「怖いDVD観ようか」

「何でっ!」

「楽しそうじゃん」

「いいえ全く!」




普通に楽しくお喋りしてたのになぜそうなる。いやなぜそうなった!私は引きつった顔で提案者の鳥海さんを見た。

今日は私の好きな鈴村さんの家で飲み会。かなりの大人数でお邪魔している。もうカレンダーは9月になっているのに怖い話とか季節外れもいいとこだ。





「もう夏は終わったので止めましょう!」

「何言ってんの、怖い話に季節はないよ」

「稲川淳二は夏以外は話ませんよ!」

「いや、お前さ…」




みんな心底呆れた顔をする。ムリムリムリ。私は怖い話が死ぬほど苦手だ。もう嫌だ、勘弁してくれ。とゆうより帰っていいですか?




「じゃぁ満場一致で決定ね!」

「って話聞いてましたっ?」




そんな私を完全にスルーした鳥海さんはテレビを付けてDVDをセットする。いやぁぁぁ!もう無理だ!耳を塞いで下を向いた瞬間パチっという音とともに暗くなった視界。




「ぎゃあ!ななな何っ?!」

「あ、ごめん。こっちのが雰囲気でる思て」

「いらないそんな気遣いぃ!」




どうやら暗くなったのは電気を消したかららしい。そして消したのはつまみを取りに席を立った鈴村さん。もうやめてー!




「鳥ちゃん続けてや」

「じゃぁ再生っと」




つまみを机に置き、私の隣に腰を下ろした鈴村さんは何事もなかったかのようにビールを飲んでいるようだ。完全に終わった。暗いせいで怖いシーンとかテレビの明るさで分かってしまうじゃないですか。ああもう!仕方ないので何か抱えられる物をとキョロキョロしてみたが真っ暗で何も見えない。こうなったら手探りだ!と思い切ってバッと手を出せば何か温かい物に触れた。




「うひゃあ!」

「何?まだ怖くないでしょ」

「すすすすみません!」

「びっくりしたなぁ」




私が謝ると周りのみんなはビデオに集中した。あぁ、本当にすみません……とゆうより今のは何だ。怖いけどもう一度同じ場所に手を出せばグイッと手を掴まれた。




「っ!」

『静かにしいやなまえ』




叫びそうになった瞬間耳元で囁かれどうにか耐えた。声からすると私の手を掴んだのは鈴村さんらしい。心臓に悪すぎる。しかも掴んだ手はまだ握られている。




『す、鈴村さん!』

『何や』

『手、手が手が!』

『なんやそれ怖いわ』

『だって鈴村さんが手を!』

『……怖いんやろ?』




こそこそ話しているのに更に小さい声で言うもんだから聞き逃す所だった。




『だからこうしたる』

『鈴、村さん?』

『何やねん』

『もしや鈴村さんも怖い?』

『ちゃうわボケ!』

『あ、すみません』




少し鈴村さんの声が変わって慌てて謝る。でもなんか嬉しい。私が怖いのを気にしてくれたんだ。




『鈴村さん』

『今度は何や』

『もう少し近寄っても良いですか?』




そう言ったら鈴村さんがこっちを見た。テレビで照らされた顔は少し赤い気がする。




『良いですか?』

『か、勝手にしいや』





そう言われたのでそっと近付く。手はまだ繋いだままさっきよりも近い距離。変わらずDVDは怖いけどこれもまた悪くない。思わずクスっと笑ってから鈴村さんに聞こえるように小さく囁いた。





暗闇でアイラブユー
(吊り橋効果ではありません)


(お、俺もなまえがす…)
(ぎゃぁぁ!)
(………)


20100912
(Happy birthday!鈴村さん)
1997