君と、

君は強がる時ほど悪態をつく。

「別にお前なんて居なくても寂しくもなんともねぇよ」
「……」

本音じゃないとわかってる。いつもの事だから、それが君の“ 癖 ”だから。
だけど、今日は君の言葉を笑って流せて、理解ある彼女を“ 出来ない(演じれない) ”

「わかった、」
「は、」
「いいよ。わかった、もう会いに来ない」
「おい!」

いつもなら大好きな声なのに、「おい」でも「なぁ」でも呼び掛けられれば振り向いた。君に呼ばれるのが好きだから。だけど今日は呼び止める声に答えれる余裕もなくて背中を向けて部屋を出た。初めて君の声を無視した。


きっかけなんてささやかな事。
問題起こして休学とまではならなかったけど、騒動を聞いた私は四季に説教紛いな事をしてしまった。幼馴染で彼女という立場が私を調子に乗らせたのかもしれない。

あまり問題ばかり起こしてたら退学になるかもしれない。
一緒にいれなくなる。
一緒に卒業したいよ。などという自分勝手な旨を押し付けた。もちろん四季は一つ一つに反発して、どんどんお互い引くに引けなくて口論とまでは行かなくても雰囲気は悪くなって、最終的に冒頭で吐かれた四季の言葉。

正直グサッと来て何かが砕けた。
別に四季だけのせいにしたい訳じゃない。私が悪いのもわかってる。四季も機嫌が悪くて、そこに私の説教だったから四季にも余裕なかったのかもしれない。

とぼとほと日が暮れ暗くなり始めた道を当てもなく歩く。後悔は押し寄せるばかりで四季に悪いことしたな、私が悪かったなと思う反面、四季も四季だよ。なんで私の心配わかってくれないの。と怒りが湧き起こる。

「はぁ、別れるのかなこのまま」

星がちらほらと散らばり始めた空を見つめ、自然と吐きでた言葉にぐっと胸が苦しくなる。
ずっと好きだった、やっと両思いになれて結ばれたのに、

「嫌だ、、別れたくないよ、」

ぽろぽろ溢れる涙を拭い、来るかもしれない未来に怯えた心はすんなりと本音を零した。
そうだよ、別れたくないに決まってる。会いに行かないなんて無理だよ…

四季のせいで春の花見、友達を誘えなくなった。私の上手くも下手でもない普通の料理をうめぇと言いながら満面の笑顔で食べるから。それが嬉しくて。

四季のせいで夏の海、いけなくなった。四季に見せたくて少し勇気をだして着た大胆な水着もすぐに四季の着てたパーカーを私に被せて真っ赤な顔で「次からは着るな。俺の前だけにしろ」なんて言われたら。君の私への思いを感じられて。

四季のせいで、秋の寂しさを一人で超えられなくなった。昔から両親より側にいた温もりが、少しでも人恋しく感じたらすぐに気づいて「ほら来いよ」と手招きして寄り添い寝るベッドの中が唯一の安心できる場所になったから。寂しいなんて感じずよく眠れて。

四季のせいで、冬の寒さをたえられなくなった。ただでさえ冷え性で手袋してても寒くて悴むのに、「手貸せ。うわ、氷かよ」と笑いながらそっと手を繋いでポケットの中に入れてくれるから。すぐ温まる手を離したくなくて。

私が過ごすどの季節にも必ず君がいてそれが当たり前になって。
思い返すたびに胸が温まる思い出しかなくて、何度君の優しさに救われたんだろ。

「四季、」

お願いだから、











「なんだよ」

私から離れて行かないで。


「!」

聞き慣れた、耳馴染みのいい安心する声が聞こえ振り向くよりも早く、ぎゅっと温かい何かが私の身体を包んだ。四季だ。

「はぁ、やっと見つけた、」
「四季?」
「お前な!女が一人出歩くな!なんかあったらどうすん、」
「なんで?」
「は?」
「なんで来たの、そんなに、」

汗だくになって。
耳元を掠める吐息は少し湿って乱れていて。身体の熱もまるで風邪を引いて高熱が出ている時のように熱くて。

「そんなの」

お前が心配だからに決まってんだろ。

「っ、」

迷いなく返された言葉につんと鼻の奥が痛み、目の奥が熱くなる。

「しきぃ〜!」
「うお、泣くなって」

涙が堪えられるうちに腕の中で身を返して、向き合えばぎゅっと抱きついて汗だくだろうと構わず胸元に顔を埋める。

「ちょ、離れろ!俺今走って汗臭いから」
「いい、」
「いや、よくはねぇだろ」
「四季の匂いならなんでもいい、好きなの」
「っ、そうかよ」

私の言葉に照れ臭そうに返したあと、ぎゅっと肩と腰に回る腕にさらに引き寄せられ隙間なく身体が密着する。

「わるかった、」
「私もごめんね…」
「いいよ。お前がまだ俺のそばに居てくれんなら」

きっと四季も後悔して怖かったのかもしれない。
弱く弱く囁かれた言葉が君の心情を語ってるようで。

「四季がいいならずっと側にいたい」
「ふ。バーカー。ならジジイになったオヤジの面倒も二人で見るハメになんぞ?」
「ふふ、それもいいかもね。おじさんにはお世話になってるから」

二人で手を繋いで帰る道は一人で歩いていた時とは違い寂しくも心細くもなかった。

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