「やばいなこれ私天才かなこれ」






ふははと思わず笑えばソファーに座っていた健一が迷惑そうな顔でこちらを見た。只今チョコケーキ作りの真っ最中。ちなみに本日はバレンタインなり。優しい優しいなまえちゃんは彼氏健一のご希望通りチョコケーキを作っている。






「お前1人でうるさいわ」

「仕方ないじゃん本当に私天才なんだから」

「天才は自分を天才とは言わん」

「じゃあ神童」

「なまえは立派な大人やろ」






何だかんだ突っ込みをいれ呆れながら私の元まで来た健一はちょうど作り終えたチョコケーキを見て「へぇー!」と声をもらした。ほらなすごいだろ。やっぱり私は天才かもしれない。






「よく出来とるな」

「あっはっは!くるしゅうない」

「何か腹立つわー」

「いや本当に美味しすぎて私ったらチョコレート王国のお姫様かと思って」

「あぁ、だから高飛車なんか」

「イエス」

「アホ」






とは言ってきたが嬉しそうに後ろから抱き付いてくる。素直じゃありませんね健一くんは。「食べようよ健一」と声をかければうーんと何だか煮え切らない返事をしてきた。


「なまえお姫様なんか」

「は?」

「あ、いや、別に」

「え、何?可愛いってか?」

「ちゃうわ」

「じゃあ何?似合うって?」

「そこまで言ってないやろ」






どことなく躊躇しながら話す健一の顔を思わず見上げた。何かを考えるようにしばらく少し口を尖らせていた健一がやっと口を開いた。






「やっぱお姫様とか好きなん?」

「はいっ?」

「なっ、そんな驚くなや」

「あ、ごめん。なんかつい」

「やっぱもうええわ!」

「嘘ごめん!少し憧れたけどっ!」

「………」

「いや、憧れました…」






後ろから抱き締める力が強くなって健一が私をジッと見つめてる。いや、なんか恥ずかしいです。羞恥プレイですかね。そうなんですかね。「まぁ昔の話ですが」と言い訳がましく付け足せば健一はいきなりプッと吹き出した。






「な、何笑ってんの!」

「いや、やっぱ可愛い思て」

「バカにしてんなコノヤロウっ!」

「バカにしてんのと違うわ」

「う、嘘つきは嫌いやー!」

「口真似すんなよ」






楽しそうに笑いながら更に私をギューッと抱き締めると「ほんなら」と呟いた。






「俺はチョコレート王国の王子なるわ」

「んなっ!」






ケラケラ笑いながら話す健一にやっぱりバカにしてる!と叫べば私の耳元で低く囁く。「お姫様」そう言って耳にキスをした健一に私は思わず耳を塞いだ。







Happy valentine



なんですかねこのバカップル。なんか鈴村さんを突っ込みにさせてるうちにおかしくなりましたね。でも後悔はしてない、なんて言うわけない(ややこしい)

1997