「バカかっ!」




そんな罵声が部屋中に響いた。そんなに強く言わなくても良いじゃないね。チラリと近くのよっちんを見れば呆れたようにため息を吐いた。なんだよ助けてよ。




「前々から思ってたけどお前はバカだ!大バカ者だ!」




とうとう大バカ者発言。言っておくが大が付くほど私はバカではないはずだ。そりゃ確かに台本の読み間違いとかありますけども。人間なんだから仕方ないじゃない。床に正座しながら腕を組んで仁王立ちしている鳥ちゃんを見上げる。怒っていますオーラがにじみ出ている。




「まぁすけちゃん落ち着けって」

「落ち着けないだろ!」

「いや落ち着けって鳥海浩輔」

「お前は黙ってろ!」

「へいへい、」




やっと間に入ってくれたよっちんにもこれだ。ソファーに座っていたよっちんはそう言われてちんまりと体育座りをした。なんかごめんねよっちん。ことの始まりは飲み会だったかなんだったか。とりあえず何かで私が酔っ払って鞄を丸々置きっぱなしで家に帰ったのが原因、らしい。鳥ちゃんが届けてくれたみたいだが申し訳ないことに記憶にない。だから余計にご立腹している。うーむ困った。




「だいたい何で気づかないんだ!」

「何でかなー」

「どうやって帰ったんだ!」

「あれ、どうやってだろ」

「いつからこんな酒癖悪くなった!」

「いつからかなー」

「お前な!」

「さーせん」




すごい。説教の嵐だ。ハリケーン鳥海、とか言ったら怒られそうだよな。ふぅと心でため息を吐いて、もう一度よっちんを見れば「真面目に謝れ」といった表情。うーむ参った。




「お前どうしたんだよ」

「何だろうね?更年期障害かな」

「………」




ヘラリと冗談を言ってみたけどダメだ。突っ込みどころか冷ややかな視線。その視線で今なら私、幽体離脱とか出来そう。




「……鳥海くん」

「何?」

「…ご迷惑おかけいたしました」

「で?」

「申し訳ありませんでした」

「………」





黙ってる鳥ちゃんをチラッと見れば、はぁぁと大きなため息と「だからお前は」と再開された説教。今度はトルネード鳥海上陸だ。その後もブチブチうるさい鳥ちゃんに「私の保護者みたい」とお隣さんに呟けば豪快に吹き出した。




「よっちん何笑ってんの!」

「だって!」





ギロッと睨んで今度はよっちんにも説教開始。なるほど。鳥ちゃんは私以外にもみんなの保護者的ポジションなのかもしれない。




「なまえ!」

「はいな」






「今後俺が居ない時は飲むなよ!」





ぼんやりしてたら言われちまった。そうやって大声で叫ばれた言葉に。ほらやっぱ保護者じゃん。






保護者的ポジション
(気を付けるよ母さん)


(今のはそういう意味じゃない)
(とは気付けない大バカ者な君)

1997