「裕行バレンタイン」

「おうサンキューなまえ」






ソファーに座る裕行に作ってきたチョコを渡せば嬉しそうにに笑った。なんだその笑顔。嬉しいじゃないか。






「開けてみて!」

「おう」






私の力作のチョコレートを見て裕行は何て言ってくれるだろうか。どうしよう。あまりの力作っぷりに買ったの?とか言われたら。いやいやそれよりも料理上手だな!今すぐにでも嫁に来い!とか言われたらどうしよーうっ!!なんて妄想にふけっていれば





「やべ旨そう!いただきます」

「えぇっ!」

「、?」






それだけ言った裕行はニコニコ笑いながらパクリとチョコレートを頬張った。いやいやいや!可愛いなって違う!私の想像と違うんですけど。もっとリアクション欲しかったんですけど!微妙な喪失感を感じていれば裕行が不思議そうに私の顔を覗き込んだ。






「え、俺何かした?」

「ううん!特に何も!」

「食べちゃまずかった…?」

「違うよ食べて下さい」




ちょっと調子に乗った自分がいけない訳だから何とも言えない。話を変えるように「美味しい?」と裕行に聞けば「かなり旨い」と呟いて私をジロジロと見つめた。






「やっぱり何かしたか」

「え!してないしてない!」

「良いから言ってみ」

「いや、えっと…」

「なまえ、言って」






そう言って私が話すのを待つ裕行に私は渋々諦めてぼそりと呟いた。






「もっとリアクション欲しかったなって」

「リアクション?」

「見た目の感想とかなんかそんなんで」






自分の妄想が先走ったせいで落ち込んだとも言いにくく思わず下を向いた。恥ずかしいし情けないし申し訳ないし何だかよく分からない。だけどそんな私に裕行は「そうか」と納得して私に少し近付いた。






「作ってくれたのにそうだよな」

「………」

「旨そうでついがっついた」

「………」

「ごめんな?」






何て返事したら良いのか分からず黙って裕行の話しを聞いていれば私の様子をうかがうように真っ直ぐ目を見て謝ってくれた。こんな時に不謹慎だけど格好いいです…。顔が熱くなるのが分かった。






「嬉しくなりすぎた」






そう言って裕行が照れくさそうに笑ったもんだから私もつられて笑ってしまった。



「ありがとう裕行」

「いや、本当に味も見た目も最高だから」

「うん、ありがとう」

「こちらこそ俺のためにありがとう」






お互い照れながらありがとうを言い合えば何だか別の言葉を言いたくなる。「裕行」と改めて名前を呼んで私はにっこり微笑んだ。






「大好きです」

「っ!」






その言葉に少し赤くなった裕行は言葉より先にキスをした。













Happy valentine



彼女をわがままにしようかなと思いましたがやめました。吉野さんは男前だけど最終的には照れてて欲しいです。
1997