彼女という立場でよっちんの家に来たのは今日が初めてだ。うわお、なんか緊張。




「おじゃまします」

「どーぞ」




パチンパチンと部屋の電気を点けたよっちんは「適当に座ってて」と台所へ飲み物を取りに行き、私は何も変わってない部屋を見つつローテーブルの前に座る。




「はい」

「どーもどーも」




缶ビールを渡したよっちんは私の正面に座って「お疲れ」と軽くビールを持ち上げて一口飲む。これもいつもと変わらないお決まりの光景。




「仕事の後のビールは格別だね」

「そーだなー」




あははっと笑えばよっちんもにっこりと笑いそこからしばらくの沈黙。なんだか付き合ってからの沈黙はまずい気がして「あのー」と口を開こうとすれば先に口を開いたのはよっちん。




「なんか前と変わらないな」

「うん。私も思った」

「どうするよ?」




同じ事を考えていたのも驚きだけど、どうするってどうしよう。付き合うってなんだとかいい歳こいて考えてみたりして。お互い幸か不幸か鑑賞しない性格だから毎日メールは無理だし元々仲が良かったから今更何をするべきか。




「付き合うとはなんぞかね、よっちん」

「んー…デートするとか?」

「お、良いね!デートだよ。デートしようよっちん」

「いや、良いけど…」




何だか府に落ちていないよっちんを見てなんか分かった気がする。つまりは今までも2人で出掛けてたなと。




「今までもデートしてたってことか」

「だろ?」




うーんとまた振り出しに戻る。何だかんだ2人きりって多かったんだと今更ながら思ったりして。今考えれば恥ずかしい。開けたばかりのビールを少し飲んでチラッとよっちんを見ればバチリと目が合った。




「距離、だ」

「距離、ですか?」

「うん、距離」

「距離って家の距離?」

「いやそういう距離じゃなくて」




とよっちんは首を横に振って私達の間を指差した。確かに私達の距離は机を隔てた向こう側。2人きりなのにこれは空きすぎかもしれない。




「なるほどね」

「なんか離れてるよなこれ…」

「うん、そんな気がする」




飲みかけの缶ビールを持って私は立ち上がりよっちんの隣にすとんと腰を下ろせばすんなりと落ち着いて




「なんか良い感じだね」

「お、おう」




少し顔を赤らめるよっちんに思わず笑って私は背中から軽く寄りかかる。今までこんなに近づいたことなかったからなんだかドキドキする。そう思った瞬間、なんか分かった。変わってないって思ったけど私の変わったとても大切なこと。









「前よりよっちんを好きになったって変わりがあるよ」








それは単純な変化ででも1番大きな変化。ちょっと恥ずかしいからあははっと笑えばよっちんの背中が少し揺れた。





「お、俺も前以上になまえが好きだ」





なんか幸せだ。そうやってボソッと不器用に言うんもんだから思わず笑ってしまう。




「ねー顔見ていい?」

「恥ずかしいからダメ」

「奇遇だ私も恥ずかしい」






今はまだ
これくらい
(今はこれくらいの距離で)


(背中から伝わる鼓動を)
(もう少しだけ感じよう。)


(やっぱりデート行こうよ、よっちん)

20101010
1997