カーテンコールは鳴り止まない



「ぜっっっってェイヤだ!」

おれが頑なに拒否しているのにも関わらず、目の前の彼女は「イヤだが嫌!」と言って引かない。かれこれこんなやり取りを三十分は繰り返している。不毛すぎる。さらば、おれの貴重な三十分。周りの奴らは止めに入ることもなく、やれやれまたやってるわみたいな顔してそんなおれ達を見ていた。ビスタとサッチはニヤニヤしながら見てる。なに笑ってんだ。見せもんじゃねェ。止めてくれ。

「だいたいよ、なんでおれなんだよ。別に他に頼めるやつがいくらでもいるだろ」
「いやだ。私はエースに頼んでるの」

買い物に付き合ってほしいって、そんなのおれの後ろでニヤつきながらコソコソなんか話してるビスタやサッチでもいいじゃねェか。どうせヒマだろ。次の上陸はナワバリの島で慣れた土地。補給と休息目的と聞いているし、あの二人のことだから、毎回行ってる美人なねーちゃんがいる酒場で飲むくらいの予定しかないはず。おれは島についたら真っ先に行きたい所がある。

「どうせいつものとこでしょ、ご飯食べに行くんでしょ」

彼女の何がそこまでさせるのか。目を薄らとうるうるさせながら言う姿に一瞬たじろいでしまうけれど、ここで折れる訳にはいかない。

「よくわかってんじゃねェか。そういうことだ。同行なら他あたれ」
「⋯⋯あそこの酒場のウェイターさん」
「ん?」
「あそこのウェイターさん、おっぱい大きくて可愛いもんね」
「……はぁ?」

後ろでビスタとサッチがついに吹き出してゲラゲラ笑い出した。誰がおっぱい目的だ。

「ちげーよ!おれは純粋にメシが食いてェの!」
「じゃあ買い出しの合間でご飯屋さん寄るから付き合って!」
「毎分毎秒食べてたいから却下!」

実は上陸するってなる度に絶対繰り返されているやり取り。思わず溜息が出る。
以前に一度だけ、彼女がこの叶わぬ願いを言い出すより少し前、ナースに言われて買い物に付き合った事がある。マルコが言っていた「頑張れよい」の意味が身に染みてわかった。人の買い物に付き合うのは退屈で疲れるし、何より腹が減る。

「お前もそろそろ諦めろ。なんでおれなんだよ」

ため息混じりに言えば、彼女は少し黙り込んでから「あー」だとか「うーん」だとか、言葉にならない声で唸り始めた。

「だって⋯⋯私、その、んー」

上陸する日ちょうど誕生日だからエースと一緒に買い物行きたかったの。
消え入りそうな声で言われたセリフに更に深まる疑問。だったらなおさらなんでおれ?


「おねがい、十分だけでもいいから。私、エースと一緒に島を歩きたい」


顔を真っ赤にしながら言われたせいで多分おれの顔も赤くなってるけれど、これは燃えるように照らす西日のせいだ。





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