あの見た目と、人柄を持ってして女が寄り付かないことなどない。むしろ女に困ったことがないんじゃないか、というイメージも無くはないが実際は別にそういう訳でもなく、そもそも仕事に熱心だからこそわざわざそこまでして恋愛に勤しむ必要ですが無いといったところだろう。
「嶺二の車の助手席ってさぁ、お母さんとお姉さんしか今まで乗ったこと無かったんでしょ? 異性だと」
「うん? そうだね。あとはサラちゃんだけだよ」
「それじゃあさ、なんで付き合う前に私のこと車に乗せてくれたの? そんなに特別な関係だった訳でも無かったじゃん」
サラの投げかけた純粋な疑問に、嶺二はそれに対して頭を働かせる。
人当たりのいい彼は誰とでも仲良くなれる。現在はこうして恋人として付き合っているサラも前までは仲の良い友人ではあったが、別にサラ以外の異性の友人がいてもおかしくはなかったはず。
自分が唯一の特別な存在であることに嬉しさを感じつつも、なんだかんだ理屈的に物事を見てしまうサラのことだから、それに何かしら理由があるのではと考えた。そしてそれをサラが考えても答えには辿り着けるわけもなく、本人に聞いた。
「今思えば、その頃からサラちゃんのこと好きだったんだと思う」
「……なにそれ」
「だって、気付いたらサラちゃんのこと好きだーってなったけど、よくよく考えたら最初からサラちゃんと仲良くなりたい! お近付きになりたい! って沢山声を掛けてたのって、やっぱり好きだったからじゃないかなぁって思ってさ」
「まぁ、確かに嶺二から話しかけてくれなかったら仲良くもならなかっただろうしね。私からは絶対嶺二には話しかけないし」
自分よりも、遥かに先に嶺二の方が自分を好いていてくれていた、という事実がすごくくすぐったいと同時に暖かくて、ついつい口角が上がってしまう。
嶺二から話しかけて貰って、そこから差し入れをしてくれたり相談相手になってくれたり、たまにはドライブに連れてってくれたり一緒にお酒も飲んでくれたり、今思い返せば"友人"と称してたあの頃は決して友人の枠では収まりきれなかったのだろうと思う。どちらも、異性とそこまで深く関係を築くことなんてないから。
「良かった。私を簡単に乗せたったことは他の女の子も簡単に乗せてたりするよなぁって思ってたからさ」
「そんなことしないよぉ! ぼくちんにはサラちゃんだけだもん! サラちゃん、もしかしてヤキモチ妬いてた?」
「妬いてたっていうより、それが本当だったら嶺二のことボコしてた」
「いやー、こわぁ〜い! でも、大丈夫。ぼくはサラちゃんが不安になるような事は絶対にしないから」
そう言って、サラの手を優しく握る。サラもそんな嶺二の手を優しく握り返して、満足そうに微笑んだ。
「ぼくの愛車の助手席は、サラちゃんの特等席だよ」
「それを言うなら、車に限らず嶺二の隣全般でしょ?」
「それもそっか! ふふ、サラちゃんってホントぼくのこと大好きでカワイイ♪ ぼくもそれ以上サラちゃんのこと愛してるよ」