久々に事務所で会ったなまえちゃんに挨拶をすればニコニコと今日も可愛らしく微笑んでいる。巷ではMなんて言われがちな俺だけど、こういう可愛い子にちょっかい出したくなっちゃう野獣な一面だって持ってるんだよ。




「なまえちゃん!実は俺、猫飼い始めたんだ!」

「えーすごいですね!苦手克服ですかっ?」




驚いたように俺を見たなまえちゃんはやっぱり可愛くて、ちょっと褒めてくれてる言い方もどこかこそばゆくて。




「あは、実は嘘でした」

「え、嘘なんですかっ?」

「今日エイプリルフールだから」



なんだー騙されましたよーと笑うなまえちゃんは少し残念そうで、さすが神谷さんと1、2を争う程の猫好きだと思う。




「やっぱり少し期待した?」

「猫好きなんでそりゃ期待しますよ」

「マジでか」

「マジです」



クスクス笑いながら俺を見るとなまえちゃんが、あとそれから、と何かを付け足すように口を開いた。


「猫を見るって口実で小野さんと会えると思ったんだけどなって」

「えっ?」




とんでもなく情けない声が出て、それと同時に顔が火照り出す。思わず何も言えなくてもにょもにょと口ごもっていれば、なんて嘘ですよ、となまえちゃんが照れくさそうに呟いて俺を見た。



「う、嘘かーびっくりー」

「あ、でも、」

「ん?」

「もし猫を飼った時は教えて下さいね」




そう言ってニコリと笑ったなまえちゃんに俺は何かを奪われた。






嘘付きは
(恋泥棒の始まり?)

20120401


1997