暗殺者チームへのおつかいと称された任務を達成したナマエに、ジョルノは組織の仕事を与えた。その内容は主に組織の経理、本部に来る仲間のサポートやたまにある来客の対応だ。場所は、本部にあるボスの一室に隣接するところが彼女の仕事部屋。部屋の隅には簡易的なキッキンも備えてあるので、ティータイムの準備もできる。
ぜんぜんギャングっぽくないなぁ。仕事内容を伝えた時のナマエは、きっとそう思っていたに違いない。ほんの少し不満がある、そのような時の顔をしていたのだから。これも組織を支える立派な仕事だからと、そうジョルノが言えば彼女は何秒か考えてから快い返事をした。
*
ナマエがパソコンと睨めっこをして、早2週間。週に何日かで良いと言ったが、彼女は毎日本部へ通った。そんなにも根を詰めてやらなくても良いのに。『立派な仕事』なんて言った手前、そんなことは言えないパッショーネのボスは本部の自室でどうしたものかと考えた。
ナマエからすれば、待望していた仕事を任されたのだ張り切ってしまう気持ちもわかる。そんなせっかくやる気になっているところ、水を差すのはあまりよろしくないだろう。しかし真面目な彼女のことだ、仲間のためだとか、慣れないパソコンの操作を克服したいがためだとか、そのうち仕事時間を増やそうとするに違いない。体を壊す前に、どうにかしてガス抜きをしてやらなければ。近々、どこかに連れ出してやろう。ジョルノはひとまず、そう答えを出した。
「やだー!死なないでー!!」
ガタンッ。隣室から何かものが倒れるような音がしたと思えば、ナマエの『死なないで』という言葉。一体何事だ?考えふけっていたジョルノは足早に移動して、扉を少し開けて覗きこんだ。
「お、おい」
「ミスタぁあああ!!」
「ちょ、ま」
「やだやだやだーー!!」
「いで、いででで!!」
そこには、ミスタに縋り付くナマエの姿があった。ああ、なるほど。ジョルノはすぐに理解した。ナマエが発した「死なないで」というのは、彼の腹部に大きな切り傷を発見したからだ。返り血に紛れてはいるが、彼自身の出血量も相当のようだ。仲間のそんな姿を見たのは初めてのナマエ。パニックで、ミスタの静止する声は届かず泣きながら同じような言葉を繰り返していた。
「大丈夫ですよ、彼はこんなことで死ぬような人ではありません」
ジョルノはナマエの肩に手を置き、そう言った。ナマエは「ほんと?」と、うるうるとした目でうったえる。ジョルノはもう一度、大丈夫だと言った。彼女の視線はミスタに向かう。「ああ、大丈夫だからちょっと離れろ」ミスタがそう言うと、ナマエはようやく縋り付くのをやめた。
開放されたミスタは内心ほっとした。ナマエにバレないように安堵の息を吐く。ここに来た用は任務の報告もあるが、ジョルノに傷を癒してもらうためでもあったからだ。正直に言えば、今すぐにでも座って休みたいくらいに疲労もしている。
状況を把握したジョルノはナマエを椅子に座らせてから、デスクの上に置いてあったボールペンを取ると、ミスタに言われるまでもなく自身のゴールド・エクスペリエンスで彼を治療した。
ナマエは『ゴールド・エクスペリエンス』と呼ばれて出てきた人型のそれや、目の前のジョルノの行動を見つめていた。一瞬、ミスタの痛みに耐える声が聞こえたが何をしたんだろう。ジョルノが持っていたペンはどこに消えたんだろう。次々と浮かぶ疑問に、涙はもう止まっていた。
「報告はまた後日で構いませんので、今日は休んでください」
「んじゃあ、そうするかな」
ミスタはナマエにひとこと礼を言うと、すぐに部屋から出て行った。
「落ち着きましたか?」
「あ、うん……」
それは良かった。ジョルノは倒れた椅子を戻しながらそう言った。
「ねぇ、さっきのがジョルノのスタンド?」
ナマエはミスタが部屋から出て行く時、腹部の傷が無くなっていたのを見逃さなかった。そんな彼女の言葉に、ジョルノは「そう言えば」と言葉を返す。
「もうずいぶん一緒に過ごしているのに貴女にまだ見せていませんでしたね」
生まれろ、生命よ。ジョルノは再びスタンドを呼び、ポケットから出した紙幣を蝶に変えてみせた。ナマエの目は驚いたのが分かりやすく、大きく見開いていた。
ナマエは生命を生み出すスタンド能力の説明を聞きながら、目の前に立つゴールド・エクスペリエンスを見つめる。黄金に輝くスタンド、その美しさの中にはとても強い意思があるように思えた。
「先ほどは僕のスタンド能力を応用して、ミスタの傷を治療しました」
「そんなこともできるんだね、すごい……!」
「ただ万能ではなく、治療には痛みが伴います」
怪我、しないでくださいね。ジョルノはナマエに言い聞かせるような態度をとる。パッショーネのボスは、彼女の苦しむ姿は少しも見たくないのだ。それを思うのは、きっと彼だけではなくチーム全員だろう。組織に引き入れてしまったために、何かしらのリスクが伴うかもしれないが、ここで面倒を見ている以上、彼女には少しでも安全に過ごしていてほしいとそう思っている。
「さぁ、汚れてしまった服を着替えにいきましょう」
ジョルノの言葉でやっと自分の服が汚れていることに気づくナマエ。先ほどミスタに縋りついたせいだ。着替えに行くのなんてひとりで大丈夫だよ、そんな彼女の言い分はすぐに取り下げられる。どうせ服を着替えるだけだからとナマエは車など使わず歩いて帰ってしまう、そうジョルノは考えた。血液で汚れた洋服をみに纏った少女が街を歩くなんて、物騒な街だ何があるか分からない。
ジョルノはナマエがいろいろと物を言う前に、今日は仕事を切り上げて、服を着替えたらドルチェでも食べに行こうと提案した。
「そんな、私まだお仕事残ってるし」
「たまにはいいじゃあないですか。ずっと頑張っているんです、ご褒美に」
「でも、まだまだ頑張らないとダメで」
「ほら、ナマエが気になっていたあの店はどうでしょ……」
「え!あのドルチェ屋さん!?」
ジョルノの声を遮り、「あのお店ずっと行きたかったの!」と、そこまで言ってからナマエは我に帰るがもう遅い。
「よし決まりだ」
お手をどうぞ。もう引くことが出来ず出された手を取るナマエ。家までのエスコートや、午後のティータイムに誘うことに成功したジョルノ。
ナマエと話す機会がこんなにも早くできたなんて。仕事のこと、今日見せたスタンドのこと、他愛もない話。さあ何から話そうか、ジョルノは蝶を紙幣に戻しながら扉を開けた。
ぜんぜんギャングっぽくないなぁ。仕事内容を伝えた時のナマエは、きっとそう思っていたに違いない。ほんの少し不満がある、そのような時の顔をしていたのだから。これも組織を支える立派な仕事だからと、そうジョルノが言えば彼女は何秒か考えてから快い返事をした。
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ナマエがパソコンと睨めっこをして、早2週間。週に何日かで良いと言ったが、彼女は毎日本部へ通った。そんなにも根を詰めてやらなくても良いのに。『立派な仕事』なんて言った手前、そんなことは言えないパッショーネのボスは本部の自室でどうしたものかと考えた。
ナマエからすれば、待望していた仕事を任されたのだ張り切ってしまう気持ちもわかる。そんなせっかくやる気になっているところ、水を差すのはあまりよろしくないだろう。しかし真面目な彼女のことだ、仲間のためだとか、慣れないパソコンの操作を克服したいがためだとか、そのうち仕事時間を増やそうとするに違いない。体を壊す前に、どうにかしてガス抜きをしてやらなければ。近々、どこかに連れ出してやろう。ジョルノはひとまず、そう答えを出した。
「やだー!死なないでー!!」
ガタンッ。隣室から何かものが倒れるような音がしたと思えば、ナマエの『死なないで』という言葉。一体何事だ?考えふけっていたジョルノは足早に移動して、扉を少し開けて覗きこんだ。
「お、おい」
「ミスタぁあああ!!」
「ちょ、ま」
「やだやだやだーー!!」
「いで、いででで!!」
そこには、ミスタに縋り付くナマエの姿があった。ああ、なるほど。ジョルノはすぐに理解した。ナマエが発した「死なないで」というのは、彼の腹部に大きな切り傷を発見したからだ。返り血に紛れてはいるが、彼自身の出血量も相当のようだ。仲間のそんな姿を見たのは初めてのナマエ。パニックで、ミスタの静止する声は届かず泣きながら同じような言葉を繰り返していた。
「大丈夫ですよ、彼はこんなことで死ぬような人ではありません」
ジョルノはナマエの肩に手を置き、そう言った。ナマエは「ほんと?」と、うるうるとした目でうったえる。ジョルノはもう一度、大丈夫だと言った。彼女の視線はミスタに向かう。「ああ、大丈夫だからちょっと離れろ」ミスタがそう言うと、ナマエはようやく縋り付くのをやめた。
開放されたミスタは内心ほっとした。ナマエにバレないように安堵の息を吐く。ここに来た用は任務の報告もあるが、ジョルノに傷を癒してもらうためでもあったからだ。正直に言えば、今すぐにでも座って休みたいくらいに疲労もしている。
状況を把握したジョルノはナマエを椅子に座らせてから、デスクの上に置いてあったボールペンを取ると、ミスタに言われるまでもなく自身のゴールド・エクスペリエンスで彼を治療した。
ナマエは『ゴールド・エクスペリエンス』と呼ばれて出てきた人型のそれや、目の前のジョルノの行動を見つめていた。一瞬、ミスタの痛みに耐える声が聞こえたが何をしたんだろう。ジョルノが持っていたペンはどこに消えたんだろう。次々と浮かぶ疑問に、涙はもう止まっていた。
「報告はまた後日で構いませんので、今日は休んでください」
「んじゃあ、そうするかな」
ミスタはナマエにひとこと礼を言うと、すぐに部屋から出て行った。
「落ち着きましたか?」
「あ、うん……」
それは良かった。ジョルノは倒れた椅子を戻しながらそう言った。
「ねぇ、さっきのがジョルノのスタンド?」
ナマエはミスタが部屋から出て行く時、腹部の傷が無くなっていたのを見逃さなかった。そんな彼女の言葉に、ジョルノは「そう言えば」と言葉を返す。
「もうずいぶん一緒に過ごしているのに貴女にまだ見せていませんでしたね」
生まれろ、生命よ。ジョルノは再びスタンドを呼び、ポケットから出した紙幣を蝶に変えてみせた。ナマエの目は驚いたのが分かりやすく、大きく見開いていた。
ナマエは生命を生み出すスタンド能力の説明を聞きながら、目の前に立つゴールド・エクスペリエンスを見つめる。黄金に輝くスタンド、その美しさの中にはとても強い意思があるように思えた。
「先ほどは僕のスタンド能力を応用して、ミスタの傷を治療しました」
「そんなこともできるんだね、すごい……!」
「ただ万能ではなく、治療には痛みが伴います」
怪我、しないでくださいね。ジョルノはナマエに言い聞かせるような態度をとる。パッショーネのボスは、彼女の苦しむ姿は少しも見たくないのだ。それを思うのは、きっと彼だけではなくチーム全員だろう。組織に引き入れてしまったために、何かしらのリスクが伴うかもしれないが、ここで面倒を見ている以上、彼女には少しでも安全に過ごしていてほしいとそう思っている。
「さぁ、汚れてしまった服を着替えにいきましょう」
ジョルノの言葉でやっと自分の服が汚れていることに気づくナマエ。先ほどミスタに縋りついたせいだ。着替えに行くのなんてひとりで大丈夫だよ、そんな彼女の言い分はすぐに取り下げられる。どうせ服を着替えるだけだからとナマエは車など使わず歩いて帰ってしまう、そうジョルノは考えた。血液で汚れた洋服をみに纏った少女が街を歩くなんて、物騒な街だ何があるか分からない。
ジョルノはナマエがいろいろと物を言う前に、今日は仕事を切り上げて、服を着替えたらドルチェでも食べに行こうと提案した。
「そんな、私まだお仕事残ってるし」
「たまにはいいじゃあないですか。ずっと頑張っているんです、ご褒美に」
「でも、まだまだ頑張らないとダメで」
「ほら、ナマエが気になっていたあの店はどうでしょ……」
「え!あのドルチェ屋さん!?」
ジョルノの声を遮り、「あのお店ずっと行きたかったの!」と、そこまで言ってからナマエは我に帰るがもう遅い。
「よし決まりだ」
お手をどうぞ。もう引くことが出来ず出された手を取るナマエ。家までのエスコートや、午後のティータイムに誘うことに成功したジョルノ。
ナマエと話す機会がこんなにも早くできたなんて。仕事のこと、今日見せたスタンドのこと、他愛もない話。さあ何から話そうか、ジョルノは蝶を紙幣に戻しながら扉を開けた。