私は昔から寒さは苦手だ。何でだろうと考えた末に思い付いたのが自分は夏生まれだからだ、という結論。いわゆる夏生まれは寒いに弱い理論。ちなみに暑さには強いはず…!だって私は強いもん!マフラーに顔を埋めて私の隣を見れば素知らぬ顔で中村くんが歩いている。




「中村くん寒くないの?」

「寒くはないな」

「何で?脂肪を蓄えてるから?」

「しばくぞ」

「いやんっ」




くだらない冗談を言いながら持っていたカイロをガサガサ振った。あー寒い本当に寒い。やっぱり夏生まれだからだな。体が寒さを受け付けないよ。夏最高ーっ!しかしながら隣の中村くんはやっぱり大したことないというように平然と私の隣を歩いている。これはもしや中村くんは冬生まれなのかもしれない。冬生まれは寒さに強い理論かもしれない。




「中村くん、中村くん」

「何だよ」

「中村くんて誕生日いつ?」

「はぁ?」

「はぁじゃなくて誕生日だよっ!」




私の提唱した理論を証明すべく中村くんに尋ねればやけに恥ずかしそうにもにょもにょと口を動かした。




「………だよ」

「え?」

「……日だよ」

「ん?」

「だから、今日だよ…!」

「えぇっ!」




まさか今日とは知らなかった。偶然とはあるものなのですね。そしてやっぱり冬生まれ。私の理論当たってるじゃん!と調子に乗りながら「それなら言ってよ」と中村くんを見る。中村くんはと言えばまたもにょもにょとはっきりしない口振りで「うるせーな」と返す。




「もっとアピールしなよ」

「普通しねーだろ」

「なんで?冬生まれだから?」

「生まれ関係ないだろ」




ここにきて冬生まれは強調しない理論なのか。私は何枚論文を書くはめになるのだろうか、とか言っちゃって。





「知ってたらプレゼント上げたのに」

「別にいらねーよ」

「遠慮すんなよ中村くーん」

「うぜーななまえ」

「あはは、照れちゃって」




「照れてねぇ!」と言いながら顔が赤い中村くんにクスクス笑ってしまった。なんて分かりやすいやつなんだ。しかし本当に何か上げたいと思うな。




「中村くん好きな物って何?」

「だから良いっての」

「あそっか肉か!じゃ肉おごるね」

「肉だぁ?」

「うん、肉。はい決まり!」

「おまっ!勝手に決めんなよ」

「良いじゃん肉!2人で行こうよ!」





何だか照れくさそうな中村くんの背中を叩けば「痛て…!」と声を出した。肉だよ肉!やっぱ誕生日には焼肉パーティーだよね!1人でバカみたいに喜んで「で、いつ暇?」と中村くんを見れば困ったように眉間にしわを寄せ、口に手を当てている。あれ、ちょっとなんだこの態度?




「え、何?そんなに嫌なの?」

「なまえさ、それわざとか?」

「わざと?何が?」




何言ってんの中村くん?いまいち意図が読めなくて私は首を傾げた。そんな私を見て中村くんは深い深いため息を吐いた。え、マジでなんだろ?私何か言ったっけ?




「なまえは本気で冬生まれが寒さに強いと思うか?」

「うん、そんな気がする」

「言っとくが俺は寒いのは嫌いだ」

「えーそうは見えないけどな」

「それはお前が近くにいるからだ」

「…へ?」





そう言って私の顔を一瞬だけ中村くんが見た。それってどういう意味かな?私はその一瞬混じりあった視線と中村くんの横顔から必死に言葉の意味を探す。寒さは嫌いだけど私が近くにいると寒くない。つまり私がいると暑いってこと?熱血とかそういう意味じゃないよね。暑い、暑い、暑い。それとももしかして…熱い?そういえば中村くんの顔、赤いや。




「お前がいると照れんだよ」

「照れる…?」

「つまり簡単に言うと俺が、」





「なまえに惚れてるからだ」







恋愛の理論
(理屈じゃ証明できないや)


(ななな中村くん私も熱いよ!)
(うるせぇあんまこっち見んな!)

20110225
(Happy birthday中村さん!)
1997