あふれる魅力


 しんと静まったアジトで作業をしていれば、鏡からナマエが帰ってきた。……といっても胴から下だけだが。おおかた鏡の中にいるイルーゾォに礼でも言っているのだろう。が、いくらなんでも警戒心が無さすぎではないか?

「あ、リゾット!」
「おかえり」
「ただいま!」

 ほどなくして『全部帰ってきた彼女』に向かい、声をかければすぐさま笑顔と元気すぎる返事。突如として太陽が現れたというくらい、薄暗いアジトが明るくなったような、そんな気がした。

「どうだった、鏡の中は」
「楽しかったよ!……あ、でも私には静かすぎるかなー、喋る相手がほしいや」
「ナマエは喋るが好きなんだな」
「うん、とっても」
「……他にはどんなことが好きなんだ?」

 興味がわいて質問すれば、好きな食べ物だの、最近アレコレ気になっていることだの次々と話していく。聞いても聞いても、なぜだか彼女のことが気になるのはどうしてだろうか。もう少し聞いていたいという気持ちが大きくなっていく、不思議な魅力を持ち合わせている。
 もういくつか質問をしたところ、「ねぇリゾットのことも教えてよ、私ばっかりずるい」と、ナマエはむくれたような表情をわざとらしくやってみせた。それもそうか、と何が聞きたいか問えば彼女は少し考えた末に、「スタンドはどんなの?」と口を開いた。

「あ、ごめん!言いたくなかったら別に大丈夫だから!」

 ナマエは眉を垂らして、そう言った。それを聞かれると思っていなかった。どう説明すればいいのか。そんな理由で間を開けてしまっただけだったが、彼女はスタンド能力を発現させていないにしろその存在の重要性をちゃんと理解しているらしい。実際に見せるとなると、簡単にできないが、メタリカの説明をすると彼女はぶるりと震え自らの腕を抱いた。

「えぇ何それこわい、リゾット怒らせないようにしなきゃ……」
「安心しろ。例えナマエに怒る未来があろうともお前には使わないさ」
「ほんと?」
「ああ、もうお前は大切な仲間だ」

 ナマエはキョトンとした後、顔を染め、「仲間か……、嬉しい……」などと言った。ああ、なるほどな。言語化するには難しいが、どうしても構ってしまいたくなるそんな魅力がナマエにはつまっているようだ。ジョルノたちが夢中になるのも無理はないな。

「柔らかく笑う、その顔がいい」
「えっ」
「ああ、口に出していたか」
「バッチリ出てたよ……、急にそんなこと言われると照れる……」
「その顔もいいな」
「もう、からかわないで!わ、私帰る!」

 私は怒ってます、という態度を取るがそれはすぐに照れ隠しだと分かった。ナマエはなんとも分かりやすい、ほとんどの感情が表に出てくるようだ。
 じゃあ、また機会があれば来るね。迎えの車に乗り込むナマエ。またの機会、それはいつなのだろうか、その時まで俺は『もうすこしお前と居たい』などという感情を隠しておこうか。