ナマエが組織に入ってから、早くも1週間が経とうとしていた。どういう経緯であんな場所にいたのかジョルノに事情を聞いてもらうと、『自分の部屋にいたはずなのに、気づいたら夜道に突っ立ってた』だそうだ。そんで、襲われそうになったところを俺が助けたらしい。
その後ジョルノとブチャラティがより詳しく調べてみたんだが、身元不明で何のデータも出でこなかったとのことだ。ジョルノはもしかしたらスタンド攻撃を受けたかもしれないと予想して、ナマエをひとまず保護することを決めた。誰かが無作為にしでかした迷惑な事件なのか、はたまたパッショーネに向けた宣戦布告なのか。その真相を探るべくナマエをホテルに連れて行った後、チーム全員で問題の場所へ向かった。
「おっ!マジで急に出てきた!」
「あの女何か喋ってんな、なんて言ってんだ?」
アバッキオのムーディーブルースを使えば、ナマエが言った通り何もないところからアイツは現れた。早送りで見ても、言っていたことに違いはないようだった。
「さて、一応辻褄はあいましたが、これからどうします?」
「そうだな……」
「面倒事はごめんだな」
面倒事と言ったアバッキオは、誰に言われるでも無く自分のスタンドを消した。今日、急に駆り出されたのが嫌だったのか、機嫌はよろしくないらしい。
「だ、だってよォ!ナマエはずっとひとりぼっちになっちまうじゃんかよ……」
結論を出すのに時間がかかると思いきや、弱々しいナランチャの声にジョルノは「そうですね」と微笑み、ナマエの面倒をみることが決まった。
*
「なァ!ミスタも気になるよな!」
「ん?悪ぃ、何も聞いてなかった」
「だーかーら!ナマエが何才かってこと!」
「ああね、ようは先輩風吹かしたいわけだな」
「そんなんじゃねぇーし!」
ナランチャの馬鹿でかい声で現実に引き戻され、目の前で困ったような顔をするナマエと目があった。ちょぴっと残っていた疑惑も晴れ、パッショーネの仲間入りを果たしたナマエは俺たちのチームで共に過ごすこととなった。
そんなナマエにジョルノは部屋を与え、日中はイタリア語を教えている。日本語で話すナマエは結構お喋りらしく、その楽しそうな雰囲気に嫉妬してかジョルノが居なくなると今みたいにナランチャはつきまとうようになった。
「なー!ナマエってさ、いったいいくつなんだよォー?」
『……?』
「あー、えーっと、何才!年!年齢!」
『!』
閃きました!とでも言いたげなナマエの顔にナランチャは「さっすが俺だな!」と、なぜか自分を褒める。こんな風に似たような単語を手当たり次第に言ったり、後は大げさなジェスチャーをしたりするとだいたいのことが伝わるようになってきた。しかしながら、数字はまだ言えないらしく、ナマエは持ってきていたノートに数字を書き込んでみせた。
「へぇ〜、19か!俺の5個下だな!」
「バカですか、4つ違いですよ」
「い、いやぁ!ちょっと間違えただけだろ!すぐバカバカ言うな!!」
俺たちにとっちゃ毎度お馴染みであるフーゴとナランチャの口喧嘩だが、交わされている言葉も分からないためナマエはまた困ったように笑った。もっと言えば、ナランチャとの会話だって言葉当てクイズのように楽しんでるが、日に日に無理して笑っているような気がしてたまらない……。
*
任務を終えて自宅に帰る前に、日中元気が無かったナマエのことを思い出し、なんとなく様子を見に行くことにした。互いの家はわりと近くて距離はそんなに苦でもないし、一応拾ってきたのは俺だから先輩風吹かして面倒見ねぇとな。
「おーい、ナマエいないのかー?ミスタお兄さんが来てやったぞー」
何度かノックをしても返事はおろか、物音さえしない。流石に心配になって呼びかけてみれば、今度はドタバタと足音が近づいてきて、ガチャリと鍵が開く音。そうして、ゆっくり開くドアからナマエは顔を出した。
「ミスタ……?」
ひょっこり頭だけ出したナマエに、そうか言葉が通じねぇんだもんな、居留守使うよな。なんて今更思った。ほんの少しだが反省しながら、ナマエに軽く挨拶すれば、目が行ったり来たり、ソワソワしてなかなかドアを開けようとしない。
「おまえ、それ」
来客でもいんのか?そんなまさかな?と、覗き込んでみれば、なんとナマエは見覚えのあるものを身に纏っていた。紛うことなく俺が貸してやった服。『おまえ、それ』と先ほど指をさしながら、ついつい口から出た言葉に観念したのか、ナマエは恥ずかしそうにしながらも俺を部屋に通した。
「……寂しかったのか?」
先を歩くナマエ向かってそう投げかけたが、頭の上にクエスチョンマーク。言葉が通じないってのは不便すぎるな。机に積んであった辞書で言葉を調べ、ナマエに見せると照れたように「Si」と答えた。
「紳士的な俺でよかったな、まったく」
「……?」
「ちょっと待ってろ」
伝わってんのかは分からないが、コクリと頷いたのを確認して、俺は携帯から目当ての番号を見つけためらいなく押した。時間も遅く無視されるかと思ったが、運が良く相手は数コールで応答した。
「ジョルノ、今大丈夫か?」
「ええ」
「ナマエのことなんだがよォ」
「彼女がどうかしましたか?」
ナマエの名前を出すと、ジョルノの語気が揺れた。気にかけている証拠だ。そんな焦る話じゃあないがと、要所要所は曖昧にそれとなく経緯を話せば自分が気づけなかったことに対し苛立ちを見せた。
「ってなわけで、今日俺ここ泊まっから、ナマエにそのこと伝えてくれ」
「……分かりました、しかしくれぐれも彼女に迷惑がかからないように」
「わぁってるよ!」
ナマエに通話相手がジョルノだと言うことを伝え携帯渡す。日本語で話す彼女はどこかホッとしたような表情になっていて、やはり言葉の壁はでかいと感じてしまった。
「ミスタ」
「ん?どうした?」
「……グラッツェ」
電話を終えたナマエは、俺の元へトコトコ近づいて照れた顔をしながらハグをした。きっと他意はないんだろうなとは思いつつも、どこか期待してしまう自分がいる。俺はもっとスタイルのいい女が好きだったはずなんだがな。ナマエのことを抱きしめ返しながらそんなことを思った。
そういえば、感謝の言葉がカタコトではなくなってきたな。ジョルノに教えてもらったり自分でも勉強した成果は見事に出ているらしい。
ハグを返してやると慌てている様子がなんとも面白い。けど彼女の目の下に隈ができていることに気づき、もう面白さなんて感情はどこかへ消え去った。
「寝れてないのか?」
頬に手を添えて隈を触ると、意味が伝わったのかナマエはこくりと頷く。まあそりゃそうだよな、俺らに拾われたもののギャングの世界に片足つっこんじまったもんな。いろいろ考えることもあるだろうよ。
「言っても伝わんないかも知んねーけど、」
「……?」
「何もしねぇから、今日は一緒に寝よう」
「…………?」
「ほら、こっち来い」
案の定、頭に大量のクエスチョンマークを浮かべるナマエの手を引けば、そのまま素直にベッドまでやってきた。マジで紳士な俺に感謝してほしい、普通ならもう服なんか脱がせ終わってる案件だぜ。先にベットに寝かせてから自分も入ると、真っ赤な顔になって目をまん丸にさせた。
おやすみといえば、ナマエは少し考えてから赤い顔のまま俺と同じ言葉を言い目を閉じた。どうやら今の言葉はうまく伝わったらしい。
しばらくはそわそわしていたようだが、だんだんと深い呼吸になっていく。側にギャングがいると言うのに、安心したような無防備な表情を見せるのはどうかと思うが、悪い気はしない。頭を撫でると、寝返りをして俺にひっついた。きっともうナマエは夢の中だろう。
「いい夢見ろよ」
寝息をたてるナマエにそう言えば、少し微笑んだ気がしてこちらも心地よくなった。俺は、この危なっかしくて脆く崩れそうな彼女のことがほおっておけないらしい。隣に温もりを感じながら、自分も瞼を閉じた。
その後ジョルノとブチャラティがより詳しく調べてみたんだが、身元不明で何のデータも出でこなかったとのことだ。ジョルノはもしかしたらスタンド攻撃を受けたかもしれないと予想して、ナマエをひとまず保護することを決めた。誰かが無作為にしでかした迷惑な事件なのか、はたまたパッショーネに向けた宣戦布告なのか。その真相を探るべくナマエをホテルに連れて行った後、チーム全員で問題の場所へ向かった。
「おっ!マジで急に出てきた!」
「あの女何か喋ってんな、なんて言ってんだ?」
アバッキオのムーディーブルースを使えば、ナマエが言った通り何もないところからアイツは現れた。早送りで見ても、言っていたことに違いはないようだった。
「さて、一応辻褄はあいましたが、これからどうします?」
「そうだな……」
「面倒事はごめんだな」
面倒事と言ったアバッキオは、誰に言われるでも無く自分のスタンドを消した。今日、急に駆り出されたのが嫌だったのか、機嫌はよろしくないらしい。
「だ、だってよォ!ナマエはずっとひとりぼっちになっちまうじゃんかよ……」
結論を出すのに時間がかかると思いきや、弱々しいナランチャの声にジョルノは「そうですね」と微笑み、ナマエの面倒をみることが決まった。
*
「なァ!ミスタも気になるよな!」
「ん?悪ぃ、何も聞いてなかった」
「だーかーら!ナマエが何才かってこと!」
「ああね、ようは先輩風吹かしたいわけだな」
「そんなんじゃねぇーし!」
ナランチャの馬鹿でかい声で現実に引き戻され、目の前で困ったような顔をするナマエと目があった。ちょぴっと残っていた疑惑も晴れ、パッショーネの仲間入りを果たしたナマエは俺たちのチームで共に過ごすこととなった。
そんなナマエにジョルノは部屋を与え、日中はイタリア語を教えている。日本語で話すナマエは結構お喋りらしく、その楽しそうな雰囲気に嫉妬してかジョルノが居なくなると今みたいにナランチャはつきまとうようになった。
「なー!ナマエってさ、いったいいくつなんだよォー?」
『……?』
「あー、えーっと、何才!年!年齢!」
『!』
閃きました!とでも言いたげなナマエの顔にナランチャは「さっすが俺だな!」と、なぜか自分を褒める。こんな風に似たような単語を手当たり次第に言ったり、後は大げさなジェスチャーをしたりするとだいたいのことが伝わるようになってきた。しかしながら、数字はまだ言えないらしく、ナマエは持ってきていたノートに数字を書き込んでみせた。
「へぇ〜、19か!俺の5個下だな!」
「バカですか、4つ違いですよ」
「い、いやぁ!ちょっと間違えただけだろ!すぐバカバカ言うな!!」
俺たちにとっちゃ毎度お馴染みであるフーゴとナランチャの口喧嘩だが、交わされている言葉も分からないためナマエはまた困ったように笑った。もっと言えば、ナランチャとの会話だって言葉当てクイズのように楽しんでるが、日に日に無理して笑っているような気がしてたまらない……。
*
任務を終えて自宅に帰る前に、日中元気が無かったナマエのことを思い出し、なんとなく様子を見に行くことにした。互いの家はわりと近くて距離はそんなに苦でもないし、一応拾ってきたのは俺だから先輩風吹かして面倒見ねぇとな。
「おーい、ナマエいないのかー?ミスタお兄さんが来てやったぞー」
何度かノックをしても返事はおろか、物音さえしない。流石に心配になって呼びかけてみれば、今度はドタバタと足音が近づいてきて、ガチャリと鍵が開く音。そうして、ゆっくり開くドアからナマエは顔を出した。
「ミスタ……?」
ひょっこり頭だけ出したナマエに、そうか言葉が通じねぇんだもんな、居留守使うよな。なんて今更思った。ほんの少しだが反省しながら、ナマエに軽く挨拶すれば、目が行ったり来たり、ソワソワしてなかなかドアを開けようとしない。
「おまえ、それ」
来客でもいんのか?そんなまさかな?と、覗き込んでみれば、なんとナマエは見覚えのあるものを身に纏っていた。紛うことなく俺が貸してやった服。『おまえ、それ』と先ほど指をさしながら、ついつい口から出た言葉に観念したのか、ナマエは恥ずかしそうにしながらも俺を部屋に通した。
「……寂しかったのか?」
先を歩くナマエ向かってそう投げかけたが、頭の上にクエスチョンマーク。言葉が通じないってのは不便すぎるな。机に積んであった辞書で言葉を調べ、ナマエに見せると照れたように「Si」と答えた。
「紳士的な俺でよかったな、まったく」
「……?」
「ちょっと待ってろ」
伝わってんのかは分からないが、コクリと頷いたのを確認して、俺は携帯から目当ての番号を見つけためらいなく押した。時間も遅く無視されるかと思ったが、運が良く相手は数コールで応答した。
「ジョルノ、今大丈夫か?」
「ええ」
「ナマエのことなんだがよォ」
「彼女がどうかしましたか?」
ナマエの名前を出すと、ジョルノの語気が揺れた。気にかけている証拠だ。そんな焦る話じゃあないがと、要所要所は曖昧にそれとなく経緯を話せば自分が気づけなかったことに対し苛立ちを見せた。
「ってなわけで、今日俺ここ泊まっから、ナマエにそのこと伝えてくれ」
「……分かりました、しかしくれぐれも彼女に迷惑がかからないように」
「わぁってるよ!」
ナマエに通話相手がジョルノだと言うことを伝え携帯渡す。日本語で話す彼女はどこかホッとしたような表情になっていて、やはり言葉の壁はでかいと感じてしまった。
「ミスタ」
「ん?どうした?」
「……グラッツェ」
電話を終えたナマエは、俺の元へトコトコ近づいて照れた顔をしながらハグをした。きっと他意はないんだろうなとは思いつつも、どこか期待してしまう自分がいる。俺はもっとスタイルのいい女が好きだったはずなんだがな。ナマエのことを抱きしめ返しながらそんなことを思った。
そういえば、感謝の言葉がカタコトではなくなってきたな。ジョルノに教えてもらったり自分でも勉強した成果は見事に出ているらしい。
ハグを返してやると慌てている様子がなんとも面白い。けど彼女の目の下に隈ができていることに気づき、もう面白さなんて感情はどこかへ消え去った。
「寝れてないのか?」
頬に手を添えて隈を触ると、意味が伝わったのかナマエはこくりと頷く。まあそりゃそうだよな、俺らに拾われたもののギャングの世界に片足つっこんじまったもんな。いろいろ考えることもあるだろうよ。
「言っても伝わんないかも知んねーけど、」
「……?」
「何もしねぇから、今日は一緒に寝よう」
「…………?」
「ほら、こっち来い」
案の定、頭に大量のクエスチョンマークを浮かべるナマエの手を引けば、そのまま素直にベッドまでやってきた。マジで紳士な俺に感謝してほしい、普通ならもう服なんか脱がせ終わってる案件だぜ。先にベットに寝かせてから自分も入ると、真っ赤な顔になって目をまん丸にさせた。
おやすみといえば、ナマエは少し考えてから赤い顔のまま俺と同じ言葉を言い目を閉じた。どうやら今の言葉はうまく伝わったらしい。
しばらくはそわそわしていたようだが、だんだんと深い呼吸になっていく。側にギャングがいると言うのに、安心したような無防備な表情を見せるのはどうかと思うが、悪い気はしない。頭を撫でると、寝返りをして俺にひっついた。きっともうナマエは夢の中だろう。
「いい夢見ろよ」
寝息をたてるナマエにそう言えば、少し微笑んだ気がしてこちらも心地よくなった。俺は、この危なっかしくて脆く崩れそうな彼女のことがほおっておけないらしい。隣に温もりを感じながら、自分も瞼を閉じた。