夜中の12時。携帯のバイブが鳴りだした。ゲームを一時停止して慌てて出れば『よぉ』なんて間抜けな声にため息が出る。




『早く出るなんて珍しいねー!ゲームしてると思った』

「俺も早く出ることぐらいある」




ゲームの話には触れずに返事を返せば、明日は雨だねなんて憎たらしいことを言う。




「で、なんだよ?」

『んー?暇なんだもん』

「バカ野郎、俺は忙しい」

『あーゲームしてるからか』

「違うっての」




してるくせにと笑うなまえはどこまでも憎たらしい。まさか見られてるのではないかなんて気にもなる。




『私もねーボスを倒したよ』

「なんのボス?」

『クッパ』

「マリオやってたのかよ」




強かったと楽しそうに話すなまえに気持ちがほんわかなるのは何だかんだで俺がなまえを好きだからだと思う。




『ピーチ姫救出するのに何週間もかかったの!憎たらしいねー』

「何で憎たらしいんだよ」

『だって何週間も何ヶ月もかけて助けに来てくれる王子様が居るんだよ?愛されてるじゃん!憎たらしいー』




騒いでるなまえにふと疑問がわく。マリオって王子なのか?。そう問いかければ『当たり前だ』と即答される。そうなのか…。




『王子様でしょ!つなぎ王子だよ』
「なんだよつなぎ王子ってよ」

『つなぎ着た王子様だよ』




「まんまだな」なんて言ったけどつなぎ王子なんて聞いたことない。だいたい国を治める次期当主がつなぎってありなのか。というよりも




「お前はつなぎ着た王子で満足なのか…」




俺的にはそっちのほうが問題だ。




『別に構わないよっ!私を想ってくれるなら服装なんて二の次二の次!』






あぁそうかよ。『ピーチ羨ましい』とまたも電話越しに騒いでるコイツはバカかもしれない。いや、バカだ。しかも嫉妬の対象者がピーチ姫というのも普通じゃない。






「ゲームに嫉妬するな」






ましてやピーチ姫に。






『だったらゆうきゃん。私を救出してくれよ。助けて、ヘルプミー』






おかしそうにケラケラと笑いながら、ゆうきゃんもつなぎ王子の仲間入りなんて言っている。





「残念ながらつなぎは着れないな」

『別に私は肉村王子でも構わないよ』

「お前な」




と笑ってため息をつけば電話越しの楽しそうな声。なまえが姫でも悪かない。


「だいたい何からお前を救出するんだよ」





俺の質問にうーんと少し悩むと




『今の私とゆうきゃんの関係からかな?』

「え、?」

『友達って関係から救出してよ』







ヘルプユー
(今すぐにでも救出してやる)

20100818

1997