平和に行きましょう。
無機質ちゃん
いくらなんだって、個性や性格が様々な刀剣男士を全員平等に愛せる存在など、例え神であろうといやしない。誰だって選り好みするのだし、そして相反して嫌悪される者だっているものだ。
この本丸の審神者は未だ年若き…具体的には齢13程の娘だが、その年頃の少女にしては珍しく、同田貫正国や山伏国広、蜻蛉切など硬派な性格のものばかりを贔屓していた。贔屓とはいっても、何も極端に優遇した訳でもなく、また他の刀剣男士を軽んじることはあまりしなかった。ただ信をより多く彼らに注き、重用していた。愛の対義語は無関心との通り、会話も交わさない相手も数振りいたが、別段嫌っている訳でもなく、ただただ審神者の心が向かないだけだった。
「主」
「はい」
無表情、無感情。呼ばれたから振り向いた、そんな簡潔な意図の反応は生き人形のようにも思える。たった今山伏へ向けていた朗らかな微笑はどこえやら。女の身代わりの早さはある意味で賞賛に値する程のものだ。
「本日分の資材なら遠征部隊の各隊長がまとめてます。書類もこんのすけに渡しましたよ」
「…左様にございましたか。いえ、そちらの話ではなく、燭台切光忠が八つ時の甘味を用意したとのことです。どちらでお召し上がりになりますか?」
「山伏は?」
「拙僧は汗を拭いてから参ろう。先に召し上がりになられい、主殿」
「はーい。………食堂に行きます」
山伏と甘味で相殺された機嫌はまずまず。仕事も、出来不出来はともかく、きちんとこなしたらしい。若干刀任せなきらいもあるが、許容範囲である。
「すぐ来てね」とおねだりするような審神者の言葉に、山伏はカカカと笑いながら身を清めに裏手へと去った。姿が完全に見えなくなるまで見送っていたが、その途端振る相手を失った手が虚しく下ろされ、そのままこちらを一瞥してから審神者も母屋へ向かい始めた。審神者は贔屓する刀剣や甘味が傍にあると非常に機嫌が良い。甘味と山伏がいるならば、食べ終えた頃合に行けば確実に主命を頂けることだろう。
審神者の背をそうして見送っていると、何故だかまた振り返った。
「主、どうなさいましたか」
「長谷部も来ないの?」
「は、」
「…別に良いです」
ろくに返事もさせないで、また審神者は歩き出した。時たま、かの娘はこういった気まぐれで、気難しい所がある。厳しいかと思えば優しく、大目に見ることもあれば重箱の隅をほじくるようなことを言ってくる。
「あぁー…それは勿体ないことをしたね、長谷部くん…」
「どういうことだ?あの会話は、それ程大事なやりとりなのか」
「彼女、割と繊細なんだよ。君と一緒に甘味を食べたいなって思ったのに、気のない返事されたから落ち込んだんだね」
「…………」
子どもか何かか。
「子どもだからね、実際」
「なっ!?」
「長谷部くんって結構分かりやすいよねぇ」
「しかし、たったそれだけで気落ちしてしまうとは…」
「だからあの子からすれば、蜻蛉切さんや御手杵くん、山伏さんといるのが気楽なんだろう。あの子が可哀想だから、編成には気を付けてね」
「僕達も人間の都合で手前勝手に呼び出された身だけど、それは彼女も同じだよ。まだ可愛い盛りの子が、戦いに身を投じなければならないなんて」
きさ
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