パッショーネはすごい


 ジョルノからパッショーネについての説明をざっくりと聞かされてから、「お疲れでしょうから、今日はゆっくり休んでください」と、だだっ広い豪華なホテルに連れていかれた。
 おそらくキングサイズだろうベットも小さく見えてしまうくらい広い部屋、私の感性では理解できないくらい豪華に細工された家具。ギャングって儲かるんだなぁ。なんて、頭の悪そうな感想を抱きながら1日そこでゆっくりとさせてもらった。

「ふぅ……」

 カタン。と、ヘアアイロンを置いた音さえ響く空間でひとつため息。ジョルノは昨日、「これからどうしても外せない仕事があるので、明日むかえに来ます」と言ってたんだけどそれはいったいいつなんだろうか……。詳しい時間をちゃんと聞いておくべきだった、なんて後悔しながら朝から髪をいじっていた。
 別に曖昧なことを言われたからって、イライラしているわけじゃないの。こんなにいい部屋に泊まらせてくれて、食事だってタイミングよく運ばれてくるし、もちろん味も最高に美味しかった。ただ、わがままなのは百も承知なんだけど……、つまり、手持ち無沙汰なのだ。

「(ひまだなぁ……)」

 いつもなら声に出して気を紛らわせたいところだが、このだだっ広い空間では余計に寂しさが加速するだけ。二度寝をする度胸はないし、もう髪はどこも直しようがないくらいの出来栄え。……まぁ、そうだなぁ、この後のことはとりあえず喉の渇きでも潤してから考えようか。と、ヘアアイロンのスイッチを切ったところでタイミングよくノック音とジョルノの声が。私は待ってましたとばかりに出迎えに行った。

「おはようございます」
「おはよう、ジョルノ」
「昨夜は寝れましたか?」
「実はちょっと緊張しちゃってあまり寝てないの」
「そうでしたか、早くこの街に慣れるといいですね」
「うん。あ、そうだ、これありがとう」
「お気に召したようで何より。とても似合っています」
「いろんなことがあって、着替えなんてすっかり頭になかったから助かった、本当にありがとう」

 昨晩、ジョルノが帰ってすぐホテルの人が荷物を運んでくれた洋服を見せると、綺麗な笑みをみせた。

「準備はできているようなので早速出かけますよ」
「どこ行くの?」
「これからナマエが住む家にご案内します」
「え!」

 思わず大きな声で驚くと、「どうかしましたか?」なんて涼しい顔をするジョルノ。何でもないよと言えば、スタスタと歩くのを再開した。……昨日の今日という、そんなすぐに家って見つかるものなの?という疑問を抱くが、こんなホテルに私みたいな小娘を泊まらせるくらいのギャング組織だし、あり得る話なんだろう……。たぶん。

『Ciao!』

 ジョルノについて行けば、部屋の外にミスタが立っていた。

「え、えっと」
「挨拶みたいなものです」
「へぇ……」

 同じように返せばミスタはニカッと笑い私の頭をくしゃりと撫でた、、せっかくセットしたのになぁなんて文句は決して思っていない。
 やたらと豪華なエレベーターで下まで一気に降りて、外へ出るとすぐさまブチャラティと呼ばれていた人が後部座席のドアを開けてくれた。お礼もままならないまま、車は目的地へ出発した。

*
 ジョルノのイタリア講座に耳を傾けながら、日本とは比べ物にならない綺麗な街並みを目に映す。本当にため息がでてしまうくらい綺麗なそれは、今自分が母国に居ないということを確実なものにいていく。
 あそこが昨日僕たちがいたリストランテ、後で自宅からの道を教えましょう。そんなことを横で微笑みながら言うジョルノ。彼が日本語を話せる人で本当に良かった。別に日本に固執している訳ではないのだけど、唐突なことすぎる事態だったから……。ジョルノの話す日本語が今唯一の安心できる要素なのだ。
 車を降りて、しばらく歩けばとあるこじんまりとしたアパルトマンにたどり着く。

「……!」

 豪勢なホテルに泊まらせてくれていたから、ひょっとしてアレよりももっと、私の想像がつかないような所へ連れて行かれるのではないかと思っていた。文句なんかない、むしろこの方が私にとって最高なのだ。

「気に入ったようですね」
「うん!すっごく素敵!」
「他に必要なものがあれば、遠慮せずに言ってください」

 手続きを終え、ワクワクしながら部屋に案内してもらえばしっかりと家具まで揃っていた。こんなにも至れり尽くせりで良いのだろうか、行き場の無いただの小娘に。

「あのさ、ジョルノ……」
「ナマエ、細かいことはあとにしよう」
「……!」

 いろいろと聞きたいことはあったけど、「さぁ、リストランテまで歩きましょう」と腰に手を回すジョルノに驚き考えていたことはふっとんだ。本当に日本の血は半分も入っているのだろうか、顔から火が出そうだ。今後の課題は、このスキンシップの多さの方かもしれない。