「ヤスぅぅぅ」

「何」

「チョコレートプリーズっ!」

「はい?」






何言ってんのこいつというような視線を向けるヤスの腕を一発叩いて私は笑う。本当に冗談はやめとけって!






「チョコレートだよ!私にくれ」

「何でよ逆でしょ」

「逆なもんですか!時代は変わっているのだよ」






ふはははと思い切り笑えば心底面倒くさそうにヤスはため息を吐いた。まったく失礼しちまうぜ。私は軽く咳払いをしてかけているメガネをグイッと上げた。






「いいかね保村くん。今や女子が男子にチョコを上げるなんてもう古い!」

「もう何言ってんのこの子」

「時代は逆チョコブームなのだよっ!」

「何逆チョコって?逆にチョコレートは上げないの略?」

「すなわち!男子から女子へ上げるのだよ!」






ビシッとヤスを指差せば「聞こえないな」と耳を塞いだ。そんなの許さないんだからな!ヤスの手を掴んで耳からどける。私が今日という日をどれだけ待ち望んだことか。




「俺そんな時代を生きてない」

「いいや君は今を生きているのだよ」

「知らないそんなことー」

「目を背けないでヤス!」






周りから見たらかなりシュールだなとか思いながらもヤスに言い寄ればかなり大きなため息を吐いて頭を掻いた。






「だいたいチョコなんていらないよ」

「なんかモテない男子みたいな台詞だね」

「なまえ、うるさい」

「はーい」

「俺はね、なまえと出会えてこうして居られるだけでそれでいいの」

「えっ」

「だからチョコとか関係ない」

「お、おう…」






何だか突然すぎたせいで上手く返事が出来ない。少し熱くなった顔でヤスを見れば当然だというような顔で私を見ている。なんだよもう。冗談はよせって。恥ずかしくなってもう一発腕を叩いた私はきっと正しいと思う。










Happy valentine



保村さんとの関係がよく分かりませんね。彼女なんでしょうか?(知らん)

1997