平和に行きましょう。
せんせい
沙が「先生」と呼ぶと、反射的に振り返る者は3人いる。
1人はモリアーティ。数学の教授だから、と沙が戯れに呼び始めてから定着している。教授ではないのか、と他から突っ込まれることはあるが、一生徒として彼を先生と呼びたいだけだ。
もう1人、というか他は老いと若きの李書文である。若い李書文は鍛錬として先生、老いた李書文も同一人物として先生と呼んでいた。とはいえ、この2人(?)は鉢合わせすると殺し合い必須と既に分かっているので、面と向かったことは1度もない。
なので、沙が「そういえば先生」と声を上げると、大体モリアーティとどちらかの李書文が「ん?」と顔を上げてくる。
「どうしたのかな、マスター」
「何か用か、嬢」
「…あー、いや…ごめん、2人ともに用がある。再臨の目処がたったから、いつ頃にしようかなって」
スン、と鼻をならす。無臭ではないが、意識する程に強いとは思わない臭いだ。
「どうかね、マイガール」
「…?ダディ、加齢臭でも気にしてるの?変な匂いなんてしてないよ」
「ほんとに?安心していい?」
「ほんとにほんと。私ダディの匂い嫌いじゃないもん」
個人差と言える程度の体臭で、加齢臭というには爽やかな気さえする。というより、鼻が慣れたのかもしれない。アサシンの李書文も、ランサーとほぼ交代で一緒にいるせいか、香りでなんとなく分かるようになった。アサシンはやや線香のようで薄い香り、ランサーは逆に濃い。
「ちなみに以蔵くんは?」
「いぞーさんは…これ本人に言わないよね?」
「君がそう言うのなら言わないさ」
「よしゃ。…いぞーさんはお酒臭い。というか書文先生以外みんな飲む方だけどさー、いぞーさんは絡み酒だからすごい」
「彼はまぁ…少しばかり楽しみ方が違うからネ」
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