なんとベタな展開だろうか。
スタジオの人気のない一番端の廊下。窓からは夕日が差し込み、意味ありげな男女の影が延びる。


これはまさか『告白』というやつじゃないのかな?









「返事は別にいつでも良いから」

「あ、うん、はい」

「じゃあ、俺行くわ…」

「うん、じゃあ」






軽く手を振って去って行った影に私はただ呆然と立ち尽くす。…マジでか。



急に呼び出されたと思ったらこれだった。こんな時に冷静に「告白された」としか思えない私は本当に嫌な女だ。しかし私にとっての彼は薄い接点であり、ただの仕事仲間としか言いようがない。まさか私をそういう目で見ていたことに驚きを感じる。私の何が良いんだろ。



ぼんやりとそんなことを考えながら窓の外を見つめればバタンと何かが倒れる音がして私は思わず振り返った。







「………」

「あ、いや、あの…」

「……すず、どんくさぁ」

「うっさいわボケ!」







何とまぁ振り向いた私の視線の先に居たのは鈴村健一ことすず。何やってんの?と聞きたい所だが目の前のトイレから出て来たんだからそういうことだろう。しかしゴミ箱をひっくり返すとは実にまぬけだ。






「いや、これはあれやっ!」

「どれやボケぇ」

「せやからー…」







おどおどと目を泳がせながら慌ててゴミ箱を正すすずに私は近づいて一緒にゴミを拾う。







「すず」

「、!な、なんや!」

「何そのリアクション引くぞ」

「引くなや!凹むぞ!」







冗談だよと言って最後のゴミをポイッとゴミ箱に投げ入れた。だだ呼んだだけなのに何をそこまでオーバーリアクションに…。まったく色々と世話の焼ける人だ。手についたゴミをはたきながらすずを見ればやはり落ち着きなく私をチラチラと見ている。だから何だよ。







「チラ見はよせよ鈴村くん」

「、!見てへんわ!」

「嘘はよせよ鈴村くん」

「………」

「どうかしたの?」







やっとキレイになった手に満足してすずを見れば私の質問に戸惑いつつはっきりしない口調で喋り出した。







「その…わざとやない」

「はい?何が?」

「何がってさっきの」

「……あぁ、告白か」

「見るつもりも聞くつもりもなくてやな、そのー…」

「いいよ別に」

「え?」

「つまり偶然ってことでしょ?」

「…お、おう」







申し訳なさそうに頷いたすずに小さく笑いかければ怒ってないと少し安心したのかすずも小さく笑う。







「でも何で私なのかね?」

「はぁ?」

「私のどこが良いんだろ?」

「…知らんけど優しいとかやないか?」

「うーん…私優しいかな?」

「そんなら気が利くとか明るいとか可愛いとかやないか?」

「………」

「な、なんで黙んねん」

「い、いや別に…」







聞いたはいいけどなんだか照れた。まさかそんなに真面目に答えてくれるとは思ってなかったしましてや可愛いとかそんな言葉をすずから聞けるとは思わなかった。これはなんか顔が熱い気がする。ここはいつものように冗談言ってごまかそう。うん、そうしよう。







「そんな可愛いとか言ってすずってアホ?」

「な、なんでアホやねん!」

「お世辞言たってなんもないよ?」

「いらんわそんなもん」

「それとももしかして私んこと好きかっ?」







あははと少しからかうようにに笑って言えば私の想像とは裏腹にすずの顔がほんのり色付いた。あ、あれ?私としては「自意識過剰や」ぐらいの突っ込みを受けるだろうと身構えていたもんだからすずのその表情に次に言う言葉がなくなってしまった。







「どうしたのすず?ぐ、具合悪いの?」

「何でやねん」

「いや、突っ込みがないから…」







おずおずとそう言ってみればすずは呆れたようにため息を吐き、そして真っ直ぐ。私を射抜くように見つめてきた。お、おかしいな。なんだか鼓動がやけに早い。







「…お前な、知らんぞ」

「な、何がですか…?」

「言いたくないけどな聞かれたからには答えたる」

「え、え?」




「俺はあいつよりもなまえが好きや」







ドキドキよ
こ ん に ち は
(こんなに心臓がうるさいのは)
(君のせいとしか言いようがない)

20110409
1997