バレンタイン -2019-
2月14日、バレンタイン。周りの女の子は皆好きな人にチョコをあげるって数日前から盛り上がっている。なんなら2月に入った瞬間からバレンタイン一色だった。町も人もバレンタイン、節分なんてなかったかのようにみんな浮かれてる。可哀想な節分、私はちゃんと豆まきしたもんね
みんな買いに行ったり作ったりと忙しそうにしていて、勿論当日だって友チョコの交換だのあの人に渡しに行くだの貰っただの告白しただのされただの、まぁ楽しそうで、私はというと一言で「鬱」なんですが。彼氏持ちにとってこのイベントは地獄だと思うんですが世の彼氏持ちの皆さんどうですか?
あーーー、雷門中行きたくな〜〜〜〜〜〜い!
実際にはしないけど頭の中の私は大の字で寝転がってるし、なんならこたつに入りながらお茶とか飲んでる、うちにこたつないけど
人生最大に行きたくない。毎年バレンタインは嫌だけど今年は100年に1度の行きたくなさ、近年にない凄まじい行きたくなさ、なんたって今までならあった蘭丸くんに渡す為のチョコが今年はないんだから。もうほんと行きたくない、単純に私がやらかしたのが悪いんですけど
通販で頼むつもりで品物も決めていたのに気付いたら11日になっていた。焦って9時までなら間に合うと記載されていた物を買ったけど時間にして14時、手続き完了後に気付く、9時って、9時?いや、まだいける、21時ワンチャンある。の精神で今日まで過ごしてきたけど、当たり前にワンチャンなかった。学校終わって一回速攻帰って確認したけど何もなかった、なんか成人式の着物やつしか入ってなかった、こちとら高校最後のバレンタインに必死なんだよ!!!
というわけで蘭丸くんにチョコを渡す為でもなくただ蘭丸くんが大量のチョコを持ち帰る様子を見る為に行くようなもんで、何が楽しいのそれ?誰が楽しいのそれ?なんていいながらもちゃんと行く私は偉い。行くよ、チョコを抱える蘭丸くんを見てくるよ
「こんにちは!!蘭丸くんどこですか!!」
校門をくぐってすぐに大量のチョコレートを抱えたしんさまを見つけて声をかける。にしてもここまで貰っていると見つけやすくていい、人だかりもなく声がかけやすいのもかなりいいと思う。遠巻きに様子を見ている人は沢山いるけど、蘭丸くんもこんな感じなのかな、ため息
「珍しく遅かったですね。今貰った物を取りに教室へ行っていますけど、そろそろ戻ってくると思いますよ」
「ふーん、今年も大変だね」
「まぁ、来月の事を考えると」
「やめたらいいのに、適当でいいんだよ?」
「そうもいかないですよ」
しんさまは真面目だからそれぞれの好みに合わせてお返しを送ってる、らしい。そりゃあそんな事してたら年々数が増えていくに決まってるのに。蘭丸くんですらもう少し気楽に考えたらどうだ?とか言ってるのにやっぱり変わらない。一度だけ、私があげたら何をくれるんだろうと蘭丸くんの前で呟いて、絶対にやめろと言われたことがある、解せない。来年義理チョコとか渡してやろうかな
「あ、来ましたよ」
指を刺された方向に目を向けるといっぱいにチョコを抱えた蘭丸くんがいた。学ランを広げて乗せて運んでいるけど、めちゃくちゃ落としそう、あ、落とした。拾おうとしてぶちまける未来しか見えないもんだから、慌ててしんさまにお礼を言って拾いに向かってしまった。どこの馬の骨かもわからない人のチョコなのに
「お、ありがと」
「ありがとじゃないよ!何してんの?」
「袋はあずみが持ってくるだろ?」
いや、持ってきたけど、そうだけど、今の蘭丸くんの姿めちゃくちゃ愉快だ
「……何してるんだ」
「なんか面白いから写真撮ってる」
「その前に袋をくれ」
「やだ」
「このままでいるとまた積まれるから困るんだよ」
「え?」
「来るまでに何個か追加で置かれた」
なんだその不届きものは、蘭丸くんが無抵抗なことを良い事に!そんなことして私みたいなやつが何をするかわからないからな
近くに見知らぬ制服の私がいるからか新たに置く人間も現れず、早くしろと目で訴えてくる蘭丸くんを横目にドヤ顔で持って来ていた袋を取り出す、今年は我ながら適切な袋を持ってこれたと思う。なのにすぐさま「うわ」と声に出す蘭丸くん。
「入れなよ」
「お前な……。」
「袋欲しいんでしょ?」
めちゃくちゃ嫌そうな顔で入れていく蘭丸くん。確かにその袋は真っ赤だから目立つし嫌な気持ちもわかる。でもちゃんとワンポイントに白い達筆の文字があるしこれ以上ないほどぴったりだと思う。天才!よっ!気の利く彼女!出来る女!袋に吸い込まれるチョコを見て遠巻きに微妙な空気が流れているのは知らんふり
「今年はそれどうするの」
「別に、いつも通りだけど」
私と付き合う前にどうしていたかは知らないけれど、蘭丸くんは知り合いというか友人にしかお返しをしない。つまり報われるのはたった数個。いや、報われるというなら0かもしれない。食べるのは既製品か友人からの物を気まぐれにらしい。他はどうするのか聞いたら曖昧な返事が返ってきたもんだから最終的に私が貰っている
大量のチョコの中で一番困るのは名前がない物、名前があれば人の判断が出来るから分けやすい。男からのチョコはどんな物であろうと蘭丸くんの手に渡したくないし、既製品でも本命臭い物は食べて欲しくない
いっそ受け取るときにフローチャートとか提示して先に分類しといて欲しい
貴方の性別は 女/男
蘭丸くんの知り合いですか はい/いいえ
手作りですか はい/いいえ
本命ですか はい/いいえ
めちゃくちゃ便利だと思う、作ろうかな
「で、あずみはくれないのか?」
なんとなく話ながら、時おり他人に遮られながら帰ってたら遂に聞かれた。まぁそうだよね、毎年渡してるもんね
「わけあって今手元にないので」
「ふーん」
めちゃめちゃ疑われている。日頃の行いが悪すぎてめちゃくちゃ何かを疑われている。でも私は知らない、敢えて無視するよ、渡したくてもないんだから仕方ない、嘘ついてないし。疑いの目を必死で避けながらいつも通りに分かれて、帰って、即出かける。早く買わなきゃやばい
さて神様、何で私はケーキ屋にいるんでしょう
ケーキ屋に入ったからだよ。急いでデパートに出かけたはいいけど、あまりの人にビビり散らかして碌に見ていられなかった、当日の夕方過ぎなのに。怖すぎて目についたピンクのを買ったらお酒入りだった。気付いたのが家に帰ってからで、自転車片道30分かけてもう一度あそこへ行く元気も時間もわたしにはなかった
というわけで冒頭に戻る。コンビニやスーパーは絶対嫌なのでケーキ屋にやってきたけど、ここまでくるともう神様にお前はバレンタインするなと言われてるとしか思えなくなってくる。不安になりながらもショーケースを眺めると、チョコケーキもいくつか残ってて、目に留まったケーキには丁度よく板チョコが乗っていた。ケーキじゃん!って突っ込まれてもこれチョコじゃん!って言える、あと可愛い、これにしよう
待ち合わせ場所に行くと既に蘭丸くんは到着していた。あの袋は、ない。回避成功。いつまでもそういう気持ちを忘れないのは大切である。いつそういう扱いを受けるかドキドキしてるんだよ、一応。行動は改めないけど
「早いね!そんなに楽しみだった!?」
「たまたまだ」
「え、悲しい、楽しみじゃないんだ」
「そうとは言ってないだろ」
「じゃあ楽しみだった??」
「…………。」
「はい、じゃあ蘭丸くんが楽しみで堪らなかった私からのチョコですどうぞ」
何か言いたげな目で受けとる蘭丸くん。その顔が私は大好き。どのみち私の本命、いやこれも本命だけれど文字通り本命のチョコは後日到着予定な訳で、私にとってのバレンタインはその日だから今日はこれでいい。当日にちゃんと蘭丸くんにチョコを渡して受け取ってもらえた事実さえあれば
「ありがとな」
「あーんしよっか」
「いや、それはいい」
否定早
2月15日、チョコが届いた。てっきりもう少し後かと思っていたら次の日に届いた、お店の人ありがとう。可哀想にと思われただろうしなんなら配達の人も荷物見ながら今日?みたいな顔してたけど、私のバレンタインは今日です
「蘭丸くん!!!!ハッピーバレンタイン!!!!!チョコだよ!チョコ!私からの本命チョコだよ!!嬉しい?嬉しい?嬉しいよね??嬉しくないの泣くよ!!嬉しいなら嬉しいって言ってよ!!!え?なに??ほんと!?やったーーーーー!!!!ていうかあれ、今年はチョコ少なめ?てか貰ってなくない!?!?うそ私が当日の一番もらっちゃった!?!?付き合ってからこんなの初めて!!記念日じゃん!!!結婚しよ!!!!!」
BACK