『−−−』
『ーー、−−−!』
『ーーーー』
今日の俺が運転する車のBGMは、出会って二日目だというのに仲よさげに話すふたりの声。信号待ち、バックミラー越しにジョルノと話しながらふわりと笑う彼女をチラリと視界にいれる。内容はまるで理解できないが今日の彼女は楽しそうだと安堵し、俺はアクセルを踏んだ。
話題の人物は昨日パッショーネに入団した東洋人で、名前はナマエという。黒い髪にアーモンドアイ、控えめな仕草、そういった知り合いはいないがまさにアジアらしいと言ったところか。言語の壁はどうなるかは分からないが、たいして変わらぬ日々に新たな仲間の笑い声が追加されるのも悪くない。そう考えながら俺は異国の言葉に耳を傾けるのをやめ、昨日のことをひとつひとつ思い出した。
*
「フーゴ、ナランチャ」
いつものリストランテで俺は目の前で繰り広げられる不毛な争いに、いい加減にしろと呆れ混じりに叱っていた。そうするとひとりは「だってよぉ!ブチャラティ!」と予想通り食い下がり、もうひとりは憤怒の表情を隠そうとともせずギロリと相手を睨みつけていた。
ことの経緯をだいたいは把握をしているのだが、似たようなことで争う様子を見るのはこれで何度目だろうか。簡単に言えば、いつものように戯れているうちにナランチャがフーゴの琴線に触れたのだ。そうして爆発的な怒りをコントロールできないフーゴが、毎度お決まりの如くフォークをナランチャに刺そうとした。まったくなぜ彼らは飽きもせず、こう同じような道を歩むのか。厳密にいえば今回はどちらが悪いのだろうか。まぁそんな細かいことを気にしていたらキリは無いし、そもそも彼らには悪いがあまり興味もない。
短いため息を吐いていれば、またもやフーゴがフォークを手に取りナランチャの胸ぐらを掴んでいた。そろそろミスタが到着する頃だろうから静かにさせたかったのだが、リストランテの扉が開く音が聞こえてきたのでそれはもう手遅れのようだ。振りかぶるフーゴの手を見ながら、俺はそっと心の中で今から来るであろう『来客』に謝罪した。
「なんだ、また喧嘩かー?おまえら仲良いなぁ」
「そんなんじゃねェ!!」
「そんなんじゃありません!!」
ミスタの呑気な声にふたりして似たような返事し、そして同時に身動きを止めた。ふたりとも、こちらに歩み寄るミスタの後ろにいる女の子の存在に気づいたようだ。先ほどまでの喧嘩など頭にないふたりは、面白いくらいヒソヒソと話し始めた。
「なんだあいつ……?」
「ミスタの女、か……?」
「ミスタの服着てるもんなぁ……」
そうこうしているうちに、アバッキオが「コイツが例の女だ」と俺に耳打ちをする。女の子はというと、目の前の光景に固まっていた。それもそうか。少々荒れたテーブル周りに胸ぐらを掴みあったままジッと睨む男二人、彼女が一般人ならば恐怖の空間に違いない。
「さぁ、どうぞお嬢さん」
「……thank you」
「どういたしまして」
「…………」
あまりにも進展する様子がない女の子に、椅子を引いてやると彼女は会釈をしてちょこんと座った。緊張しきっているようで、動作が何もかもたどたどしい。どうせ俺の言葉も通じないだろうとそれ以上は干渉せず、先ほどまで自らが座っていた場所から彼女を観察することにした。
キョロキョロと目だけ動かしリストランテ内や俺たちをこっそり見ては、ビクビクとする姿はまるで誘拐された子供。いや、この例えはあまりよくは無いな。彼女が『困っている』ということには違いなさそうだが。
彼女を観察し始めて数分、ナランチャが彼女の周りをうろちょろし始める。より一層、彼女の表情は強張っていった。
「おいおい!怖がるからやめろ!」
「別にいじめてねぇじゃん!」
「ナランチャ、女性をジロジロ見てはいけません」
「なぁ、そいつミスタの女?」
「いや違ぇ」
「じゃあなんです?」
「昨日拾ったジャポーネ」
「拾ったぁ?」
「あなたにそんな趣味があったとは」
「確かに顔は可愛いが、趣味とかいうんじゃねぇよ!」
「ちょっと俺、ジャポーネと喋ってくる!」
「通じるわけないだろう」
「やって見ねぇと分かんねぇじゃん!」
なぁ!俺、ナランチャ・ギルガ!そこそこ大きい声がリストランテに響く。声量で言語の壁を越えようって考えてなければいいが……、まさかな。
ナランチャは驚き戸惑う人間に、何度か似たような言葉を投げつけていく。うちにようやく意図が伝わり、彼女はゆっくり自分を指差し、『……ナマエ』とぎこちない笑顔を作る。ナランチャはこれでもかというほど満面の笑みで立ち上がり、ガタンと椅子が床に倒れた。
「見てみろフーゴ!通じたぜ!コイツの名前はナマエだ!」
「いや、今のはだいぶ彼女に助けられてましたよ」
「俺天才なんじゃねぇ!?」
「おいナランチャ、いい加減にしないと追い出すぞ」
「……悪かったって、ブチャラティ。ちょっとテンション上がっちまったんだよぉ」
いつまでも野放しにすることもできないと、一喝すればブツブツ言い訳を垂れながら椅子を戻すナランチャ。しかし、これで大人しくなるやつでは無く視線は彼女に熱く注がれていた。
あまりにも続くそれに耐えられなくなった彼女はミスタに助けを乞おうとするも、ジョルノがその前にやってきて、日本の言葉で話しかけると彼女は糸が切れたように泣いた。
*
「貴方はどう思いますか?」
「限りなく白に近いグレーだな」
「ええ、今のところ僕も同じ感想ですね」
「本当か?あんなに親身になっていたのに」
一拍置いてジョルノは、『女性ですからね』とあまり心のこもってない笑みでそう答えた。
車に乗り込んだ瞬間から始まる考察を聞きながら、本部へと向かう。ナマエがリストランテに来てから一部始終を観察していたが、とても演技とは思えない。もしあれが演技というのなら、彼女は大女優だ。
その後、一時的な保護としてホテルへ連れて行き、ことの真相を確かめるべく全員で彼女が現れたという場所へ向かった。
「見つけたぞ、少し前から再生する」
「ああ、始めてくれ」
アバッキオのスタンドで再生を試みること数分で、ムーディー・ブルースは女の子の姿に変わった。
「おッ!」
「彼女の言う通り急に現れたな」
『……えっ、…………えっ?』
「なんか喋った!」
「ジョルノ、彼女はなんて言っているんだ?」
「自分がなぜここの場にいるか分かっていない様子ですね……、混乱している」
「辻褄は合うわけだ」
「アバッキオ、時間を進めてみてくれ」
ここで起きた全てを見て、皆は考えた。
「もうさ、白って判断していいんじゃぁないか?」
「もっとよく考えろ、そう易々と判断していい話じゃあないだろ!」
「でも!」
フーゴに対してナランチャは、眉尻を下げながら抗議をした。ナランチャの性格は優しさに満ち溢れていた。ギャングになんか……、俺のもとでなんか働かなくとも、彼はこの世界で真っ当に生きていけたのに。
「だ、だってよォ!このまま悩み続けてたらナマエはずっとひとりぼっちなんだぜ?」
そう訴えてくるナランチャにジョルノは「そうですね」とようやく心のこもった笑みを浮かべた。
*
彼女が住まう家に到着し、もろもろの手続きをミスタにしてもらっている間、ジョルノと楽しそうに話すナマエを観察した。昨日はあんなにも不安で潰れそうな表情だったのに、今はとても晴れやかだ。見ているだけで、自然とこちらも元気になれるような、そんな気がするな。今となっては、この子を守ることができて誇らしい気分だ。
『……?』
目があったが慌ててそらすこともないだろうと、じっと見つめていればナマエは首を傾げた。
「君があんまりにも可愛いから見惚れてたんだ」
そう言うと、ナマエは困ったような顔をしてジョルノに助けを求めた。
『−−−?』
『−−−、−−』
『−−−』
『ーーーー』
『……!?』
俺の言葉を理解して相当照れたのか、ナマエはすぐさまジョルノの後ろに隠れてしまった。日本人がスキンシップなどに耐性がないという噂を聞いたことはあったが、まさかここまでとは。
しばらくしてひょこっと半分だけ出した顔は、面白いほど真っ赤。「ぐらっつぇ……」と、たどたどしく言うナマエにジョルノは「日本の女性は可愛らしいでしょう?」と笑った。
「ああ、簡単に惚れちまったぜ」
「……まさか、本気ですか?」
「俺が嘘を言うと思うか?」
「貴方、随分とチョロいですね」
「なんとでも言えばいいさ」
「おい、ジョルノ!ちょっと来てくれ!」
「すぐ行きます。ではブチャラティ 、ナマエをよろしくお願いします」
「ああ」
ジョルノはナマエに一言伝え、すぐさまミスタのところへ向かう。さて、盾となるものが何もなくなったナマエはどうするのか。
『……!』
しばらくジョルノが歩いていく様子を見ていたが、ふと、俺と2人きりになったことに気づいたようでチラッとこちらを伺う。気づかないふりをしてやると、慌ててキョロキョロとあたりを探りだしたが、あいにくここはちょうどいい遮蔽物がなく、ナマエは俺から3歩ほど距離をとって背を向けた。それがなんだか面白くて、自分の中に眠っていた嗜虐心がむくむくと顔を出し口角が上がった。
「離れられると、近づきたくなるもんだぜ」
『……ッ!!』
気配を消して近づき、覗き込むとナマエはコミックスみたいに肩を震わせ驚くのでつい笑ってしまった。
覗き込みついでに顔をよく見てみると、瞳は少し色素の薄い茶色でアジア特有の形、これがアーモンドアイというやつだな、多分。
ジロジロと見ていたこの状況で、困ったように眉を下げるナマエ。とても愛らしいじゃあないか。
意識してニッコリ笑ってみれば、照れて顔を隠してしまった。俺はナランチャみたいにゴリ押して喋るスキルを持ち合わせていないのが、悠長なことを言ってられないくらい、彼女の虜になっちまっている。どうやら俺は本当にチョロいようだ。
「今度花をプレゼントするよ、気に入ったらその次はデートしてくれ」
『……?』
「ハハ、今は分からなくていいさ、可愛いお嬢さん」
『……??』
目をパチパチさせるナマエ。いろんな表情を見せるそんな彼女に、ゆっくりでいいから近づきたい。そう、思ったんだ。
『ーー、−−−!』
『ーーーー』
今日の俺が運転する車のBGMは、出会って二日目だというのに仲よさげに話すふたりの声。信号待ち、バックミラー越しにジョルノと話しながらふわりと笑う彼女をチラリと視界にいれる。内容はまるで理解できないが今日の彼女は楽しそうだと安堵し、俺はアクセルを踏んだ。
話題の人物は昨日パッショーネに入団した東洋人で、名前はナマエという。黒い髪にアーモンドアイ、控えめな仕草、そういった知り合いはいないがまさにアジアらしいと言ったところか。言語の壁はどうなるかは分からないが、たいして変わらぬ日々に新たな仲間の笑い声が追加されるのも悪くない。そう考えながら俺は異国の言葉に耳を傾けるのをやめ、昨日のことをひとつひとつ思い出した。
*
「フーゴ、ナランチャ」
いつものリストランテで俺は目の前で繰り広げられる不毛な争いに、いい加減にしろと呆れ混じりに叱っていた。そうするとひとりは「だってよぉ!ブチャラティ!」と予想通り食い下がり、もうひとりは憤怒の表情を隠そうとともせずギロリと相手を睨みつけていた。
ことの経緯をだいたいは把握をしているのだが、似たようなことで争う様子を見るのはこれで何度目だろうか。簡単に言えば、いつものように戯れているうちにナランチャがフーゴの琴線に触れたのだ。そうして爆発的な怒りをコントロールできないフーゴが、毎度お決まりの如くフォークをナランチャに刺そうとした。まったくなぜ彼らは飽きもせず、こう同じような道を歩むのか。厳密にいえば今回はどちらが悪いのだろうか。まぁそんな細かいことを気にしていたらキリは無いし、そもそも彼らには悪いがあまり興味もない。
短いため息を吐いていれば、またもやフーゴがフォークを手に取りナランチャの胸ぐらを掴んでいた。そろそろミスタが到着する頃だろうから静かにさせたかったのだが、リストランテの扉が開く音が聞こえてきたのでそれはもう手遅れのようだ。振りかぶるフーゴの手を見ながら、俺はそっと心の中で今から来るであろう『来客』に謝罪した。
「なんだ、また喧嘩かー?おまえら仲良いなぁ」
「そんなんじゃねェ!!」
「そんなんじゃありません!!」
ミスタの呑気な声にふたりして似たような返事し、そして同時に身動きを止めた。ふたりとも、こちらに歩み寄るミスタの後ろにいる女の子の存在に気づいたようだ。先ほどまでの喧嘩など頭にないふたりは、面白いくらいヒソヒソと話し始めた。
「なんだあいつ……?」
「ミスタの女、か……?」
「ミスタの服着てるもんなぁ……」
そうこうしているうちに、アバッキオが「コイツが例の女だ」と俺に耳打ちをする。女の子はというと、目の前の光景に固まっていた。それもそうか。少々荒れたテーブル周りに胸ぐらを掴みあったままジッと睨む男二人、彼女が一般人ならば恐怖の空間に違いない。
「さぁ、どうぞお嬢さん」
「……thank you」
「どういたしまして」
「…………」
あまりにも進展する様子がない女の子に、椅子を引いてやると彼女は会釈をしてちょこんと座った。緊張しきっているようで、動作が何もかもたどたどしい。どうせ俺の言葉も通じないだろうとそれ以上は干渉せず、先ほどまで自らが座っていた場所から彼女を観察することにした。
キョロキョロと目だけ動かしリストランテ内や俺たちをこっそり見ては、ビクビクとする姿はまるで誘拐された子供。いや、この例えはあまりよくは無いな。彼女が『困っている』ということには違いなさそうだが。
彼女を観察し始めて数分、ナランチャが彼女の周りをうろちょろし始める。より一層、彼女の表情は強張っていった。
「おいおい!怖がるからやめろ!」
「別にいじめてねぇじゃん!」
「ナランチャ、女性をジロジロ見てはいけません」
「なぁ、そいつミスタの女?」
「いや違ぇ」
「じゃあなんです?」
「昨日拾ったジャポーネ」
「拾ったぁ?」
「あなたにそんな趣味があったとは」
「確かに顔は可愛いが、趣味とかいうんじゃねぇよ!」
「ちょっと俺、ジャポーネと喋ってくる!」
「通じるわけないだろう」
「やって見ねぇと分かんねぇじゃん!」
なぁ!俺、ナランチャ・ギルガ!そこそこ大きい声がリストランテに響く。声量で言語の壁を越えようって考えてなければいいが……、まさかな。
ナランチャは驚き戸惑う人間に、何度か似たような言葉を投げつけていく。うちにようやく意図が伝わり、彼女はゆっくり自分を指差し、『……ナマエ』とぎこちない笑顔を作る。ナランチャはこれでもかというほど満面の笑みで立ち上がり、ガタンと椅子が床に倒れた。
「見てみろフーゴ!通じたぜ!コイツの名前はナマエだ!」
「いや、今のはだいぶ彼女に助けられてましたよ」
「俺天才なんじゃねぇ!?」
「おいナランチャ、いい加減にしないと追い出すぞ」
「……悪かったって、ブチャラティ。ちょっとテンション上がっちまったんだよぉ」
いつまでも野放しにすることもできないと、一喝すればブツブツ言い訳を垂れながら椅子を戻すナランチャ。しかし、これで大人しくなるやつでは無く視線は彼女に熱く注がれていた。
あまりにも続くそれに耐えられなくなった彼女はミスタに助けを乞おうとするも、ジョルノがその前にやってきて、日本の言葉で話しかけると彼女は糸が切れたように泣いた。
*
「貴方はどう思いますか?」
「限りなく白に近いグレーだな」
「ええ、今のところ僕も同じ感想ですね」
「本当か?あんなに親身になっていたのに」
一拍置いてジョルノは、『女性ですからね』とあまり心のこもってない笑みでそう答えた。
車に乗り込んだ瞬間から始まる考察を聞きながら、本部へと向かう。ナマエがリストランテに来てから一部始終を観察していたが、とても演技とは思えない。もしあれが演技というのなら、彼女は大女優だ。
その後、一時的な保護としてホテルへ連れて行き、ことの真相を確かめるべく全員で彼女が現れたという場所へ向かった。
「見つけたぞ、少し前から再生する」
「ああ、始めてくれ」
アバッキオのスタンドで再生を試みること数分で、ムーディー・ブルースは女の子の姿に変わった。
「おッ!」
「彼女の言う通り急に現れたな」
『……えっ、…………えっ?』
「なんか喋った!」
「ジョルノ、彼女はなんて言っているんだ?」
「自分がなぜここの場にいるか分かっていない様子ですね……、混乱している」
「辻褄は合うわけだ」
「アバッキオ、時間を進めてみてくれ」
ここで起きた全てを見て、皆は考えた。
「もうさ、白って判断していいんじゃぁないか?」
「もっとよく考えろ、そう易々と判断していい話じゃあないだろ!」
「でも!」
フーゴに対してナランチャは、眉尻を下げながら抗議をした。ナランチャの性格は優しさに満ち溢れていた。ギャングになんか……、俺のもとでなんか働かなくとも、彼はこの世界で真っ当に生きていけたのに。
「だ、だってよォ!このまま悩み続けてたらナマエはずっとひとりぼっちなんだぜ?」
そう訴えてくるナランチャにジョルノは「そうですね」とようやく心のこもった笑みを浮かべた。
*
彼女が住まう家に到着し、もろもろの手続きをミスタにしてもらっている間、ジョルノと楽しそうに話すナマエを観察した。昨日はあんなにも不安で潰れそうな表情だったのに、今はとても晴れやかだ。見ているだけで、自然とこちらも元気になれるような、そんな気がするな。今となっては、この子を守ることができて誇らしい気分だ。
『……?』
目があったが慌ててそらすこともないだろうと、じっと見つめていればナマエは首を傾げた。
「君があんまりにも可愛いから見惚れてたんだ」
そう言うと、ナマエは困ったような顔をしてジョルノに助けを求めた。
『−−−?』
『−−−、−−』
『−−−』
『ーーーー』
『……!?』
俺の言葉を理解して相当照れたのか、ナマエはすぐさまジョルノの後ろに隠れてしまった。日本人がスキンシップなどに耐性がないという噂を聞いたことはあったが、まさかここまでとは。
しばらくしてひょこっと半分だけ出した顔は、面白いほど真っ赤。「ぐらっつぇ……」と、たどたどしく言うナマエにジョルノは「日本の女性は可愛らしいでしょう?」と笑った。
「ああ、簡単に惚れちまったぜ」
「……まさか、本気ですか?」
「俺が嘘を言うと思うか?」
「貴方、随分とチョロいですね」
「なんとでも言えばいいさ」
「おい、ジョルノ!ちょっと来てくれ!」
「すぐ行きます。ではブチャラティ 、ナマエをよろしくお願いします」
「ああ」
ジョルノはナマエに一言伝え、すぐさまミスタのところへ向かう。さて、盾となるものが何もなくなったナマエはどうするのか。
『……!』
しばらくジョルノが歩いていく様子を見ていたが、ふと、俺と2人きりになったことに気づいたようでチラッとこちらを伺う。気づかないふりをしてやると、慌ててキョロキョロとあたりを探りだしたが、あいにくここはちょうどいい遮蔽物がなく、ナマエは俺から3歩ほど距離をとって背を向けた。それがなんだか面白くて、自分の中に眠っていた嗜虐心がむくむくと顔を出し口角が上がった。
「離れられると、近づきたくなるもんだぜ」
『……ッ!!』
気配を消して近づき、覗き込むとナマエはコミックスみたいに肩を震わせ驚くのでつい笑ってしまった。
覗き込みついでに顔をよく見てみると、瞳は少し色素の薄い茶色でアジア特有の形、これがアーモンドアイというやつだな、多分。
ジロジロと見ていたこの状況で、困ったように眉を下げるナマエ。とても愛らしいじゃあないか。
意識してニッコリ笑ってみれば、照れて顔を隠してしまった。俺はナランチャみたいにゴリ押して喋るスキルを持ち合わせていないのが、悠長なことを言ってられないくらい、彼女の虜になっちまっている。どうやら俺は本当にチョロいようだ。
「今度花をプレゼントするよ、気に入ったらその次はデートしてくれ」
『……?』
「ハハ、今は分からなくていいさ、可愛いお嬢さん」
『……??』
目をパチパチさせるナマエ。いろんな表情を見せるそんな彼女に、ゆっくりでいいから近づきたい。そう、思ったんだ。