腕の自由を奪われる。手を重ねるように持たれ、指先を支配するように指が絡む。コトカの指先は強制的に、ヒノトの耳に触れてしまった。

「――、ひッ!?」

大袈裟に震えたその動きも、ヒノトに手の動きの主導権を握られていることで押さえつけられる。
まるでおののいているかのような小さな悲鳴に、ヒノトはちらりとコトカの瞳を伺って、彼自身の目を見開いた。
真っ赤に染まった頬、目の表面には薄く涙の膜が張っているように見える。細い手首を掴んだままのヒノトを振り払ったコトカは、くるりと踵を返して走って教室を出て行ってしまった。
耳を突き破っているそれへの恐怖と、人の耳を触ってしまった恥ずかしさ。そんなコトカの心の動きなど知る由もないヒノトは、彼女に触れさせた方の耳に残る体温を確かめるように触れて。

「…ふふ、触られたの俺なのに。あんな真っ赤になっちゃって」

するりと猫のように目を細めて、ヒノトはゆるりと瞳を細めて微笑んだ。