なぜ彼女のような可憐な少女が戦場にいるのだろう。当初の僕はそんな大したこともない感情で彼女を見ているだけだった。
この出会いが、転機になるとも知らず。





Episode:01 encounter





「危ないよ。下がっていて」
「…誰?」
「僕は、あの弓兵隊の隊長…と言ったところかな。君はどうしてこんな辺境に?」
「私には構わないで」

彼女はそう言って僕に背を向けた。その声は思っていたよりもずっと透き通っており、真っ直ぐな印象を持った。また、僕に対して全く譲歩のない態度も気を引く要因の一つであった。

「ちょっと待って。君はレジスタンスの一員かい?」
「いいえ、そんなんじゃない」
「それなら何処から?エトルリアでもサカでも無いようだけど、まさかイリア?」
「……傭兵大国の、ね」

まるで母国を揶揄するかのような表情と声色で彼女は言った。それにイリアはティトの母国でもある。僕にとって悪いようなイメージが無かった分、彼女の発言に耳を疑わざるを得なかった。

「誰に雇われたんだ?アルカルド殿か?」
「命令は、賊の殲滅。私はそれを果たすのみ」
「リキア同盟軍の話は聞いた?」
「…あれには何もしない。私の請け負う命令外だから。でも、きっと貴方たちは騙されてると思うよ」

一寸の迷いなくそう答える彼女の言葉に、僕は疑念を持った。騙されている、とは一体どういうことなのだろう。
詳しく聞こうと思ったが、遠くで剣の合わさる音がかすかに聴こえた。それは戦いが始まったことを意味し、残念ながらそこまで悠長にしている時間は無さそうだった。

「君がアルカルド殿に雇われたのだとしたら、戦いが終わった後は僕と共に戻ってくれるかな?」
「…無事に終わったら、の話でいい?」
「ああ、もちろん」
「それなら構わないけど、精々死なないようにね」

名前も知らない彼女に、なぜそんなことを言ったのかはよく分からない。ただ同年代の彼女と地位も身分も何も考えずに話せることが、自分自身を安心させたのかもしれないと検討をつけた。

それからティトの隊に戦略を伝えるのに加え、彼女の姉妹の話を思い出してクラリーネのことをティトに知らせた。
もしも見付けた時は、どうか妹を守ってほしいという願いを乗せて。

「隊長!同盟軍が来ました!」
「分かった。配置に着いてくれ」

先ほどの彼女の姿を探したが、この辺りにはいないようだった。身なりを見ると恐らく僕と同じスナイパーだろう。さらにイリアの傭兵ということを考慮すると、かなり腕が立つはずだ。

「雇い主を言わなかったのは、一体……」
「クレイン隊長?」
「ああ、いや…何でもない」

こちらに確実に進んでくるリキア同盟軍を視界の端に入れつつ、僕は不思議な彼女のことを考えていた。




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