久々に会えると思っておしゃれもした。髪も巻いた。普段入れないチークだって入れた。でもまだ季節は春だ。そう、率直に言おう。寒い。




「………」





雑誌で見たモデルさんはもう半袖に短パンで、そんな雑誌に影響されてつい着てきた服は春先の夜にはまだちょっと寒いわけで、待ち合わせ場所でかれこれ20分は待たされている私は薄手のカーディガン越しに腕を少しだけさすった。しかし遅刻とはなんたることか。携帯をいじりながら歩くサラリーマンや寄り添って仲良さげに歩くカップル。そんな人達を何人見たことか。腕時計をチラリと見てから、寒い、と呟いたところでふいに呼ばれた名前に私は顔を上げた。




「なまえ」

「あ、」

「ごめん、待った?」

「ううん今来たとこ、とかいうと思ったか!」

「あ、やっぱり」

「寒くて震えたわ」

「あぁ、あの有名な歌みたいに」




会いたくて会いたくて震えてくれたのかーなんてのんきな言葉を発する浩輔を一瞥して突っ込みもそこそこに、寒さを紛らわすために私は浩輔の腕を引いて歩き出す。




「怒ったー?」

「怒ったよ」

「あはは、マジかー」

「反省してないでしょー」




あっけらかんとしている浩輔に少し不満気な顔をしてみたが、まぁ怒らないのーと私の手を握ってくる浩輔にもう許してしまっている自分がいる。




「今日はしっかりエスコートさせて頂きますよ」

「それはそれは楽しみだなー」

「浩輔プロデュースなめんなよー」

「あはは、何だそれー」




さっきまでの寒さが嘘みたいに心からぽかぽかしてて少しだけ強く握られた手も隣で笑う顔も今の私には胸を高鳴らせる要素だ。




「しかし今日可愛いな、お前」

「え、」

「久々だから余計そう見える」

「あ、そう、ですか」

「おしゃれしてきてくれたんだ」

「いや、別に…」

「照れてる」




クスクスとおかしそうに笑う浩輔の腕を軽く叩いて顔をそらしてみたがなんとなくニヤニヤしているのが分かる。チクショウ。久々に会ってこんな甘ったるい事言ってくるなんて反則だ。嬉しいような悔しいようなそんな気持ちのまま熱くなった顔をなるべく意識しないように浩輔を見れば案の定ニヤニヤと嬉しそうな顔が私の目に映る。




「これもプロデュースの一環ね」

「っ!」




そう言って改めて私の手を取った浩輔に早くも心臓が音を上げそうなのは内緒だ。






心拍上昇中
(あ、こりゃもたない)


20140510
1997