「いやぁ!神谷さん死なないで!」

「俺、神谷さんに教わりたいこといっぱいいっぱいあったのに!」

「目を覚まして神谷さんっ!」

「ヒロC?ヒロスィーーー!」



「…お前等うっさい!」





うわー、大きい声出したら疲れた。何なのこいつら。お見舞いに来たんじゃないのこいつら。


夏の疲れが出たのか風邪を引いた俺は有り難いことに1日休みをもらえた。この貴重な1日にしっかり休めば疲れも取れるだろう、と思ったところのこれ。なんでこんなに疲れてるの俺…。




「お前等もう帰れよ」

「何を仰いますか!私達が看病しますよ」

「そうそう!俺等が性力のつくお粥作りますよ☆」

「なんか字がおかしいんだけど!」




熱は37度まで下がった。大分楽になったがなぜ体調悪いのに突っ込んでんだろう俺。こいつら楽しんでんな。はぁとため息をつけば「お台所借ります」というなまえの声。おーおー勝手にしてくれ。


小野くんと台所に向かい時折聞こえてくる楽しそうにキャイキャイと騒ぐ声。…女子か。あ、1人は女子か。ってどんだけくだらない突っ込みしてんだろ。本格的に疲れてきた俺はゆっくりと目を閉じた。あーなんか眠れそうだ…。

眠れそうだ―――――





「あなた出来たわよ」

「ダーリーン」

「……」




なんて言うかタイミング悪い。し、うざいよこいつら。とりあえずニコニコする2人を一瞥して起き上がろうとすれば「起きなくて良いですよ!」と止められる。もうなにさ。




「さてお待たせしました!」

「なまえアーンド大輔特製!性力お粥ー!」

「あーすごいすごい」




ジャジャーンという効果音付き。だから何で性力なんだよ、字が違えよ。そんな突っ込みすら出来ない俺をよそに、なまえはスプーンにお粥をひとすくい。






「はい、かっちゃんあーん」

「誰がかっちゃんだ!」

「神谷のかっちゃんです!神谷さん南ちゃん好きだろっ」

「かっちゃんとか死ぬじゃん!もういいわ死んだくだり!」




「えーかっちゃんたら」と笑っているなまえは南ちゃんなんかとはほど遠い。というか普通に食べさせて欲しい。もう自分で食べたい。




「じゃあ、おっちゃんにならいいの?」

「誰それ」

「もしやおっちゃんて俺?!」

「うん、そう小野くん」

「ちょ、イントネーション気を付けて!」




そう言ってケラケラ笑ってる2人に俺もつい笑ってしまった。あーぁ不覚だ。でも、まぁいいか。明日にはきっと治るだろう。
今はなまえと小野くんの精力、じゃなくて性力お粥を食べて明日に備えよう。




迷惑なお客達
(明日覚えてろよ)
(でもまぁ。嬉しかったよ)


(はい、ダーリンあーんだっちゃ)
(もう自分で食べさせて!)

20100916
1997