「ワンピースいいね」

「はぁ?」

「俺ワンピースの中に入りたいっ!」

「………」




ちょっと何言ってんのこいつ。アホなの?変態なの?どっちなの?いきなりこんなことを言う彼氏を持った私は今後のことを少し考えるべきか…。キラキラと目を輝かせながら話す大輔にまさにどん引きである。




「やっぱ男のロマンだよねー」

「そうだなお前は女の敵だな」

「やっぱ冒険したいじゃん!」

「それは冒険と言うなの犯罪だからな」

「え、犯罪?」

「極悪人の彼氏なんてやだわ…」

「ちょ、何の話?」





何の話ってこっちが聞きたい。あなたが私の目の前で犯罪予告したんだろうが。ぽけんとする大輔を引いた目で睨み付ける。




「何その目…?」

「引いてんだよ」

「え、何で引いてんの?」

「君がワンピースの中に入りたいって言ったから」

「ごめん、中2くさかった?」

「中2くさいって言うか犯罪の香りがするよね」

「また犯罪っ?」



俺何か悪いこと言った?と驚いている大輔にとうとうダメになってしまったんだと悲しくて声も出ない。私はあなたを常識ある人だと思ってたのに…!




「やっぱ著作権に引っかかるかな?」

「著作権…?」

「でも著作権に引っかかること俺してる?」

「え、待って大輔。何の話?」

「だからワンピースの話」

「ワンピースって何の?」

「漫画の」

「………」




思わず黙り込んだ。ワンピースって、ワンピースって、そっちかーい!何だか崩れ落ちそうになった。とりあえず彼氏が犯罪者予備軍でないことへの安心と大変な勘違いをしていた自分への残念な気持ち。なんか私は疲れたよ大輔…。




「何の話だと思ったの?」

「そのままの意味だよね」

「そのまま?」

「女の子のワンピースの中に入りたいのかと思った」

「わーお」

「しかし君が悪いっ!」




勘違いさせるような言い方の大輔が悪いんだ!と叫びながらドガっと大輔の隣に腰を下ろした。めちゃくちゃ恥ずかしいよね。本当に成敗してやりたい。神谷さん呼んでこようかな、そんでルームとか言ってもらえばどうにかなるんじゃないかな、って違うか。





「だってワンピースの漫画熱いんだもん!」

「あーそう」

「勘違いして可愛いー」

「私が能力者だったら確実に君をやってるね大輔くん」

「どうもすみません」




謝った大輔を一瞥してため息を吐く。本当にこの人は…。大輔が手に持っていた漫画を受け取ってパラパラと中を見る。…確かに熱いぜワンピースっ!ルフィ可愛いよキュートだよルフィっ!しかしゴムゴムの実とかあったら便利だよね、色々立ち上がらなくてすむし…とか考えながら大輔に声をかける。




「大輔は食べるとしたら何の実がいいの?」

「なんだろーピチピチの実とか?」

「…ピチピチとか死語だね」

「じゃあハリツヤの実?」

「君は女の子なのかな?」

「じゃあモチモチの木とかっ!」

「大輔ももうおっさんか…」

「なぬっ!」




違うよ!と講義する大輔を軽く流し私はもう一度漫画に目を向けた。でもハリツヤの実はちょっといいな。




「なまえは食べるなら何がいい?」

「んー何だろう?ダルダルの実とか?」

「何それ気持ち悪い」

「なんか1日中だらけられる実みたいな」「そんな実なくても出来るでしょ」

「あーそっか」




まず今日がダルダルだもんね。




「やっぱワンピースの中に入りたいなぁ」

「だからその言い方止めろって」

「あ、だけどなまえのワンピースの中なら入りたいかな」

「少し黙れば大輔?」

「でも…ねぇ?」

「にやけんな、気持ち悪い」

「思ったけどエロエロの実とかいいね!そう思わないっ?」

「さよなら大輔」

「ちょっ!」





「嘘だよ嘘!」と叫ぶ大輔をスルーして今はとりあえずアドレス帳から神谷さんを見つけ出しさっさと助けを求めなくてはいけない。





中2病注意


(もしもしトラファルガー神谷さんですか?)
(なぜ神谷さんにっ!)

20110331
1997