次の出番まで時間があるからのんびりするかと廊下の長椅子に座りながら缶コーヒーを飲んでいればお疲れ様ですっとひょっこり現れたのは後輩のなまえ。あぁ、お疲れーと返事をすれば隣良いですか?とこれまたなまえはひょっこり俺の隣に腰かけて世間話をし始めた。






「最近寒くてやんなりますね」

「ねー本当に」

「温かい飲み物が欲しくなりますよ」

「分かる分かる」






俺がそう頷けば隣でホットココアと書かれた缶を両手で転がしていたなまえがにこりと笑った。早く暖かい日が来ればいいのにねぇとどこか親父くさくなれば何を思ったのか知らないが俺の缶コーヒーをなまえがジッと見つめだした。






「どうしたの?」

「あ、いや」

「まさか飲みたい?」

「い、いえ!ただ、高橋さんて手が大きいなと思って」

「手?」







そんなこと言われたのは初めてで缶コーヒーを持つ自分の手をまじまじと見ていれば、缶コーヒーが、と俺の手に握り締められる缶コーヒーをなまえが指さした。


「手でほとんど隠れてるから」

「え、あぁ…!」

「銘柄も見えませんね」

「確かにそうだね」

「私手が小さいさら羨ましいなと思って」






ほら、と見せてきたなまえの手は確かに小さく見える。それが女性の標準サイズなのかどうなのか分からないが俺の掌に簡単に収まってしまいそうなそんな感じ。







「試しに手合わせてみましょうよ」

「え!」

「はい、高橋さん、手!」






そう言ってまた笑顔を見せたなまえに少し照れながらゆっくりと手を合わせた。第一関節まで届いていない指先は想像していたよりも小さく感じさせて、大きいですねーと相変わらずにこにこと笑うなまえはどこか楽しげだ。






「あ、そういえば高橋さん!」

「ん?」

「手相見てあげますよ!」

「え、手相?」

「私少しだけ見れるんですよ!」

「そうなの?」

「はい!」






そう言って頷いたなまえが俺の掌をジッと見始めて、時々指をさしてはこの線がどうのと教えてくれる。正直俺としたら自分の手相の種類よりもなまえのころころと変わる表情のほうが気になって、長生き出来ますよーとかユーモアがありますねーと言われても右から左へと抜けてしまう。






「高橋さん」

「な、何?」

「高橋さんのこと好きな人がいるみたいですよ」

「えっ?」

「この線、分かりますか?」







微かに触れたなまえの指が俺の掌に熱を残す。どれ?っと少し覗き込めばなまえとの顔の距離がさっきよりも近づいて柄にもなくドクリと心臓が音を立てる。







「高橋さんのこと好きな人が近くにいますよ」

「本当に?」

「えぇ、あのっ…」

「ん?」

「好きです、高橋さん…」

「っ!」







それは余りにも突然に。心の準備も何もしていなかった俺には不意打ちすぎて心臓が張り裂けそうになる。恥ずかし気に小さく揺れたなまえの瞳を何も言えずに見つめていれば、それはふいに逸らされてなまえが慌ててイスから立ち上がった。






「す、すみません今のなしで!」

「あ、ちょっと」







立ち去ろうとするなまえの手首を掴んで思わず引き止めた。驚いたように俺を見たなまえの顔がだんだんと赤く染まっておどおどと目を泳がす。ねぇそんな顔、ずるいじゃん。









「俺もなまえが好きだよ」







そう言ってゆっくり握り締めたなまえの手は俺の掌にすっぽりと納まった。





幸せの相が出てるよ
(2人の手と手と合わせたら)
(幸せになるんじゃないかな?)

20120227

1997