紫煙のそば


流されやすい女の子を利用する


死んだらどうなるんだろ。
苦しいのは続くのかな。
辛いのは続くのかな。
何も感じないのかな。
それとも・・・━━━━



━━━━・・・幸せになれるのかな。


「それで?どうだった?」
「………」

目の前で笑ってるのに笑ってない、作られたのような、まるで生まれた時から“ そうであるよう ”な表情で私を見つめ問いかける彼は私の“ 家族 ”で、私を“ 家族 ”にしてくれた人。
やる事もなく新しい“ 家 ”となった場所で一人、ソファーに寝転びながらぼんやりとまだ見慣れない天井眺めていたら扉が開いた。

“ 家族 ”の誰かだろうと視線だけを寄越せばそこには黄泉さんの姿が。慌てて身体をお越し挨拶をしようと口を開けば、「いいよ、そのままで」と手で制されお言葉に甘え寝転んだ体制のまま黄泉さんに顔を向ける。
彼は『いつもの』表情で私の腰辺りの空いたスペースに腰を落ち着かせ、上から私を見下ろす。

最初は他愛ない世間話が少しずつ方向を変え死ぬ前の話になったから、ちょっとだけ…特に何もなかったけどおセンチになった気持ちを吐露したくて死んだらどうなるかをについて話した。
それについて返された言葉に自分で問い掛けておきながら少し黙ってしまった。

だって死んで蘇った今もこうしておセンチになって、苦しくなって、辛くなって、悲しくなる。生きていた頃と変わらない。幸せになれるのか、その問いについても何とも言えない。

「わからない、」
「そう。」
「わからない、から…どうしようもなく不安になるの」

これじゃ生きてる時と変わらない。ただ居場所が変わっただけ、“ 家族 ”が変わっただけ、それ以外はほぼ一緒。

「黄泉さんには申し訳ないけど、これだったら私…死んだままでいたらよかった、」

自然と目尻から伝う涙がこれ以上流れないよう、この人に見られないように瞼をそっと腕で覆い隠す。
それでも溢れ続ける涙は止まることを知らない。

あぁ、嫌だな……こんな弱いところも、死んだらなくなると思ったのに、

何も変わらない。変わらせてもらえない。生きてても死んでても私は━━

「#ナマエ#」
「、」

優しさと冷たさを持つ声に名前を呼ばれ、腕を少し退かして視線を下げる。黄泉さんは相変わらずのまま、だけどまるで彼のお気に入りの“ アルマ ”くんを思う時のような少し嬉しそうな目で私を覗き込んでいた。

「悲観するのはやめなさい」
「黄泉さん、」
「#ナマエ#はまだ禍になって時間が経っていないから人間の時の感情に流されているだけだよ。時間が経てばお前のその“ 感情 ”は少しずつ薄まる」
「……本当?」
「うん。だからもう少し頑張れる?」
「……、」

頑張れる?いつまで頑張ればいいんだろ
いつまで頑張れば黄泉さんの言うようにこの感情は薄まるのかな。

ぐるぐる回りだす思考に意識を沈めていれば、頬に触れる優しい細くて男らしい指は何度も頬を往復する。はっと意識を戻し、手の持ち主を見れば案外近い距離にいてあと少しどちらかが動けばおでことおでこがごっつんこするだろう。

「よみ、さ……」
「#ナマエ#はまだ弱くて脆いから、少し頑張ったら俺のところにおいで。そしたら今日みたいに話をしようか」
「!」

それはまるで母が小さい子に言い聞かせるようで。
それはまるで諭すような、逃げるなとやり遂げろと言う圧で。

自然と生唾を飲み込みゴクリと喉がなる。

「…わか、った、もう少し頑張るから、またお話聞いてね」

私の返事に満足したのか笑みを深めた黄泉さんは顔を近づけ、そして。

「期待している」

耳元で囁かれた毒は耳から脳、心へと瞬く間に全身に広がりぶるりと全身を震わせたと同時に首筋に柔らかいモノを押し付けられた

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