絡めた指に力が込められる。お互いの熱がこもって汗がじんわりと出てくる。汗でさらに密着するお互いの指。コトカの指は細いのにやわらかくてなんだか不思議。唇もやわらかい。口づけで熱くなった唇は砂糖もなにもついていないのに甘くて、もっとほしくなる。癖になる、ってこういうのを言うのかな。

「コトカ、甘い」

涙目のコトカから熱い吐息が漏れている。飲みきれなかった唾液が少しコトカの顎を伝っている。それを舌で掬い上げればぴくりとコトカの肩が縮んで小さく声が漏れた。
コトカは恥ずかしそうに視線を逸らすけど、それもオレにとってはかわいくて仕方がない。優しくしたい。そう思っているのに、かわいいコトカを見ると自分の中にある枷が外れてしまいそうでぐっと自分の意思に重い錘を括りつける。コトカのことを怖がらせたくない、痛みを与えたくない。

「着物、脱がすね」
「あ、……ぅ、」

唇をきゅっと結んで少し間を空けてから頷いたコトカ。そっと着物の衿に手をかける。自分の指が上手く動いていない気がするのは緊張のせいなのか、錘のせいなのか。
衿を少しずらして素肌に触れてみる。それだけで背中がぞくりと震えた。

「(うわ…これ、想像上にやばいかも…)」

どく、どく…心臓がうるさい。指先も体もずっと熱くなって、全身がコトカを欲しているのが分かる。
鎖骨のあたりを指で何度も繰り返しなぞる。ぞくりと震える背中は変わらず。コトカは体を小さく跳ねさせながら漏れ出しそうな声を必死で堪えてる。くぐもっているその声だけでも欲を掻き立てられるのになににも遮られない声を聞いたらどうなるんだろう…

帯に手を伸ばして解く。コトカの体に力が入るのが分かったから、口づけながらコトカの肌を露わにしていく。絡めた舌に控えめに舌を絡めてくるコトカが愛おしい。

「ん、ぅ、ふ……」
「どこまで甘くなるんだろうね、コトカ」

乱れた呼吸に潤んだ瞳。熱を帯びて色っぽいコトカの肌に指で、舌で触れていく。
中途半端に脱がせた着物が衣擦れを起こす度にその音がやけに大きく耳に届く。今日、本当にコトカと一つになる、それを匂わせられているせいなのかもしれない。五感が全ていつもより過剰に反応している。

視覚からコトカの白い肌が熱で淡い朱色に色づいているのと普段のコトカからは見れなかった表情が鮮明に脳へ転写される。

「や、ぁ……!」
「コトカ、綺麗」

着物の前を全てはだけさせた。肌を隠そうとするコトカの手を取って布団へ押しつけて眺めて、唇を落としてから舌で肌を舐めあげる。

触覚からコトカの肌のやわらかさや弾力、熱さが伝わる。掴んだ手はかすかに震えながらも感じたことのない感覚に戸惑うような規則的な振動が。

「…コトカの全部、甘いの?」
「やあ、ひ、んッ!」

繰り返して言ってしまう「甘い」という言葉。口づけても肌を舐めあげても甘さは変わらない。それどころかどんどん甘くなっていく。味覚も嗅覚もコトカの甘さで麻痺させられているみたい。
力の抜けたコトカの手を離して指先と舌でゆっくりとコトカを味わう。ぴくぴくと震えるコトカの体に口元がゆるむ。オレが与える刺激でコトカが気持ちよくなってくれるのが嬉しい。胸の先が少しずつ尖ってきて、そこを口に含んで周りからじっとりと中心に向かって舌を動かしてつん、と先を舌で押すときゅっと結んでいた唇から力が抜けてしまったのか、さっきよりもずっとずっと甘い声が響いて、そのコトカの甘い声が奥深くまで震えて聴覚に痺れをもたらす。

「ん…コトカ、かわいい、」

痺れるような感覚を、痺れさせてくれる声を求めて胸の先を執拗にせめる。

「あ、ひぁ…やん、っ」

漏れ出す声は甘く大きくなっていって、オレの理性を溶かしていくと同時に体温を上げて、そして一部を硬くしていく。
熱くて乱雑に自分の着物を脱げばコトカの視線がさっきよりもオレに向いて、かああっとさらに頬を朱色に染める。自由になった手で自分の顔を隠して身を捩る。ああ、そんな仕草さえすごくかわいくて、愛おしくてどうにかなってしまいそうだ。

上半身から徐々に下半身へと指を、舌を這わせていく。
コトカの足も熱くて汗ばんでる。それに濡れてる。くち、とそこに指を当てると小さく音が立った。

「ひ、っ…!?イナミ、」

びくっと背を弓なりにそらせた。コトカはやっぱり敏感みたい。わずかな刺激でも体は揺れるし、声も漏れる。気持ちよさを拾いやすい体質なのかも。
濡れているそこを上下に指で擦りあげると一層背をそらせて甘い声をあげる。

「コトカ、気持ちいい?」
「や…ら、ぁ、あ、ッ、なみ、」

閉じられないのか口を薄く開けてそこからつうっと唾液が垂れてくる。コトカのかわいい声をもっと聞きたくて、指の動きを速めながら下の芽を探る。
探り当てて、そこを一緒に上下に擦ると叫ぶような、それに近い感じの声をあげながらがくがくと足を揺らして腰が浮いた。

「コトカすごい…どんどん溢れてくるよ」
「きゃうう、ッあ、」

言わないでと言わんばかりに首を振るけど、びくびくと震える足とその付け根より体の真ん中にあるそこはとろとろと溶けてオレを誘ってきている。
コトカの反応を見ながらゆっくりと指を中へ入れては出してを繰り返す。まだきついそこはきゅうっとオレの指を絞めつけてくる。中から溶け出してくる液を指に絡めてなるべく痛みを与えないように何度も中へ滑り込ませていく。

そうして指が一本からニ本に増えて中も二本の指が無理なく動かせるようになった。コトカは肩で息をして苦しそうだけど、これからが本番だからもう少しだけ頑張って。

「コトカ、オレの首に手回して」
「ふ、ぁ……」

とろんとした目でオレを見つめてゆったりとした動作で首に腕を回してくれた。コトカに口づけながらほぐしたそこへと自身を指の時と同じようにゆっくりと様子を見ながら入れていく。時間をかけて、一つになっていく。
すっかり汗ばんだ互いの肌が吸い寄せあって、どっちの唾液かなんて分からないくらい舌を絡めて、熱い部分と熱い部分をくっつけあって。距離が本当にゼロになる。
この距離がこんなに熱くて、でも気持ちよくて、心地いいものだったなんて。コトカとこうして一つになれて、オレ本当に幸せだ。

「コトカ、好き。大好き、っ…」
「っ、なみ、すき、すき、あ、んぁ……!」

自然と口から出る言葉はコトカに対する想いで、それに応えるようにコトカも途切れ途切れになりつつも同じ言葉を返してくれる。
ぎゅうっとコトカの足が腰に回って、さらに近くなった距離に互いが限界に近づく。

「は、…ぅ、ッコトカ、」
「ひ、ぁ、いなみ……っ」

力一杯互いを抱きしめて、ほぼ同時に達した。

その後はもう初めての緊張とか色んなことが重なって言葉少なく気づけば一緒に眠りに落ちていた。
そんなオレたちのハジメテ。