鳥が鳴く。空を自由に飛んでいる。
わたしは一人部屋の中。
彼の帰りを待つばかり。









溶かされて、溶かされて。甘く、甘く。
そしていつの間にか今までの自分と正反対の自分に堕とされた。

「コトカはすっかり甘えんぼさんになったね。ふふ、俺がそうしたんだけど。…コトカ、ずっと俺の腕の中にいてね」

ヒノトの腕にすがりつくように擦り寄るわたしをヒノトは嬉しそうに微笑みながらわたしの髪を梳く。
その手が気持ち良くて、ヒノトの熱を覚えたわたしの体は自然と疼く。

「コトカ、本当に可愛くていやらしくなったね」

室温が一定に保たれている部屋。
わたしは薄い着物を簡単に一枚身に纏っているだけ。そっとヒノトの手のひらがわたしの胸に伸びて、その先を指先で掠める。
声が出そうになった瞬間、声を奪われるように深く口付けられて力が抜けていく。声もヒノトの唇に奪われて消えてしまった。
その代わり、と言えばいいのかヒノトとわたしの舌が絡み合う音が静かな部屋の中に響き渡って、お腹の奥がずくずくとヒノトを求め始める。

「んん、ふ、あ…ひの、と」
「やらしい顔」

自然と涙が滲んで、抵抗しても無駄だと分かっている体はすでに開かれている。
少し意識すれば閉じられる口も閉じることが出来なくて、ヒノトを求めるようにそっと首を伸ばして小さな音を立ててヒノトの唇に自分のそれをくっつけた。

「ひのと、もっと、して…?」
「いいよ。気持ちいいこと、今日もいっぱいしてあげる」

簡単に身に纏っていた着物は至極当然の如く簡単に脱がされて、月明かりに肌がさらされる。

「コトカ、綺麗」

わたしの体にはヒノトの印が沢山刻まれていて赤い花びらが散っているように見えるとヒノトが言っていた。
その印を結ぶようにヒノトの指先が伝う。それだけなのに、びくびくと震えてしまう体はヒノトに教えこまれた快楽のせい。さっきは声を奪ったくせに今は奪わずわたしの上擦った声を愛おしそうに微笑みながら聞いている。

「あ、ひ、のとっ…」
「俺なしじゃいられないでしょ?」

低く甘く耳元で囁かれた言葉はまるで麻薬のようで。でも、それに即座に頷いてしまうくらいにはもう戻れないところまで来てしまっている。
ヒノトが可愛い、と言いながらわたしの体に舌を這わせていく。熱くねっとりとしたそれに体温が上がる。ヒノトの指先もじっとはしていなくて、擽るようにわたしの弱いところを刺激してくる。

「んっ、あ、あっ…」
「もっと鳴いて、コトカ」
「ひ、…あんっ、あ…!」
「その声たまらない」

胸の先をねぶられて、とんとんっと下の芽をつつかれて。声を止めるどころか出され続ける。
ちゅぷ、と湿った音を立ててヒノトの指がわたしの中に入ってくる。

「ひあ、んんっ…あ、」
「もう中、とろとろ。本当やらしい」
「あ、や、いきなりっ…!」
「だって一本じゃもう足りないでしょ?」

ヒノトの指が二本、三本と時間を空けずに入り込んできてわたしの中を広げていく。
奥の方からぬるっとした液が溢れてくるのがなんとなく分かる。それがヒノトの指を伝って、外に出て、わたしの太腿も湿らせていく。

「あっ、や、あぅ、ひっ…!」
「こんなに溶けちゃったら俺の指、ふやけちゃう」

ヒノトはわたしの唾液を掬うように舐め取りながらまた深く口付けてくる。
口の中も、お腹の中も、ヒノトに全部攻められてわたしの体はぶるぶると震え始める。
それを見ていたであろうヒノトはぐっと下の芽を強く押して、わたしは塞がれた唇の中で声を押し殺されながら達した。

脱力したわたしの体を慣れた手つきで支えたヒノトはわたしの中から指を抜くと見せつけるようにその指を目の前で舐めた。

「っ、」
「やらしい味と匂い」

恥ずかしいのに、目が離せないのはそう教えこまれたから。
舐めとった指を今度は開いたままになっているわたしの口の中へと入れ込んで、指先で舌を擽る。開いたままの口からは唾液が流れ落ちて肌を伝っていく。

「…ああ、本当たまらない」

上手く声を出すことも出来ずわたしはヒノトにされるがまま体を震わす。
体が布団に雪崩落ちる。ヒノトが支えてくれていたから衝撃はなかった。けど、口からヒノトの指がなくなったと思ったら濡れたそこに熱いものがあてがわれた。

「あっ、」
「コトカのここ、ひくひくしてる。待ちきれなかった?」

綺麗に笑っているのに妖しくて。
わたしの返事を聞くこともなくそれが一気にお腹の奥まで押し込まれた。

「ひ、ああっ!」
「っは、コトカの中今日も熱くて良く締まる」
「あ、あっ、ひのと、」
「もうすっかり俺の覚えたみたいだね、コトカ」

弱いところばかり攻められるかと思えば少しそこからずれたところを攻められてもどかしい。緩急をつけられているからなおさら。
少しでもいいところに当たるように腰を動かすとヒノトはまた妖しく笑って。

「ここ?」
「ひっ、ああっ!っ、…あっ、そ、こ…」
「コトカがこんなにやらしくなるなんて思ってなかったよ」
「は、あっ、あっ…ん、」

わたしをこうしたのはヒノトなのに。ヒノトのせいなのに。

「もっともっと気持ち良くしてあげる」

そう言って体が半分に折れ曲がってしまうくらいに深く、強く、弱いところを攻められて。ヒノトにしがみつく手に力が入って、離れないようにヒノトの腰に足が絡みついた。

「ふふ、そんなに一生懸命にしがみつかなくても離すつもりないから安心して」









声が響く。わたしの上擦った声が。
ヒノトの香りと自分の香りが混じって溶けて、一つになって。
深く深く、より深く堕とされていく。