スタジオから出ればそれはそれは地獄のように熱くてもうどうにでもなってしまえとやっきになる。






「暑い…」

「暑いね」






スタジオの出口でボソッと言った言葉に返ってきた返事。びっくりして振り返れば今まで一緒に収録していたヤスだった。






「何、移動?」

「そー」






短く答えたヤスにチャンスだと昼食に誘う。奢ってもらうか割り勘なんてそんな浅はかな考えをしたのがいけなかった。






「この辺なんもない」






しばらくして思ったこと。なんだここ。ファミレスはないのかファミレスは。だんだんと空腹感増し始め、ため息と共に私はジトっとヤスを見た。






「何その目?」

「なんか食べ物よこせ、の目」

「何その動物的行動」






まったくとため息を吐いたヤスはカバンをあさり始める。流石だよヤス!君なら持ってると思ってた!と思ったのもつかの間






「はい」

「何これ」

「水」
「で?」

「飲めば満たされるでしょ?」

「はぁっ?」





思いっきり嫌そうな声が出た。期待した私はなんだったんだ。なんだか殴りたい衝動に駆られながらだいたいそれ間接キスってやつになるじゃんなんてくだらない事も考える。






「いらないの?」

「い、いらんわ!」






間接キスになるって気付いて欲しい。なんだか1人だけ恥ずかしくなる。「そー」とまた短く返事をしたヤスはもう一度カバンをあさって何かを取り出した。






「じゃあこれあげる」

「何?」






はいと渡されたのは市販のお菓子。だったのだがパッケージを見ればチョコレート。この暑い時期にチョコレートだとっ?






「真夏日にチョコ持ってるってアホじゃん」

「いいから食べなよなまえ」






えーとか言いながら恐る恐る封を開ければチョコレートの甘い香りとドロリとした感触が手をつたう。






「うっわ!」

「あちゃー」






気持ち悪い感触に可愛げのない声を上げた私をヤスは哀れんだ目でみる。






「なんだその目は」

「もっと可愛げな声だせ、の目」

「何そのバカにしたような行動!」
「まったく仕方ないなー」






そう言って呆れた顔したヤスだが何言ってんの。あなたの所為だよ保村真。これは開け方でどうにかなるという物じゃない。バカヤロウ。そんな暴言でも吐いてやろうと思ったら





「ほらなまえ、手貸してごらん」


「ちょ、!」







そう言って握られた手は余計に暑い。







ホットチョコレート
(ダメだ、心も溶けたかも…)

20100807

1997