見慣れて歩き慣れた道を歩いていると目の前にはこれまた見知った背中と大好きな二色。
まだこちらに気付いていないようだ。少しの悪戯心と別の感情を乗せ叫ぶ。
「桜くーーん!」
「うおッ!?」
見知った背中━━桜君は遠目からでもわかるほど、身体をビクつかせ驚いた声を上げる。
いつ見てもその姿はまるで背後にきゅうりを置かれ振り向いた猫が驚いて跳ね上がるそれだ。申し訳ないけど可愛くて口元が自然と緩む。
きょろきょろと辺りを見渡して原因を探っている姿を傍観していればかち合う視線。あーもうバレちゃった。
少しの残念さは残るものの気づいてもらえた嬉しさには勝てず自分の単純さに呆れながらも彼の方へ向かう。
「こんにちは桜君!」
「お前、毎回毎回ガチでやめろ」
「ビックリするから?」
「は!?ち、ちげぇよ!!周りに迷惑だろうが!」
「今の桜君の声のほうが大きいと思う」
照れ隠しなのか驚いた事を誤魔化すことに必死な彼の声は普段の話す時とは違い興奮するせいかボリュームが上がる。それを指摘すればぐむむ、と悔しそうにだけど言い返す言葉が出ないのかギリギリと拳を作り堪えている。
あれ?
「桜君、そこ怪我してる」
「あ?」
よく見ると作られた拳には白い肌には不釣り合いな赤、血が薄く皮が捲れたであろうとそこから滲んでいた。
見るからに痛そうで、何故か胸がぎゅっと締め付けられる。
「ミョウジ?」
「ちょっとごめんね」
は?お、おい!なにして、慌てる声を無視し手当をしようと手に触れれば大袈裟にビクついた手は後ろへと引かれ距離が出来て、触れようとした私の手は空に浮かせたまま行き場を失う。
失敗したな。急すぎたかな、と押し寄せる後悔が顔に出てたのか桜君は小さな声で力なく“ わ、悪い ”と零した。
情けない。バカだ私、調子に乗って彼の事を考えず触れようとしたのは私なのに。彼(好きな人)に謝らせるなんて。
桜君に目線を向ければ右往左往させる視線は気まずそうで。桜君と優しく名前を呼びもう一つ大好きな二色のガラス玉をこちらに向けさせる。
「その傷痛そうだけど消毒した?」
「いや、まだだ。……こんなの舐めときゃ治るだろ」
「ダメだよ!ちゃんと消毒しなきゃ!私の傷なんてちゃんと消毒して徹底してるのにそれでもお風呂に染みて痛いんだか、」
「何したんだよ!」
「へ、」
女なんだからもうちょっと自分の身体大事にしろ。と叱る彼の目は真剣で。さっきまでの気まずさはなく狼狽えてしまう。
他意なんてなかった。笑い話のつもりで、世間話の一つのつもりで話して見せただけなのに。こんなに真剣に叱られるなんて思わなくて………。
あーもう君は本当に。
「おい、聞いてんのか」
「ご、ごめん。聞いてなかった」
「はぁ……たく。ちゃんと聞いてろ」
「あいた、」
正直に答えれば呆れながらピンと弾かれたおでこに痛さなんてないけど、わざと痛そうな素振りを見せれば大袈裟なやつと少し控えめに笑うから今度は違う意味でぎゅっと胸が締め付けられた。
「で、なんで怪我したんだよ」
「……体育」
「体育?」
「グラウンドで体育してたら試合形式になって、その恥ずかしい話…張り切り過ぎたと言いますか、あはは……」
体育はグラウンドも体育館も嫌いで苦手だ。とくに試合形式のスポーツは。運動神経は悪くはないけどよくもなくて、だけどその場のノリなのか雰囲気なのか本気で思ってなくても言われる「頑張れ」「期待してるよ!」「ナマエちゃんなら出来る」数々のクラスメイトの女子の声。
期待しないでと零す愚痴は外には吐けずそっとお腹の底へ飲み込んで。「頑張るね!」なんて嘘で塗り固められた思ってもない返答に周りは少し盛り上がり、早く終われと少し雑に大げさに行われたパフォーマンスは足が絡まり膝に怪我を作るという結末に終わった。それもかなり酷い擦り傷を。
そんな話は桜君には聞かせたくなくて、気づかれたくなくて悟られないように“ ありきたり ”な返事を返す。
「………」
「………」
真意を探るようにこちらを見据えるガラス玉に気まずくて、顔が引き攣りそうになるも笑顔を作り続ければ桜君も何かを察したのか、はぁ、とまた一つため息吐いて背を向ける。
「別に張り切るなとは言わねぇ、けど……お前が怪我したら意味ねぇだろ」
「さくらくん、」
「つ、次から気をつけろよ」
恥ずかしくなったのか少し上ずる声に、頬に熱が集まるより嬉しさが勝り顔全体でにやけてしまう。
「優しい!ありがとう桜君!大好き!」
「す、……っ〜〜〜い、いつも言ってんだろ!お、女が簡単にす、すすす…すき…とか言ってんじゃねぇ!!帰る!!」
「え、ちょっと桜君!?」
溢れた思いを我慢出来ず伝えれば蛸のように顔や首、耳まで赤くなり、ドスドスと足音が聞こえてきそうなほどの勢いで歩き出す桜君の名前を呼ぶも立ち止まらず行ってしまった。
後日。校門から出て家への方向へ歩こうとすれば壁に寄りかかる桜君の姿。
思わず驚いて大きな声で名前を呼んでしまったら怒られたけど。
「ど、どうしたの。誰かに会いに?」
この学校に知り合いが?でも彼は風鈴だからいつどこで誰と知り合ったって変な事じゃない。女の子を助ける事だって、男の子を助ける事だって普通にあるだろう。
女の子……。まだ決まったわけではないのにちくり、と胸が勝手に痛む。
嫌だな、女の子なら………。
もんもんと溢れだす黒い靄や思考に意識を飛ばしていれば、名前を呼ばれ何かを胸辺りに突き出された。
「え、」
「やる。」
「…………」
「いいからさっさと受け取れ!」
「わ、」
ガサ、と大きな音を立てた袋をさらに突き出され慌てて両手で受け取れば少しだけ重みがありますます意味がわからず首を傾げながら中を覗き込めば。
「!!これ、」
「……学校行く時もちゃんと持ってろ」
中には傷に優しいや、傷の治りが早くなる、染みないなどと表示された絆創膏が大量に入っていて、ポツリとそれらに混ざって染みないと書かれた消毒液が入っていた。
「…………」
「傷、痛ぇつってただろ、昨日。それならまだ痛み減ると思うから、お前にやる。か、勘違いすんなよ!べ、別にお前を思ってとかじゃねぇからな!痛いのはないにこしたことねぇと思って買っただけだ!」
「〜〜〜っ、」
ぎゃんぎゃんと吠えながら必死な言い訳をしているが気にしてられない。
この溢れる思いをどうしよう。どうしたらいいのだろう。言葉にするにもうまく言葉に出来なくて、胸がいっぱいで苦しいくらい幸せだ。
抱え込むように大切に大切に抱きしめた。たとえ絆創膏でも消毒液でも君からの贈り物は全部大切な宝物に変わる。
はぁ、やっぱりどうしようもなく君が好きだ。
まだこちらに気付いていないようだ。少しの悪戯心と別の感情を乗せ叫ぶ。
「桜くーーん!」
「うおッ!?」
見知った背中━━桜君は遠目からでもわかるほど、身体をビクつかせ驚いた声を上げる。
いつ見てもその姿はまるで背後にきゅうりを置かれ振り向いた猫が驚いて跳ね上がるそれだ。申し訳ないけど可愛くて口元が自然と緩む。
きょろきょろと辺りを見渡して原因を探っている姿を傍観していればかち合う視線。あーもうバレちゃった。
少しの残念さは残るものの気づいてもらえた嬉しさには勝てず自分の単純さに呆れながらも彼の方へ向かう。
「こんにちは桜君!」
「お前、毎回毎回ガチでやめろ」
「ビックリするから?」
「は!?ち、ちげぇよ!!周りに迷惑だろうが!」
「今の桜君の声のほうが大きいと思う」
照れ隠しなのか驚いた事を誤魔化すことに必死な彼の声は普段の話す時とは違い興奮するせいかボリュームが上がる。それを指摘すればぐむむ、と悔しそうにだけど言い返す言葉が出ないのかギリギリと拳を作り堪えている。
あれ?
「桜君、そこ怪我してる」
「あ?」
よく見ると作られた拳には白い肌には不釣り合いな赤、血が薄く皮が捲れたであろうとそこから滲んでいた。
見るからに痛そうで、何故か胸がぎゅっと締め付けられる。
「ミョウジ?」
「ちょっとごめんね」
は?お、おい!なにして、慌てる声を無視し手当をしようと手に触れれば大袈裟にビクついた手は後ろへと引かれ距離が出来て、触れようとした私の手は空に浮かせたまま行き場を失う。
失敗したな。急すぎたかな、と押し寄せる後悔が顔に出てたのか桜君は小さな声で力なく“ わ、悪い ”と零した。
情けない。バカだ私、調子に乗って彼の事を考えず触れようとしたのは私なのに。彼(好きな人)に謝らせるなんて。
桜君に目線を向ければ右往左往させる視線は気まずそうで。桜君と優しく名前を呼びもう一つ大好きな二色のガラス玉をこちらに向けさせる。
「その傷痛そうだけど消毒した?」
「いや、まだだ。……こんなの舐めときゃ治るだろ」
「ダメだよ!ちゃんと消毒しなきゃ!私の傷なんてちゃんと消毒して徹底してるのにそれでもお風呂に染みて痛いんだか、」
「何したんだよ!」
「へ、」
女なんだからもうちょっと自分の身体大事にしろ。と叱る彼の目は真剣で。さっきまでの気まずさはなく狼狽えてしまう。
他意なんてなかった。笑い話のつもりで、世間話の一つのつもりで話して見せただけなのに。こんなに真剣に叱られるなんて思わなくて………。
あーもう君は本当に。
「おい、聞いてんのか」
「ご、ごめん。聞いてなかった」
「はぁ……たく。ちゃんと聞いてろ」
「あいた、」
正直に答えれば呆れながらピンと弾かれたおでこに痛さなんてないけど、わざと痛そうな素振りを見せれば大袈裟なやつと少し控えめに笑うから今度は違う意味でぎゅっと胸が締め付けられた。
「で、なんで怪我したんだよ」
「……体育」
「体育?」
「グラウンドで体育してたら試合形式になって、その恥ずかしい話…張り切り過ぎたと言いますか、あはは……」
体育はグラウンドも体育館も嫌いで苦手だ。とくに試合形式のスポーツは。運動神経は悪くはないけどよくもなくて、だけどその場のノリなのか雰囲気なのか本気で思ってなくても言われる「頑張れ」「期待してるよ!」「ナマエちゃんなら出来る」数々のクラスメイトの女子の声。
期待しないでと零す愚痴は外には吐けずそっとお腹の底へ飲み込んで。「頑張るね!」なんて嘘で塗り固められた思ってもない返答に周りは少し盛り上がり、早く終われと少し雑に大げさに行われたパフォーマンスは足が絡まり膝に怪我を作るという結末に終わった。それもかなり酷い擦り傷を。
そんな話は桜君には聞かせたくなくて、気づかれたくなくて悟られないように“ ありきたり ”な返事を返す。
「………」
「………」
真意を探るようにこちらを見据えるガラス玉に気まずくて、顔が引き攣りそうになるも笑顔を作り続ければ桜君も何かを察したのか、はぁ、とまた一つため息吐いて背を向ける。
「別に張り切るなとは言わねぇ、けど……お前が怪我したら意味ねぇだろ」
「さくらくん、」
「つ、次から気をつけろよ」
恥ずかしくなったのか少し上ずる声に、頬に熱が集まるより嬉しさが勝り顔全体でにやけてしまう。
「優しい!ありがとう桜君!大好き!」
「す、……っ〜〜〜い、いつも言ってんだろ!お、女が簡単にす、すすす…すき…とか言ってんじゃねぇ!!帰る!!」
「え、ちょっと桜君!?」
溢れた思いを我慢出来ず伝えれば蛸のように顔や首、耳まで赤くなり、ドスドスと足音が聞こえてきそうなほどの勢いで歩き出す桜君の名前を呼ぶも立ち止まらず行ってしまった。
後日。校門から出て家への方向へ歩こうとすれば壁に寄りかかる桜君の姿。
思わず驚いて大きな声で名前を呼んでしまったら怒られたけど。
「ど、どうしたの。誰かに会いに?」
この学校に知り合いが?でも彼は風鈴だからいつどこで誰と知り合ったって変な事じゃない。女の子を助ける事だって、男の子を助ける事だって普通にあるだろう。
女の子……。まだ決まったわけではないのにちくり、と胸が勝手に痛む。
嫌だな、女の子なら………。
もんもんと溢れだす黒い靄や思考に意識を飛ばしていれば、名前を呼ばれ何かを胸辺りに突き出された。
「え、」
「やる。」
「…………」
「いいからさっさと受け取れ!」
「わ、」
ガサ、と大きな音を立てた袋をさらに突き出され慌てて両手で受け取れば少しだけ重みがありますます意味がわからず首を傾げながら中を覗き込めば。
「!!これ、」
「……学校行く時もちゃんと持ってろ」
中には傷に優しいや、傷の治りが早くなる、染みないなどと表示された絆創膏が大量に入っていて、ポツリとそれらに混ざって染みないと書かれた消毒液が入っていた。
「…………」
「傷、痛ぇつってただろ、昨日。それならまだ痛み減ると思うから、お前にやる。か、勘違いすんなよ!べ、別にお前を思ってとかじゃねぇからな!痛いのはないにこしたことねぇと思って買っただけだ!」
「〜〜〜っ、」
ぎゃんぎゃんと吠えながら必死な言い訳をしているが気にしてられない。
この溢れる思いをどうしよう。どうしたらいいのだろう。言葉にするにもうまく言葉に出来なくて、胸がいっぱいで苦しいくらい幸せだ。
抱え込むように大切に大切に抱きしめた。たとえ絆創膏でも消毒液でも君からの贈り物は全部大切な宝物に変わる。
はぁ、やっぱりどうしようもなく君が好きだ。