これまとめといて、と言われた資料を机に置けばドサッとすごい音がした。おいおいマジかよと資料の多さに泣きたくなりながら一番上の資料を手にとれば図もなにもない文字だけの資料に思わず溜め息が出る。





「まとめてか…」






はぁ、と小さく漏れてしまったため息をダメだダメだと振り払って私は気合いを入れてもう一度資料に目を向けた。羅列された数字と長ったらしいカタカナ。クロスセクションて何だよ。つまり断面図だろ!分かりにくいわ!と無意味な突っ込みを頭の中で繰り返しながら1ページ、また1ページと資料を読み上げる。






「はぁー…」






さっきより長い溜め息を吐いて少し乱暴に資料を机の上に置けばその振動か積み重ね過ぎたせいか。たくさんの資料がドシャッと前に倒れる。






「あっ!」






何でそっちに倒れる!と焦って止めてみたが時すでに遅し。見事に正面の席へと2、3冊の資料がなだれ込んだ。あぁー!






「す、杉田くん!ごめんっ!」

「あ、大丈夫」

「コ、コーヒーとか倒れてないっ?」

「倒れてないよ」






わたわたと残りの資料を必死に押さえて正面の席の杉田くんに謝れば、大丈夫大丈夫と何とも気の抜ける声で私に返事をした。






「あの、本当にごめん!」

「いや、それより#name2#さんは大丈夫?」

「うん、大丈夫!」

「なんか大変そうだね」

「あーうん、まぁ…」






はははっとどこか乾いた声で笑いながら私は杉田くんから資料を受け取った。お互いに何もないデスクなもんでほとんどパソコンを隔てた反対側にすぐ相手が見えるといった感じで私と杉田くんは何となく仲良しだ。






「杉田くんは今何の仕事?」

「来週の会議のレジメ作り」

「あーあれね」

「そうあれあれ」






この間愚痴をこぼしてたやつね、という言葉は飲み込んで私達は少しだけ苦笑いをした。カタカタとキーボードを叩く音がそこら中から聞こえて、印刷機は絶えず動いて、時々シュレーダーの詰まる音が聞こえる。






「そう言えば今日のあれ行く?」

「あれ?」

「ほらあの」

「…あぁ!」






例の合コンね、と口に出せば杉田くんがシーっと口元に人差し指を当てた。あれとかあのとかそんなんで通じてしまうのも困ったもんだが、確か同期の山代くんが誘ってきたあれだ。何でか知らないが杉田くんと私も人数集めで誘われるという摩訶不思議なことが起きた。






「合コンってこんな誘い方するっけ?」

「しない、かな?」

「何?私は男性側に付くの?」

「それはないでしょ」

「じゃあ何で山代くんに誘われんだ私」






と首を傾げれば、いや、それは、男…とぼそりと呟いて私を見た杉田くんに私は思わず、どういう意味だと突っ込みを入れる。






「まぁ山代くんの勘違いだとしても私は行かないかな」

「あぁそうなの?」

「そういう杉田くんは?」

「行くと思う?」

「んー…行くんじゃないかな」

「残念、行かないつもり」

「へぇーそっか」





カタカタと叩いていたキーボードの手を止めて杉田くんを見ればふいに視線が合って私の心臓は少しだけ早まった。






「男の人を目の前にご飯食べるのは杉田くんだけで十分」

「ははっ、そっか」

「お弁当のおかずもらえるからね」

「そういうことか」






そういうことでした。そうやって私が笑えば少し困った顔をした杉田くんも小さく笑った。






「じゃあ今日は一緒に残業だね」

「そのようですね」






そんな気の落ち込んでしまいそうな言葉でも、まぁ杉田くんとなら良いかな、なんて思ってしまうんだから私は結構この席が好きみたいだ。














しょうめん


個人的には杉田さんのデスクの上はガンダムとかのフィギュアが置いてありそうなイメージだけど資料がなだれ込んでそのせいでフィギュアが壊れちゃってそれ見て凹みながらも大丈夫ですって強がる杉田さんを妄想したらなんか可哀想になっちゃって結果何もないデスクになったよ、っていうどうでもいい話。(無駄に長い)

20120625
1997