「ちょっと何摘み食いしてんの!」

「良いじゃん減るもんじゃないし」

「減るもんだからね!」






湯煎途中のチョコレートを摘み食いしているだいさくの服を引っ張って離す。本当に少し目を離したらこれだ。「しょうがないんだから」とため息を吐けば反省した様子もなくだいさくはニコニコと笑う。






「チョコレート美味しいね」

「あっそ」

「なまえも食べたいくせにー」

「そんなことないもん」






こうなればさっさと溶かしてしまおうとチョコを小さく砕きながらグルグル回す。横で楽しそうに見ているだいさくは放っておいて今はチョコにだけ集中しよう。徐々に溶け出したチョコはより一層甘い匂いを放つ。






「ずいぶん溶けたね」

「そうだね」

「良い匂いだし」

「でも食べちゃダメだからね」

「はいはい」






分かってますよと更に呟きキッチンのカウンターに頬杖をつくと私を見上げた。「何よ?」と尋ねればだいさくは何かを企むようにクスリと笑った。


「なまえも少しは味見すれば?」

「湯煎に味見もないよ」

「じゃあ食べさせてあげようか?」
「はっ?…っ!」






訳分からんとだいさくを見れば湯煎したチョコに指を突っ込み私の口にその指を入れた。んむっと妙な声が出れば口の中に広がる甘さ。「ちょっと」と声を出そうとすればカウンターとだいさくに挟まれ、更にはだいさくの顔が目の前までやってきた。






「美味しいなまえ?」

「っ!」






目の前で満足そう笑いながら言うだいさくの手が腰に回ってきた。ちょ!何やってんのこいつ!調子にのるなコノヤロウっ!






「だいさくっ!」

「うわっ」






どん、と思い切りだいさくの胸を押し返して呼吸を整える。いつからこうなった。ちょっと仲良くチョコ作ってただけなのにおかしいなぁ本当に!






「このチョコはみんなに上げる用なんだよ!」

「あっそ」

「上げれなくなるじゃん!」

「だったら上げなきゃいいじゃん」







そう言ってぷいとそっぽを向いただいさくに少しイラッとして睨み付けてやればさっきとは打って変わって不機嫌極まりない。なんであなたが不機嫌なんだよ、と思った所でふと気付く。なるほどこれはもしかして…






「やきもち?」

「………」

「だったらもっと可愛く妬いてよ」

「可愛く妬くって何」

「んー…確かに何だろ?」






自分で言った事が分からずに困った顔でだいさくを見れば呆れたように笑ってからギュッと私に抱きついた。今度はさっきとは違って恥ずかしそうな嬉しそうなそんな感じ。ついついにやけてしまいそうだ。






「他の人には上げないで」

「…それってやきもち?」

「そうですけど何かー」

「いいえ何も」






そう言って優しく抱き締めてくれるだいさくの背中に私も腕を回して「分かりました」と頷けばチョコよりも甘いキスが降ってきた。







Happy valentine



なんか今までで1番エロいのはなんででしょう…。岸尾さんのイメージがエロ可愛いみたいに思ってたらおかしくなりました。やってしまいましたね。HAHAHA←

1997