マイガール。
彼の口からはそんな言葉がよく出る。それは寿嶺二という一人のアイドルとしてもキャラクター性も持ち合わせているが、そうでも無い時だってある。
「愛してるよ、マイガール」
今この場には、私と嶺二しかいない。だから必然とその言葉だって、私だけに向けられていると分かるのにテレビ越しで聞こえたものと全く同じなのだ。
そう、嶺二は自身のファンの女の子のことをマイガールと呼ぶ。だが全然普通の女の子相手にも使うし、彼女である私にももちろん使う。
それぞれに意味合いは違っているし、私に向けられるマイガールというその五文字は特別だと言うのは分かってはいるけれど、やっぱり癪なのだ。
「あのさあ」
「なあに?」
「そのマイガールっての、私以外にも使ってるじゃん」
嶺二相手には、たまに素直になれない時はあるが基本的に正直ではある。元々ウマの合う感性ではあるし、何より信頼と安心が勝っていて大抵の事は隠さないでいる。もちろん、今のこの私の感情だって。
私がその一言を言うと嶺二は察したのか、一瞬目を丸くして驚いたような表情を見せるがすぐ愛おしそうな微笑へと変わる。
「もしかして、ヤキモチ妬いてる?」
「べっつにー。ただ、私は嶺二の彼女で特別なのに他の人達と同等なのが癪なだけ〜」
だって、ちょっとばかし、嫌じゃないか。
嶺二の彼女という立場に立てるのは私だけ。嶺二も私を唯一無二の大切な人として沢山愛情を注いでくれている。だというのに、他の人達と同じ括りだなんて、笑わせる。
なんていうのはただの強がりで、先程のは本心ではあるけれどそれよりマイガールなんて呼び方は特別感がなくて、なんだかなぁ、というモヤモヤ。
「やっぱり、ぼくの彼女は世界一可愛いなあ」
「……今、そういう話してなくない?」
「してるよ。サラちゃんが今可愛いこと言ったでしょ?」
可愛いと思ったんだ。さっきのそんなに可愛いセリフだったか? などと思うが、この人にとっては私の全てがどうせ可愛いだなんていってほぼ全肯定するんだろう。惚れた弱みにも程があるだろうに。
「じゃあさ、"マイハニー"っていうのはどう?」
その嶺二の提案に、今度は私が驚く。いや、まさか新しい呼び方を提案してくるとは思わなくて。
「まあ、いいけど……でもそれ、他の人に対しても使い始めたらまじボコすからね」
「だーいじょうぶっ! マイハニーは、サラちゃん専用にするから。それに、サラちゃんは将来ぼくのお嫁さんになるんだからこれ以上にピッタリな愛称はないでしょ?」
なんて言って、私の左手を手に取ると薬指にキスをする。
確かに、お互い大人の年齢ではあるし結婚願望もあれば意識もしている。嶺二に最初から、将来を見据えた交際がしたいと言われて付き合い始めてみるから後々結婚するのなんて分かりきっているはずなのに、いざこうされると意識してドキドキしてしまう。
でも、それぐらい私との交際を真剣に考えて、未来まで見据えてくれるのが何より嬉しかった。
「なんなら、ぼくのこともダーリン♡って呼んでくれてもいいよ?」
「あっそれはいいです」
「なんでっ!!!!」