私を見下ろした男の瞳は真っ黒で、どこを探しても青色がなかった。世界が真っ暗で、私だけ取り残されてしまったような気持ちになって、ぎゅっと目を閉じる。それを恥じていると思った男は、私の頬に触れて恐れることはないと熱の籠った声で言うのだった。ああ、気持ち悪い。今すぐこの場から立ち去って、イライの元へ帰りたい。冷えた体を温めなおすには、この男ではだいぶ役不足であった。
イライの見世物は、未来予知だと言う。九割は当たると教えてくれたから私も一度占ってもらったことがある。今日はたくさんお金が入るだろうと予言し、その通りになった。彼の予知能力は本物だ。
対して私の見世物は、ストリップショーである。…と、言う名だが、実のところセックスである。ショーの最中、金持ちそうな男を選んで裏部屋に連れて行くのがボーイの役目。その後を私や他の女の子が引き継ぐ。特殊な特技のない女の子がここに売られると、たいていはこうなるのだ。客が帰っていくと仕事は終わり。部屋に戻ると、避妊薬と水の入ったコップが届けられている。飲むも飲まないも自由だけれど、こんなところでこんな仕事をする私たちにはうれしい差し入れだった。
イライはこれを、未来予知で知った。けれど、蔑まなかった。生きていくのに必死なのは私も一緒だと言って、私を抱きしめたのである。こんなこと初めてだった。私がこうやって生きていることを知ると、たいていは軽蔑して、かわいそうな女だと笑った。対等に見てくれたのは彼が初めてだったのだ。

逃げるように部屋に戻ってくる。イライが迎えてくれる。青がそこにはあった。今日は泣き出してしまった。どうしたの、とは聞かれなかった。私が泣いた時は、私が客とセックスをして寂しい思いをしたことを彼は知っているのだった。
薬とコップ。私が手に取る前に彼が奪い去って、また昨日と同じように口移しで飲ませてくれる。
「今日はゆっくりおやすみ、アニータ」
「いつまでここにいてくれる?」
「いつまででも。出て行けと言われても出て行かないかな」
「着替えの時困るわ」
「散々見てるのに?」
「それとこれとは話が別」
ああ、幸せ。一生ここにいたい。優しいこの人と一緒に、いつまでもここで微睡んでいたい。あんな暗いところには二度と行きなくない。もう二度と、青色を求めて探したくない。ずっとそばで見ていたいのだ。