平和に行きましょう。

優等生


 問題児と呼ぶにさ些か地味で、しかし問題無しと断じるには微妙な生徒。しかし端的に言い表すのなら「優等生」だと言うべきだろう、と多々良はそんな評価を目の前の女子生徒に抱いている。
 兎山沙良。兎というよりは猫じみた印象の強い小柄な体躯で、今時珍しい艶のある黒髪を持つ少女だ。切ないくらいに背筋を伸ばし、指先まで揃えた両手は膝上に重ねられていた。
「別にそこまで畏まる必要はないんだけどな」
 とはいえ生徒側からすればいきなり担任に呼び出されたのだから、多少なりとも緊張しても仕方が無いのだろう。案の定、沙良も「…はい」と心無しかか細い声で応じたものの、姿勢を崩すことも表情を緩ませることは無い。
 やや目元に険はあるが顔立ちは人形のように端整で、肌は陽にかざせば透けて見えそうな程白い。誰もが振り返るような派手さではなく、一部の人間が心酔するような妙な魅力を孕んでいるのだ。
 そう、例えば彼女の親友たる虎杖明彦がその魅力に呑まれた筆頭だろう。
「虎杖たちとは上手くいってるのかい」
「え?あ、…はい。休み時間にはよく話しますし、ご飯も一緒に摂ります」
「なら良いんだけどな」
 それで済むだけなら何の問題も無い。しかし虎杖は側にいるだけでその人間の評価を下げかねないような問題児だ。




















































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