台本を読むのに夢中になっていて気付かなかったがいつの間にか時計の針は23時を指していた。今まで耳に入ってこなかったゲラゲラというバラエティー番組特有の笑い声に視線を向ければなまえが好きだとか言ってたお笑い芸人がテレビの中で暴れている。本当に好きだったんだーとそう言った当の本人を見ればカクンカクンと時々意識を飛ばしながら真剣な顔でテレビを見ているもんだから俺はつい眉をひそめた。






「…なまえ?」

「っ、ん?何?」

「お前さ、もう寝れば?」

「え、何でっ!?」






何でってそりゃお前、と言いかけて俺はその言葉をどこかに飛ばした。実際は眠たそう顔があまりにも可愛くて見とれたと言ったほうが正しいかもしれないがそれは黙っておこう。持っていた台本を閉じて隣に腰を下ろせばゴシゴシと目をこすったなまえが俺を見た。






「もう仕事は終わったの?」

「終わったよ」

「そっか、」

「何、もしかして付き合って起きてたの?」

「ううん、違う」






ゆっくりとした口調でなまえはぼそりとぼそりと喋りながら時折聞こえるテレビの笑い声に起こされるようにハッと目を開く。瞬きの速度もゆっくりと頭も徐々に下へ下へ。俺としてみたら可愛らしくてもう少し見ていたい気もするが無理して見るぐらいなら寝た方が良い。






「なまえ、テレビ消すぞ」

「っ!ダメダメ!見てるから…!」

「じゃあテレビは今何の話してた?」

「えっと、ドラマとか…?」






眠た気な声がそう応える。なんともアバウト過ぎる答えに小さく吹き出して、はーい残念、と俺はテレビの電源を消した。途中でぷつりと消えた笑い声にちょっとだけ慌てたなまえが、あと少しだから!と俺を見て必死に訴える。






「でももう眠いんだろ?」

「そんなこと、ない…」

「本当に嘘ばっか」






と下がり始めた顔を覗き込めばハッとしたなまえが俺を見て頭を振る。そのたびに微かに香るシャンプーの匂いにどこか愛しさを覚えながらなまえの髪を耳にかければさっきよりも眠た気な顔がよく見える。





「ベッド、行こう」

「でも、まだ」

「明日寝坊するよ?」

「分かってるけどあと少し」

「ダーメ。もう日付変わるよ」






と時計を見ればちょうど時計の針は59分を指している。大変だ。本当に日付が変わりそうだ。






「ほら、立って」

「…浩史、」

「ん?何?」

「誕生日、」

「え?」

「誕生日、おめでとう」

「、!」







なまえのその声とちょうど同時。時計の針が59分から0時へとカチリと動いて、テレビの上のデジタル時計は27日から28日へと日付を変えた。…もしかして、無理して起きてたのはこういうこと…?






「え、まさかなまえ、」

「私一番でしょ?」

「え、?」

「おめでとう言ったの」

「あ、うん…!」

「ん、良かった」






そう言って笑ったなまえは眠た気な瞳をこすりながらギュッと俺に抱き付いて耳元で好きっと呟いた。



あ、やべ、めっちゃ押し倒したい






来年も再来年も
(私が一番に言うからね)


20120128 Happy birthday!神谷さん!
1997