はぁと無意識のうちにデカいため息を吐けば不思議そうな顔をしたなまえが俺を見た。どうかしたの?と尋ねてくるなまえにしまったと内心思いながらいっそのこと悩みを解決するために話を聞いてもらおうか。いやしかし、言っていいもんか否かと少しだけ悩む。




「あ、聞いちゃまずかった感じか」

「いや、なんつーか」




まずいと言うか何と言うか…。ごにょごにょと少し口ごもった俺になまえが首をかしげた。なぜ俺がこんなにも悩んでいるかと言えば知り合いの、更には好きなやつの誕生日がもうすぐやってくるからだ。そこでプレゼントを贈りたいのだが女性への贈り物は何にするべきかいまいち分からない。





「女子が喜ぶプレゼントって何?」

「あぁ、あげたいんだ?」

「いや、まだ分からん」

「彼女?」

「ち、違くて、まぁ、あれだ」

「そっか、なんだろーな?最近流行ってんのはアロマとか?」

「アロマか、なるほど」





私もよく分かんないけどさと困ったように笑ったなまえになるほど、ともう一度頷いた。流行りものを上げるというのも考えてみれば手かもしれない。




「なまえは何欲しい?」

「私は何もらっても嬉しい派」

「アロマもか?」

「まぁね」




そう言って俺を見たなまえがクスクスと笑った。だが結局のところ、俺はプレゼントを贈ることが出来るのだろうか。ここまで悩んでもまだどこか躊躇ってしまう自分がいて、何だからしくない。






「なかなか難しいな」

「中村くんが思ってるほど女の子は難しくないよ」

「そうか?」

「そうだとも」

「でもやっぱ上げるか分かんねー」

「何でよーもったいないなー」






もったいない?残念そうにそう言ったなまえに俺は首を捻った。その言葉を頭の中でもう一度リピートしてみたが何ももったいない節が見当たらない。思わず何が?とたずねればなまえは少し唇を尖らせて俺を見た。







「そんなに悩んで上げないなんてもったいない」

「え?」

「プレゼントもらった人も中村くんが悩んだの知ったらきっと喜ぶよ」

「そうか?」

「そうだよっ!」

「気持ち悪くねーか?」

「いいえ全く!と言うか中村くん」







いきなり改まって俺の名前を呼んだなまえが真っ直ぐと俺の目を見た。俺もそれに応えるように見返せばお互い見つめ合ってるみたいな何だか不思議な状況が出来上がった。




「世の中さ、やった者勝ちだよ」

「はっ?」

「プレゼントするのも何するのも全部やった者勝ち」

「やったもん勝ち…?」

「やらなきゃ後悔することだらけだよ」





そう言ってニコッと笑ったなまえが俺の肩にトン、と拳をぶつけた。ぶつかった拳に俺の心臓がドクリと波打って少しだけ目を見開いた。やらなきゃ後悔する。そうか、後悔するのか。




「俺やっぱプレゼントするわ」

「おっ!さすが中村くん!」

「だからなまえ、プレゼント何欲しい?」

「は?」

「つーかさ、好きだわなまえんこと」




やったもん勝ち。俺の言葉に驚いたなまえが大きく目を見開いて俺を見た。そう言ったのはなまえだろ?




「やったもん勝ちなんだろ?」

「…こ、後悔はしてない?」

「もちろん。後悔はしてないし」





後悔もさせねーよ。
そう言って小さく笑えば恥ずかしそうななまえがにっこり笑って頷いた。







やったもん勝ち
(つまり告白したもん勝ち)


(プレゼントはアロマがいいか?)
(いや、実はアロマ苦手)
(何だそりゃ)
(あはは、ごめん)


20111006
(0929 Happy birthday!美紅様)

1997