「んぁ……?」
体を揺さぶられる感覚に起き上がると、そこには昨日助けてくれたお兄さんのドアップ。いけない完全に寝てしまった!と窓の方を見ると予想通り明るくて、時計を確認すれば9時を過ぎていた。
「Buongiorno!」
「……ぼんじょるの?」
こんな時間まで、寝ちゃうだなんて図々しいことをしてしまった!と頭を悩ましていたら、そんなのお構い無しで声をかけてくるお兄さん。カタコトなりにも同じ言葉を言えば、お兄さんはカラッとした笑い方で私の頭を撫でながら何かを話しはじめた。ごめんね、なに言ってるかわかんないや。はてさてこれはどこの言葉なのだろう……、多分ヨーロッパ系だとは思うんだけど、語学に関してはあまり努力してこなかったから私には判断がつかない。
「−−、MISTA」
「……みすた?」
「Si!」
目の前の人は、親指で自分を指しながらもう一度同じことを言う。その行為のおかげできっと名前のことだとピンときて、私もそれに続いて自分の名前を伝える。と、お兄さんは私の名前を呼びながら手をひく。別に拒否することもなくそれに従うと、こじんまりしたテーブルと椅子の方に連れていかれた。テーブルにはトーストとチーズとサラミ、コーヒーがひとり分。流し台の方を見れば同じ種類のお皿が置かれていた。ということは、これは私の分ってことでいいのかな?タイミングよくぐぅっと鳴ったお腹に恥ずかしくなりながらも、目を合わせると笑顔でお兄さんは頷いた。
「いただきます」
ならばご厚意に甘えちゃおう、だって私が食べなきゃ捨てられちゃうでしょ?と、プラス思考。しっかり手を合わせてから食事を口に運ぶと、じんわり胃袋が満たされて行く感覚がしてつい顔が緩んでしまう。何かを食べてる時ってなんでこんなにも幸せなんだろう。ずっと何かを食べていたい、欲を言えば甘いデザートをたくさん食べたい。なんて、呑気に考えながらモグモグ食べていると隣から視線を感じ、チラリとそちらを向けばお兄さんがジィっとこちらを見ていた。……あれ、もしかしてこれ食べちゃダメだったとか?じゃあさっきの笑顔はなんだったの、とんだ読み違いだ恥ずかしい、本当にごめんなさい。
「Japone?」
「……じゃぽね?」
「……ーー、……Japanese?」
「あ!はい!Yes!」
私の返事を聞くと、お兄さんはどこかに電話をかけながら離れていった。とりあえず、こちらを見ていたのは私が考えたそれではなかったようでホッとし、食事の続きを楽しもう。
それにしても朝食でサラミを食べるなんて初めてだ、しかも美味しい。お兄さんが電話の相手に何かを話している声をBGMに、パクパク食べればもうお皿の上はきれいになってしまった。「ごちそうさまでした」と手を合わせたタイミングで、電話を終えたお兄さんから服を渡され昨晩のように洗面室に押し込まれた。
「ありがたいけど、言葉が通じないのって案外つらいなぁ……」
なんて、誰に聞いてもらうわけでもない言葉が洗面室に響いた。そうしてとりあえず渡された服に着替えてみたが、前のやつと同様、体格差がありぶかぶか。私は女性の平均よりすこし大きいけど、お兄さんはどれくらいなんだろう。引きずらないように裾を折ってからドアノブに手をやると、タイミングよくビーッというベルが鳴り、扉を開けるのをためらわざるをえなかった。
『−−−、−−』
『−ー、……−−−』
まさに来客者の気配。ドア越しから聞こえる会話に、今出て行っていいものかどうか判断がつかない。ゆっくりドアを開けてコソコソと様子をうかがえば、話し声とともに全身真っ黒の服に長髪の男性を発見。そして、向こうもコソコソしている私を発見……。バチリと目があってしまい、その鋭い目つきに思わず肩を揺らしてしまった。あ、私が見てたことお兄さんにバラされた。なにしてくれるのよ。
「ナマエ」
おいでというジェスチャーで呼ばれ、おそるおそる近づけばミスタさん(仮)は私に靴の入った箱を手渡した。明らかに女性もののそれに、履けということなんだろうと勝手に解釈してそうすれば、すぐさま部屋を出て車に乗せられた。
どこへ行くのかなど聞けるスキルが無い故に、そのまましばらく長髪の男性が運転する車に揺られていると、小綺麗なレストランのようなところで停まった。連れられて中に入れば、そこには似つかわしくない大きな声。二人が近づいて行くので後に続けば、多分声の主であろう穴が空いたスーツを身にまとった人が、バンダナを巻いた人にフォークをぶっ刺している場面に遭遇してしまった。え、普通に怖い。なにこれ、パニック。
「Buongiorno」
驚いて何も言えない私に、奥から何事もなかったかのように個性的な模様の白いスーツを着た人が歩いてきて、椅子を引いてくれた。スマートなエスコートにまるでお姫様気分だけど、さっきの光景が頭から離れなくて私はそれどころではなかった。
とりあえず会釈をして座ると、さっきフォークを刺されていたバンダナの人が私の周りをチョロチョロうろついた。かと思ったらミスタさんに首根っこ掴まれて、今度はギャーギャー騒いでいる。もう慣れた日常なのか他の人たちは読書をしたり、紅茶を飲んだりと各々の時間を過ごしている。なんなんだこの人たちは、いったいどういう集まり……?そして、私は何でここに連れてこられたの……?あと、バンダナの人はとりあえず顔から出てる血をふいたほうがいいと思う。
体を揺さぶられる感覚に起き上がると、そこには昨日助けてくれたお兄さんのドアップ。いけない完全に寝てしまった!と窓の方を見ると予想通り明るくて、時計を確認すれば9時を過ぎていた。
「Buongiorno!」
「……ぼんじょるの?」
こんな時間まで、寝ちゃうだなんて図々しいことをしてしまった!と頭を悩ましていたら、そんなのお構い無しで声をかけてくるお兄さん。カタコトなりにも同じ言葉を言えば、お兄さんはカラッとした笑い方で私の頭を撫でながら何かを話しはじめた。ごめんね、なに言ってるかわかんないや。はてさてこれはどこの言葉なのだろう……、多分ヨーロッパ系だとは思うんだけど、語学に関してはあまり努力してこなかったから私には判断がつかない。
「−−、MISTA」
「……みすた?」
「Si!」
目の前の人は、親指で自分を指しながらもう一度同じことを言う。その行為のおかげできっと名前のことだとピンときて、私もそれに続いて自分の名前を伝える。と、お兄さんは私の名前を呼びながら手をひく。別に拒否することもなくそれに従うと、こじんまりしたテーブルと椅子の方に連れていかれた。テーブルにはトーストとチーズとサラミ、コーヒーがひとり分。流し台の方を見れば同じ種類のお皿が置かれていた。ということは、これは私の分ってことでいいのかな?タイミングよくぐぅっと鳴ったお腹に恥ずかしくなりながらも、目を合わせると笑顔でお兄さんは頷いた。
「いただきます」
ならばご厚意に甘えちゃおう、だって私が食べなきゃ捨てられちゃうでしょ?と、プラス思考。しっかり手を合わせてから食事を口に運ぶと、じんわり胃袋が満たされて行く感覚がしてつい顔が緩んでしまう。何かを食べてる時ってなんでこんなにも幸せなんだろう。ずっと何かを食べていたい、欲を言えば甘いデザートをたくさん食べたい。なんて、呑気に考えながらモグモグ食べていると隣から視線を感じ、チラリとそちらを向けばお兄さんがジィっとこちらを見ていた。……あれ、もしかしてこれ食べちゃダメだったとか?じゃあさっきの笑顔はなんだったの、とんだ読み違いだ恥ずかしい、本当にごめんなさい。
「Japone?」
「……じゃぽね?」
「……ーー、……Japanese?」
「あ!はい!Yes!」
私の返事を聞くと、お兄さんはどこかに電話をかけながら離れていった。とりあえず、こちらを見ていたのは私が考えたそれではなかったようでホッとし、食事の続きを楽しもう。
それにしても朝食でサラミを食べるなんて初めてだ、しかも美味しい。お兄さんが電話の相手に何かを話している声をBGMに、パクパク食べればもうお皿の上はきれいになってしまった。「ごちそうさまでした」と手を合わせたタイミングで、電話を終えたお兄さんから服を渡され昨晩のように洗面室に押し込まれた。
「ありがたいけど、言葉が通じないのって案外つらいなぁ……」
なんて、誰に聞いてもらうわけでもない言葉が洗面室に響いた。そうしてとりあえず渡された服に着替えてみたが、前のやつと同様、体格差がありぶかぶか。私は女性の平均よりすこし大きいけど、お兄さんはどれくらいなんだろう。引きずらないように裾を折ってからドアノブに手をやると、タイミングよくビーッというベルが鳴り、扉を開けるのをためらわざるをえなかった。
『−−−、−−』
『−ー、……−−−』
まさに来客者の気配。ドア越しから聞こえる会話に、今出て行っていいものかどうか判断がつかない。ゆっくりドアを開けてコソコソと様子をうかがえば、話し声とともに全身真っ黒の服に長髪の男性を発見。そして、向こうもコソコソしている私を発見……。バチリと目があってしまい、その鋭い目つきに思わず肩を揺らしてしまった。あ、私が見てたことお兄さんにバラされた。なにしてくれるのよ。
「ナマエ」
おいでというジェスチャーで呼ばれ、おそるおそる近づけばミスタさん(仮)は私に靴の入った箱を手渡した。明らかに女性もののそれに、履けということなんだろうと勝手に解釈してそうすれば、すぐさま部屋を出て車に乗せられた。
どこへ行くのかなど聞けるスキルが無い故に、そのまましばらく長髪の男性が運転する車に揺られていると、小綺麗なレストランのようなところで停まった。連れられて中に入れば、そこには似つかわしくない大きな声。二人が近づいて行くので後に続けば、多分声の主であろう穴が空いたスーツを身にまとった人が、バンダナを巻いた人にフォークをぶっ刺している場面に遭遇してしまった。え、普通に怖い。なにこれ、パニック。
「Buongiorno」
驚いて何も言えない私に、奥から何事もなかったかのように個性的な模様の白いスーツを着た人が歩いてきて、椅子を引いてくれた。スマートなエスコートにまるでお姫様気分だけど、さっきの光景が頭から離れなくて私はそれどころではなかった。
とりあえず会釈をして座ると、さっきフォークを刺されていたバンダナの人が私の周りをチョロチョロうろついた。かと思ったらミスタさんに首根っこ掴まれて、今度はギャーギャー騒いでいる。もう慣れた日常なのか他の人たちは読書をしたり、紅茶を飲んだりと各々の時間を過ごしている。なんなんだこの人たちは、いったいどういう集まり……?そして、私は何でここに連れてこられたの……?あと、バンダナの人はとりあえず顔から出てる血をふいたほうがいいと思う。