「ねーなまえー」

「んー何?」

「なんかさ学生時代の卒業アルバムとかないの?」

「は?」



久々に家に来た大輔が突然そんなことを言い出した。アルバムかー…。




「そんなもんない、いや、」





あったかも…。そう呟けば大輔が嬉しそうにマジでーと叫んだ。突然卒業アルバム見せてと言われてもあるわけないと思っていたが、いや待てよ、と私はクローゼットを開けた。実家から持ってきた汚いダンボールをこじ開ければ『未来』とありきたりと言えばありきたりの文字が書かれた卒業アルバムが見事に発見された。





「あったわ」

「あったね」




ニコニコと嬉しそうな大輔が私を見ながら早く早くと急かし始める。アルバムをもらって以来あまり開けることのなかったそれはずいぶんときれいでページを捲る度独特の匂いがする。




「なまえは何組だったの?」

「私はD組」

「大輔のDだね」

「あーそうそう」

「うわっなんか冷たい!」




待ちきれんというばかりにD組に来るのをうずうずと待っている大輔は、委員会は部活はと高校時代の私について次から次へと質問してくる。




「あ、ほらD組だよ」

「待って探す!」

「いや、探すって名前書いてあるし」

「本当だ」

「なんか懐かしいなー」

「うおう!なまえ可愛いっ!」

「というか若いな」




変わらないねーと笑う大輔に少し照れながら仲の良かった友達やちょっとハゲてたけど優しかたった先生とか色んなことが思い出される。




「あ、こいつ」

「えーどいつ?」

「元カレだ」

「っ!」




何となく見つけた元カレを指差せば大輔は少し険しい顔でその写真を見つめている。元カレと言っても十何年も前の彼氏なのに何を思ってるんだか…。




「…格好いい人だね」

「そう?」

「うん、」

「野球部のキャプテンだった」

「硬派系か」

「何言ってんだか」

「くそー格好いいなー」

「え、でも大輔の方が」

「えっ!俺の方がっ!」

「坊主は似合うよ」

「………」




何か物足りなそうに私を見た大輔になんだか可笑しくなかった。大輔が期待しているようなそんな恥ずかしいこと残念ながら私は言えません。アルバムをまた1ページ捲れば『D組大好き!』と書かれたクラスページがやってきた。内容はよくある○○ランキングだ。




「こういうのうちの学校もやったよ」

「どこもやるもんだね」

「なまえはどこかなー」

「私書いてないんじゃない?」




すっかり忘れている内容は身長が高い人ランキング、お金持ちになりそうランキングとかその他もろもろ。そんなランキングが並ぶ中見つけたお嫁さんにしたい人ランキング。




「ちょ、なまえっ!」

「何?」

「お、お、お嫁さんにしたい人1位じゃん!」

「あー本当だ」




私すごいじゃんと何気なく笑っていれば今度こそ驚いたように私の顔を見た大輔がパクパクと口を動かしながら何かを言おうとしている。




「どうしたの大輔?」

「こ、こっちだってほら!」

「んーどれ?」

「良いママになりそうランキングも1位っ!」

「あらまー」

「な、何でっ!」

「そう言えば私の学生時代のあだ名おかんだったわ」

「お、おかんーっ!」

「何だい大輔」




はははっと笑って大輔を見ればやっぱり驚いた顔をしていて何だか余計に笑いがこみ上げる。そんなに驚くことなのかな?こんなのただの学生時代のお遊びランキングじゃん。




「学生の言うことは信用ならんよ」

「いや、てかなまえっ!」

「ん?何、大輔?」

「け、結婚して下さいっ!」

「えぇっ!?」






お嫁さんになりませんか?
(世界一幸せにすると誓うよ!)


(子どもは何人欲しい?)
(バカか)

20110927
1997