そう言えば俺付き合いだした、とわざわざ律儀に報告してくれるのは私のことを信頼してくれているからなんだろう。やったじゃん!なんて私が大袈裟に喜べば、どこか恥ずかしげな顔に嬉しさが見える。あらあら本当に幸せそうだ。




「想いが伝わって良かったね」

「ま、まぁな…」

「何々っ?もっと喜びなよー」

「うっせぇな」

「あっはは照れてやんの」




私がそうやって茶化せば中村はふいっと目を逸らす。どうせならもっと喜べばいいのに照れくさそうに唇を尖らせて笑いもしない。私は中村が付き合えて嬉しいよ。のろけ話だって嫌がらずに聞いてあげるよ。だからさ、そんな顔じゃなくてで笑って報告してよ。




「告白はいつしたの?」

「ん、2週間前ぐらい」

「えっ、そんな前なのっ?」

「うん」

「もっと早く報告してよー」

「やっぱお前には直接がいいと思って」

「はっ?」

「報告はメールじゃダメだと思ったんだよ、」

「っ、」

「なまえには」

「そりゃ、そうだー!」


あははっとまた声に出して笑ったら中村がやっと小さく笑った。




「いやーでも残念だ」

「何がだよ?」

「相談のるって体でご馳走してもらえなくなるからね」

「何だよそれ」

「あともう1つはねー」

「まだあんのかよ」

「私も中村のこと好きだったから」

「はっ?」

「はっ!」




な、何言ってんだお前、と目を見開いて驚く中村に私はニヤリと笑ってみせた。




「なんて嘘だよ」

「う、嘘っ?」

「今日は4月1日エイプリルフールだからね!」

「なっ…!」

「だから冗談、驚いた?」

「お前よー…」





呆れたような顔で、でもおかしそうに笑う中村は、私を見つめて驚いたよと優しい口振りで話す。




「また奢ってやるっての」

「あら嬉しい」

「ダチなんだから当然だろ」

「あはは、友達思いだねぇ」

「うっせぇよ」

「照れるな照れるなー」




ニッと歯を見せて笑えば中村も自然と笑い返してくれる。そっか友達か。そうを心の中で繰り返したらすごく胸が締め付けられてそれを誤魔化すようにやっぱり私は笑うしかない。今更そんな笑顔見せちゃって。最初から笑ってろよ、辛いじゃんチクショウ。今のその言葉もさ、嘘って笑ってくれたらいいのにね。







中途半端な嘘
(好きだったなんて)
(本当は今も好きなんだよ)

20120401
1997