ちょっとコーヒー買ってきてとパシられた私はガコンと音を立てて落ちてきたおしるこを左右で1つずつ握り締めてさっさとポケットにしまった。あぁ温かいよー。ポケットの中で熱を発する缶が私の手をジンジンと温める。




「鳥さん」

「おっ、待ってた」

「はいどうぞ」

「さんきゅー」




ポケットから出した熱々のおしるこを鳥さんの手に渡せばニコリとしていた鳥さんの顔が缶を見た瞬間に無表情になる。あはは。




「これ何?」

「おしるこです」

「え、おしるこ?」

「えぇ、おしるこです」

「俺コーヒーって」

「コーヒー全部売り切れでした」

「絶対嘘だろ」

「えーいやーあははー」




煙草におしるこってお前、と呆れる鳥さんにニコリと笑って誤魔化せばため息を吐いた鳥さんがおしるこ代を私に手渡す。




「あらあらくれるんですか」

「お前をパシリに使うんじゃなかった」

「あらまー」

「おしるこ久々だなー」




はー缶コーヒーと文句をこぼしながらも缶を開けた鳥さんはくんくんとおしるこの匂いを嗅いで私を見た。



「おしるこだ」

「おしるこです」

「だよな」

「私の一押しですよ」

「あーそう」




カチャッと私もプルタブを開けて缶に口を付ければゴグリと一口飲んだ鳥さんが甘いなぁと一言。




「美味しいでしょ」

「なんか懐かしい味がする」

「良いですねー」

「まぁ、安定の美味さだな」

「もう鳥さんハマりましたね」

「ん?うん、」




ハマってはいないけど、とサラリと言う鳥さんはおしるこを飲みながら煙草をプカリ。苦い匂いが私の鼻を掠めて口の中には甘いおしるこの味。




「鳥さん煙草と合います?」

「んー…普通」

「良い意味で?」

「特になく普通だよ」

「へぇー」

「気になるの?」

「まぁちょっとだけ」




自分で買ってきたくせになんだが甘い物と苦い煙草は果たして合うだろうか?いつもブラックコーヒー片手に煙草の鳥さんが今日は片手におしるこなんて持っている。案外普通にしている鳥さんにせっかく困らせた意味がないと少し不満だ。




「じゃあ吸う?」

「私煙草吸えないです」

「あぁそうなの」

「だから口で説明して下さい!」

「口で?」

「はい!口で!」



そんなん出来ないよーといつもの調子で応えるかと思えば煙草を一口吸った鳥さんがニヤリと笑って私に少し歩み寄る。




「何ですか?」

「じゃあキスしてやろうか」

「はっ?」

「口で教えて欲しいんだろ?」

「えっ…!」

「それが1番早いと思うぜ?」




ずいっと言い寄られた私が後ろに下がれば背中に冷たい壁が当たる。鳥さんっ…!と名前を呼べば正面の鳥さんが少しだけ首を傾げて、何?とどこか挑発的な態度で私を見た。




「さ、さっきの嘘!」

「嘘って何?知りたいんだろ?」

「いや、でも!」

「簡単じゃん」

「いや違くて…!」




口ってそうじゃなくて…!と慌てて呟けば鳥さんの顔が目の前に近付いてきて私は思わず目をつぶる。どうしようとバクバクと高鳴る心臓とギュッとつぶった目がだんだん緩くなった瞬間、顔にふわっとかかった煙に私はゲホゲホとむせかえった。




「うへ、煙草」

「あはははは」

「鳥さんあんたって人はっ!」

「可愛い顔だな、なまえ」

「っ!」

「恥ずかしかったか?」

「鳥さん本気でしばくっ…!」

「やってみろバーカ」




はははっと笑って私の髪をぐちゃぐちゃと撫でた鳥さんは完全に勝ち誇った顔をしている。くっそー覚えといて下さい!とまるで悪役のような宣戦布告をして鳥さんのおしるこを飲み干してその手に返す。あははっと鳥さんは相変わらず可笑しそうに笑うけど次会った時は絶対絶対お返ししてやるんだからな…!





宣戦布告
(私のドキドキ返して下さい!)


(次会ったら膝かっくんで)
(作戦バラしてどうする)

20130102
1997