「ようナマエ!これやるよ!」
「グラッツェ、ナランチャ」
「いいってことよ!」
「ナランチャ、ブチャラティが呼んでいましたよ」
「ん、分かったすぐ行く」
ニッコリ笑顔で「じゃあな、ナマエ!」と立ち去ったナランチャ。その後ろ姿をナマエは困ったように見つめる……。というのは、最近ナランチャがちょっとしたプレゼントを持ってくるようになったことに彼女は少々悩んでいるからだ。
彼女の脳内では今まで貰ってきたものが次々と浮かぶ。キャンディ、チョコレート、クッキーなど、主に食べ物が多い。アバッキオが淹れてくれた紅茶を美味しいと言った翌日には、茶葉のアソートを持ってきた。今貰ったばかりの箱を開ければ、可愛く包装されたキャラメルがコロコロと入っているではないか。
ナマエはこんなことを心の中でも思ってはダメだと分かってはいるが、つい「ナランチャは恋人に都合よく使われちゃうタイプの人間だなぁ」と、ひとり苦笑した。
「(うーん……)」
そもそもなんでこんなことになったのか。ナマエの推測は、ブチャラティからブーケをもらったお礼でハグをしたから。そんなまさかと何度も考えを改めたが、彼女にはこれしか思い浮かばなかった。
結論から言えば、まさにその通りであった。とは言っても、ナランチャ本人からハグを催促することはない。今のところプレゼントを渡し終えると遠巻きでナマエのことをニコニコしながら様子を眺め、目が合えば手を振る。……だけ。だから余計にどうすればいいのか分からず、ここ何日か悩んでいた。ナマエが試しにチラッと視線を向けると、予想通り彼はニッと笑って手を振った。一日だけなら可愛いなぁという感想で終わったのだが、これがずっと続くのなら話は別だ。
「ねぇ、フーゴ」
「ん……?どうしたんですか?」
ナマエの中で話題になっている彼に聞かれないよう、あえて日本語でフーゴを呼ぶ。フーゴは不思議そうにしながらもそれに合わせてくれ、こそっとナランチャの名前を出せば、「ああね」と瞬時に話題を理解してくれた。
「アイツ、きっとナマエにお礼のハグをして欲しいんですよ」
「やっぱり?もういっそのこと、してあげたら気がすむかな?」
「それは、ナマエがしたいと思った時にすればいいんじゃあないか?相手へ無理にあわす必要はないでしょう」
やっぱりそうだよね、ナマエはそう返事をした。
「私、今フーゴといる時が一番落ち着くよ」
「そうか、それはよかった」
言葉に気を良くしたのか、フーゴは得意げに笑った。時折見せるそういう表情が可愛くて、ナマエもつられて笑う。第一印象が凄まじいものだったから、そのギャップも大きい。こんなにも仲良くなるなんて思ってなかったし、I.Q152だと聞いた時は驚いた。
「ナマエ!」
名前を呼ぶ声に反応すれば、そこにはむくれてるナランチャがいた。
「どうしたの?」
「日本語で喋んなよ、ここイタリアだぞ!」
「ふふ、ごめんね。ちょっと内緒話してたの」
「む!おいフーゴ!」
「なんだよ、ナマエは僕と喋りたかったからそうしたんだろう」
「フーゴばっかズリィな!」
「まったくうるさいなぁ!静かにしろよ!」
「お前だってうるさいだろうがよ!!」
「なんだと!!」
ふたりがギャーギャー騒ぎだすと、誰かが止めるまでやめない。あいにくストッパー役のブチャラティはジョルノと外出中だ。第二に期待できるアバッキオはヘッドホンをつけてしまった。
「ふぁ……」
勉強をしていたナマエだったが、集中力も完全に切れてしまい、この煩さの中眠さが込み上げてしまう。こんなにも口喧嘩がうるさいのに欠伸してるなんて、ちょっと前の私じゃあ考えられなかったなぁ。ギャングの端くれも様になってきたかもしれない。など、ナマエは頭の中で冗談を言いつつ席を立ち、ひと眠りしようとソファへ向かった。
「ねぇミスタ、隣座ってもいい?」
「おー、来い来い!」
ソファには陽気な先客が。ナマエが相席を申し出るとミスタは読んでいた雑誌を閉じ、ソファをバンバン叩いてみせた。
「どうした、俺が恋しくなっちゃったかー?」
「ふふ、今は寂しくないよ。ただ眠くなっちゃってさ……、ふぁ……」
「そうかそうか!肩貸してやっからちょっと寝てろよ」
「うん、そうする。ありがとうー」
肩を貸してくれるらしいミスタの言葉に甘えて近くに座ると、ナマエはすぐに目を閉じて意識を手放した。
*
「エ……?」
俺の予想では真っ赤にしたナマエの可愛い顔を拝めるんじゃあねぇかなと期待したのに、すぐ肩借りて寝たぞ?そりゃあ肩を貸すっつったけど、こうあっさり来られてしまうとこっちが驚いちまうってもんだ。
「どういうことフーゴ?」
「いや僕に聞かれたって分かるわけないでしょう」
「なんだよ、ミスタもズリィな!」
「お前男として見られてねぇんじゃないか?」
「アバッキオ!そんなひどいこと言うんじゃぁねぇ!」
「おいミスタ静かにしろ、ナマエ起きちまう」
いつのまにか帰ってきたブチャラティの声で、つい大きな声を出していた自分を責める。隣ではスゥスゥと規則正しい寝息が聞こえているので大丈夫みたいだ。でも、よくもまぁこんなところで深い眠りにつけるな。
「おっと」
肩からずり落ちそうになったナマエの頭を慌ててキャッチ。これでも起きない様子を見ると、また眠れない日々を送っているのか心配になってくる。膝の上に頭を乗っけてやると、すこし身じろいで無防備な姿で俺に擦り寄った。こっちが照れそうだぜ。
「可愛いらしいですね」
どこから持ってきたのか、ジョルノがブランケットをナマエにかける。
「こんな無防備な姿を見せてくれるのは嬉しいことですね。きっと、ミスタのこと信頼しているんでしょう」
何を急に言い出すのやら。ジョルノはふっと笑い、ナマエの髪を撫でた。
「まだ彼女が日本語しか話せない時、『ミスタは私のヒーロー』だと何度も言っていました」
「は、なにそれマジ?」
「はい」
「なんだよ、直接言えよな」
「言おうにも、話ができなかったんですって」
「ああ、そっか」
「だから彼女、今も必死でイタリア語を勉強しているんです」
貴方や他のメンバーともっといろんな話がしたくて、とジョルノは続けた。たしかに、今はまだまだ会話が成り立たないことが多々ある。でも、出会った頃と比べれば格段に上達している。
ああ、なんて照れくさいんだ。こういう話って、本人から聞くより他人から聞いた方が何倍も嬉しくなるって何かで読んだな。予想外の展開にしてやられたぜ。いつか何倍にも返してやらねぇ時がすまねぇな。
「グラッツェ、ナランチャ」
「いいってことよ!」
「ナランチャ、ブチャラティが呼んでいましたよ」
「ん、分かったすぐ行く」
ニッコリ笑顔で「じゃあな、ナマエ!」と立ち去ったナランチャ。その後ろ姿をナマエは困ったように見つめる……。というのは、最近ナランチャがちょっとしたプレゼントを持ってくるようになったことに彼女は少々悩んでいるからだ。
彼女の脳内では今まで貰ってきたものが次々と浮かぶ。キャンディ、チョコレート、クッキーなど、主に食べ物が多い。アバッキオが淹れてくれた紅茶を美味しいと言った翌日には、茶葉のアソートを持ってきた。今貰ったばかりの箱を開ければ、可愛く包装されたキャラメルがコロコロと入っているではないか。
ナマエはこんなことを心の中でも思ってはダメだと分かってはいるが、つい「ナランチャは恋人に都合よく使われちゃうタイプの人間だなぁ」と、ひとり苦笑した。
「(うーん……)」
そもそもなんでこんなことになったのか。ナマエの推測は、ブチャラティからブーケをもらったお礼でハグをしたから。そんなまさかと何度も考えを改めたが、彼女にはこれしか思い浮かばなかった。
結論から言えば、まさにその通りであった。とは言っても、ナランチャ本人からハグを催促することはない。今のところプレゼントを渡し終えると遠巻きでナマエのことをニコニコしながら様子を眺め、目が合えば手を振る。……だけ。だから余計にどうすればいいのか分からず、ここ何日か悩んでいた。ナマエが試しにチラッと視線を向けると、予想通り彼はニッと笑って手を振った。一日だけなら可愛いなぁという感想で終わったのだが、これがずっと続くのなら話は別だ。
「ねぇ、フーゴ」
「ん……?どうしたんですか?」
ナマエの中で話題になっている彼に聞かれないよう、あえて日本語でフーゴを呼ぶ。フーゴは不思議そうにしながらもそれに合わせてくれ、こそっとナランチャの名前を出せば、「ああね」と瞬時に話題を理解してくれた。
「アイツ、きっとナマエにお礼のハグをして欲しいんですよ」
「やっぱり?もういっそのこと、してあげたら気がすむかな?」
「それは、ナマエがしたいと思った時にすればいいんじゃあないか?相手へ無理にあわす必要はないでしょう」
やっぱりそうだよね、ナマエはそう返事をした。
「私、今フーゴといる時が一番落ち着くよ」
「そうか、それはよかった」
言葉に気を良くしたのか、フーゴは得意げに笑った。時折見せるそういう表情が可愛くて、ナマエもつられて笑う。第一印象が凄まじいものだったから、そのギャップも大きい。こんなにも仲良くなるなんて思ってなかったし、I.Q152だと聞いた時は驚いた。
「ナマエ!」
名前を呼ぶ声に反応すれば、そこにはむくれてるナランチャがいた。
「どうしたの?」
「日本語で喋んなよ、ここイタリアだぞ!」
「ふふ、ごめんね。ちょっと内緒話してたの」
「む!おいフーゴ!」
「なんだよ、ナマエは僕と喋りたかったからそうしたんだろう」
「フーゴばっかズリィな!」
「まったくうるさいなぁ!静かにしろよ!」
「お前だってうるさいだろうがよ!!」
「なんだと!!」
ふたりがギャーギャー騒ぎだすと、誰かが止めるまでやめない。あいにくストッパー役のブチャラティはジョルノと外出中だ。第二に期待できるアバッキオはヘッドホンをつけてしまった。
「ふぁ……」
勉強をしていたナマエだったが、集中力も完全に切れてしまい、この煩さの中眠さが込み上げてしまう。こんなにも口喧嘩がうるさいのに欠伸してるなんて、ちょっと前の私じゃあ考えられなかったなぁ。ギャングの端くれも様になってきたかもしれない。など、ナマエは頭の中で冗談を言いつつ席を立ち、ひと眠りしようとソファへ向かった。
「ねぇミスタ、隣座ってもいい?」
「おー、来い来い!」
ソファには陽気な先客が。ナマエが相席を申し出るとミスタは読んでいた雑誌を閉じ、ソファをバンバン叩いてみせた。
「どうした、俺が恋しくなっちゃったかー?」
「ふふ、今は寂しくないよ。ただ眠くなっちゃってさ……、ふぁ……」
「そうかそうか!肩貸してやっからちょっと寝てろよ」
「うん、そうする。ありがとうー」
肩を貸してくれるらしいミスタの言葉に甘えて近くに座ると、ナマエはすぐに目を閉じて意識を手放した。
*
「エ……?」
俺の予想では真っ赤にしたナマエの可愛い顔を拝めるんじゃあねぇかなと期待したのに、すぐ肩借りて寝たぞ?そりゃあ肩を貸すっつったけど、こうあっさり来られてしまうとこっちが驚いちまうってもんだ。
「どういうことフーゴ?」
「いや僕に聞かれたって分かるわけないでしょう」
「なんだよ、ミスタもズリィな!」
「お前男として見られてねぇんじゃないか?」
「アバッキオ!そんなひどいこと言うんじゃぁねぇ!」
「おいミスタ静かにしろ、ナマエ起きちまう」
いつのまにか帰ってきたブチャラティの声で、つい大きな声を出していた自分を責める。隣ではスゥスゥと規則正しい寝息が聞こえているので大丈夫みたいだ。でも、よくもまぁこんなところで深い眠りにつけるな。
「おっと」
肩からずり落ちそうになったナマエの頭を慌ててキャッチ。これでも起きない様子を見ると、また眠れない日々を送っているのか心配になってくる。膝の上に頭を乗っけてやると、すこし身じろいで無防備な姿で俺に擦り寄った。こっちが照れそうだぜ。
「可愛いらしいですね」
どこから持ってきたのか、ジョルノがブランケットをナマエにかける。
「こんな無防備な姿を見せてくれるのは嬉しいことですね。きっと、ミスタのこと信頼しているんでしょう」
何を急に言い出すのやら。ジョルノはふっと笑い、ナマエの髪を撫でた。
「まだ彼女が日本語しか話せない時、『ミスタは私のヒーロー』だと何度も言っていました」
「は、なにそれマジ?」
「はい」
「なんだよ、直接言えよな」
「言おうにも、話ができなかったんですって」
「ああ、そっか」
「だから彼女、今も必死でイタリア語を勉強しているんです」
貴方や他のメンバーともっといろんな話がしたくて、とジョルノは続けた。たしかに、今はまだまだ会話が成り立たないことが多々ある。でも、出会った頃と比べれば格段に上達している。
ああ、なんて照れくさいんだ。こういう話って、本人から聞くより他人から聞いた方が何倍も嬉しくなるって何かで読んだな。予想外の展開にしてやられたぜ。いつか何倍にも返してやらねぇ時がすまねぇな。